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山里亮太 / 天才はあきらめた レビュー

「天才をあきらめたではない」

この本は山里亮太が書いた作品である
2006年に発売された「天才になりたい」を本人が改稿して
加筆し改めて文庫本として世に出された


正直に書くと「天才になりたい」は読んでいない
昔からテレビなどで見ていて素敵な芸人さんだという認識はあったが
この人が書く本を読みたいと思えるほどその時はこの人に興味はなかった


だが今回読んでみようと思えたきっかけが二つほどある
まず一つ目は彼のラジオを最近聞き始めたこと
そして二つ目は若林正恭があとがきを書いていることである
この二つしかないことは逆に良かったと思う
ずっと追いかけていて歴史を知っているよりも
あまり彼を知らなかったからこそここまで前のめりに読むことが出来たからだ

芸人になる前からの自叙伝的な本だった
どうしてこう言う道筋を歩いたか実に分かりやすい話だったし
周りの優しさとそれに対しての彼自身のクズさが面白かった
このクズさは笑える人もいれば少し引く人もいるレベルのものである
(僕は笑えたし人間らしくて素敵で感動もした)


大阪時代の話は僕自身も大阪に住んでいたり
実際劇場に足を運んだこともあったので分かりやすかった
表現することでの劣等感や自分自身が確立されていない恐怖感が凄かった
そこに対してうまく行った時は天狗になったり
滑った時は卑屈になったりしてしまう
自分との向き合い方を独自で見つけそれを剥き出しにしていて素晴らしかった


一見彼は誰にどう見られているか
そして結果をどう出すかと言うことを一番気にしているようだが
彼は自分がそこでとどまる事を一番恐れているんだろう
思い返すことが出来たり自分自身をさらけ出してけなせる彼は
間違いなく天才である


自分がお客になったとき自分のネタを楽しめるかと言うことを書いていた
ここが1番心に来た


彼は気にしているが気にしていない
この本は天才はあきらめただ
天才をあきらめたではない
彼は天才になったからこそ諦めたことがあるんだと思う
それは人に点数をつけてもらうことではないだろうか


自分が自分に厳しくまだまだだと高みを目指し続けるためには
人に預ける事を諦めなければいけなかったのではないだろうか
追いかけていたものにいつのまにか追いかけられて
初めは息も絶え絶えに走っていたのだろうが
これからはそこから逃げるのではなく
ぶつかって行く姿を見せて笑いを届けてくれるのではないだろうか


自己啓発本ではなく一人の人生眺めるだけの本である
これに影響されてクズをさらけ出す事はしたくない
でも一つ思うのはこの本で山里亮太が好きになったし
人を少し好きになった


こう言う芸術に触れると人が作品を作ると言うことに意味を感じる
彼を知らない人が一人の人生に触れるという感覚で
読んでも面白い本だと思う


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