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【詩集】宮崎にて

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宮崎を舞台にした詩の作品集です。
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記事一覧

【詩】青田

梅雨の晴れ間のあぜ道を 山風が、駆けてゆく 瀝たる汗を、吹いて運んで 滾ぎるほてりを、拭い…

【詩】水鏡

風もなく、波のない川床に 水面は、ひらたく張りついて 土手のみどりを、うつしている たいら…

【詩】逆流

川は、河口をみつめている 水面を、おびただしく逆立つ波が 山を目指して、のぼっていく 平然…

【詩】咆哮

海が、嚆々と鳴っている たたみかける波の向こうから 絶え間なく、波の砕ける向こうから 片時…

【詩】古墳にて

塚は、悠々と横たわっている 胸を張り、足を伸ばし 黙って、空を見上げている なだらかに、草…

【詩】落流

ため池は、さざ波に鎮まり 枯れていく、山の景色を映している 黒く光る鏡に、水鳥が立ち止まり…

【詩】野焼き

遠い田の、畦を焼く煙のにおいが たなびいて、かすかに鼻を突いている 枯れ色の、風にのってやってくる 土手の傾斜は、濃い墨色に焼け焦げて かわいた畔りを、固く引き締め つきまとう眠気を、醒まそうとしている  炎のしぶきが、表土を溶かし  凍てつく大地に閉じ込めていた  芽吹きの呼吸を、解き放つ  蠢きはじめた、土壌の穢れを燻り出す 田畑は口を閉じ、覚悟を湛えている 嵐に耐え日照りに喘ぐ、苦闘の季節を 実りを待つ、なす術のない不安な日々を 田雲雀が、畦の余熱に休んでいる

【詩】回廊

青々と流れる平らな川面を 波が静かに、遡っていく 水をなでる海風が 川の風とぶつかり合って …

【詩】ぬくもり

冬の川面は浅く、川床に張りついて 鎮んだ水鏡の中を、対岸の車が行き交う 気まぐれなさざ波が…

【詩】冬風

畦道に、冷たい風が吹きすさぶ 手はかじかみ、眼差しは凍えている 畝の起伏は、寂しさを隠そう…

【詩】出航

埠頭はすでに帳を降ろして 真新しい船底が、赤く照らされている 呼び笛の合図が鋭く響き 口を…

【詩】戦場坂

宮崎市、大塚と浮田をつなぐ 緩やかに、峠を越える曲がり道 行き来する車は絶え間なく 袂を取…

【詩】入り江にて

南国、小さな入り江の浜で 穏やかに寄せる、波の音を眺めている 空は、青々と開けわたり 水面…

【詩】川の眺め

空走る雲の道、青々と突き抜けて 河原を駆けるひなたの風が 絶え間なく吹き寄せる 川面に散らす光のしぶきが さざ波に煌めきながら ひととき、沈黙を語っている 溢れ出る草の吐息、深く立ちこめて 土手に茂る無数の茎と葉が 自由気ままに手を伸ばす 気紛れに咲く女郎花が 風に揺らめきながら 人知れず、まぶたを伏せている 前を向けば海の神 沸きあがる雲、潮の風 大海のめぐみを打ち寄せる 振り向けば山の神 立ちのぼる雲、陸の風 大地のみのりを注ぎ込む さかのぼる風、かけくだ