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CEOの有能さと会社の業績の関係

一言でいうと

CEOの能力による業績の変化は、運頼みのときより10%高いだけ

活用シーン

経営

内容

今回は、心理学とか脳科学とは全く関係ない、統計学のお話です。
著者が心理学者の本から引っ張ってきたという事と、私の中でのインパクトが大きかった私的なメモとしてご容赦いただければ幸いです。

CEOが会社の実績に影響を与えていることは間違いないが、その度合いはビジネス書に書かれているよりはるかに小さい。

二つの変数の相関の強さは相関係数で表し、この係数は0~1の数値をとる。企業の成功とCEOの手腕との相関係数をかなり甘めに見積もったそしても、0.30がせいぜいだろう。すなわち両者に共通する要因はあらゆる成功要因の30%程度という事である。

同種の企業を二社ずつ選んでペアを作り、優れたCEOとそうでないCEOが経営を担当するとき、優れたCEOの経営する会社がより好業績をあげる確率を考えてみる。

敏腕CEOは100%の確率でペアの相手より良い業績を上げる予想ができる。
逆に、CEOにコントロールできない要因(運を含む)だけで決まるとなれば、劣ったCEOの会社でも成功する確率が50%ある。

相関係数が0.30だとすれば、優れたCEOの率いる会社が相手より良い業績を上げる確率は約60%になるーーーこれでは運頼みの場合より10%高いだけであり、ビジネス書に頻繁に見受けられるCEO英雄神話を裏付ける数字とはいいがたい。

スイスの経営学教授フィリップ・ローゼンツヴァイクは、好著「ハロー効果」の中で、ビジネス書を大きく二つのジャンルに分けている。

①経営者或いは企業の成功又は失敗の物語
②成功した企業とさほど出ない企業を比較分析するもの

いずれもリーダーの個性や経営手法が業績に及ぼす影響を常に誇張しており、したがってほとんど役に立たないと結論付けている。

『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』
ダニエル・カーネマン (著)

今回は主に統計学に関する話です。そして、ダニエル・カーネマンは、多くのビジネス書がまったく意味がないとばっさり切って捨てています。なぜならば、企業が成功するかどうかは、「偶然」という要素にほとんどが左右されているからだ、と。

かなじいかな、統計学に関する基礎的な知識が欠乏している私には描いてる内容が十分理解できてないと思います。そもそもポッと出てきた、相関係数0.30というのも、たぶん、統計学に親しんだ人なら「まあそれくらいかな」という感覚的な理解ができるのでしょうが、私にとってはそれが正しいかどうかもよくわかりません(苦笑)

こういったCEO信奉が生まれるのも、著者に言わせればハロー効果のなせる業だと言います。


これが正しいとすると(たぶん統計学的には正しい)、それをあたかも伝説的なCEOを神格化するのもどうかと思うわけです。考えてみれば、スティーブ・ジョブズも「たまたま」上手くいったと言えば、確かにそんな気がしてくる。たまたまiPhoneが世の中に受け入れられたからいまのAppleがあるわけです。同じ「優秀」な経営者も、出てくる時代を間違えれば、うまくいかないことも多いでしょう。きっとそういう事なんだと思います。

それをCEOのすばらしさが理由である、と思い込む心理こそがダニエル・カーネマンの考える心理学的な錯覚なのだという事はなんとなくわかります。


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