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偶然の出会いは"リアル"で生まれる

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

私はネットの通販サイトを滅多に使わない方である。本も基本的には神保町や書店で買うようにしている。ネットで買うときは、欲しいものの目星がついているときだけである。

通販サイトで本を買う人からしたら、書店に行く時間が無駄だとか、情報は生物だからすぐに入手すべきなどの理由が挙げられるだろう。人におすすめされたらすぐカートに入れることで、信頼を築こうとする人もいる。

だが今のところ、ネットで勧められた本が人生を変えたという話を聞いたことはあまりない。大抵は、誰かに教えてもらったとか、偶然手に取った本が人生を変えたパターンが多い。

先日、会社にあった戸谷洋志さんの「SNSの哲学」創元社 (2023) を読み終えた。なぜ人はSNSで承認されたいのか、SNSにおける時間の概念を哲学の観点から解説する。

第4章が「SNSに偶然はあるか?」という話である。SNSではアルゴリズムによって「私」に最適なコンテンツが提供されるため、いわば偶然性が生まれないのではないかと提起している。

「私」に対して優先的に表示されるニュースも、一定のアルゴリズムに基づいて、「私」にとって価値があると思われる情報がすでに取捨選択されているわけです。

同著 89頁より抜粋

もちろん、これは必ずしも悪いことではない。自分が知りたいことや、興味があることを教えてくれるのは有意義であり、思わぬ情報やネタを入手することも出来る。

実際Noteにおいても、「今日のあなたに」というテーマで私が興味ありそうな記事をピックアップしてくれる。大抵は本や読書に関する内容であり、当然これは面白いなと思うものもある。

だが、偶然の出会いというものは、自分の好きなものの延長線上にあるとは限らない。

好きなものは自らの効用を高めることには効果的ではなるが、ハッとするような出会いはなかなかない(著者は「アルゴリズムは偶然性を排除する」と記す)。

アルゴリズムは、私たちが「見たい」とか「知りたい」とか意志する前に、「私」にその情報を届けてしまうのです。

 同著 91頁より抜粋

自分が見たくなかった、と言うより、自分が意識はしていないけれども関心を寄せたものの中に、偶然の出会いというものがあると思われる。

当然そこには、一種の「賭け」と「責任」が生じる。ハズレの本を引くくらいなら、ネットで勧められた本を読む方が、確実に面白い本に出会えることは確かであろう。

だが、今までと違う本を読むからこそ、今までとは違う世界を知ることができる。その時に一番影響を受けるのは、他ならぬリアルであり、人であると考える。

人との出会いは一期一会であり、アルゴリズムの範囲を超えた、偶然の出会いがある。

読書会も同じで、そこには本が好きと言う一定のアルゴリズムに基づいた方が来ることを前提としているが、その考え方や捉え方は一人ひとり違うため、新しい世界を知るきっかけとなる。

だが、今までとは違う世界や常識に足を踏み入れるときには、責任を負わねばならない。自分とは嫌な人に出会うかも知れない、価値観が合わない人に合うかも知れない。

そのリスクを犯すことに意味がある。人と出会うときは少なからずリスクを孕んでいる。しかし、危険を犯すからこそ、偶然の出会いというものがある。

それはSNSのような匿名性の高いネットのような場では生まれない。リアルの場だからこそ、目の前に人がいるからこそ、偶然性は生まれるのではなかろうか。

もちろん、著者自身はアルゴリズムは悪だと訴えているわけではない。著者が望むのはそのような事実をただ知識として吸収するのではなく、自分なりに考えることが大切だと言う。

なぜなら哲学にとって大切なことは、偉い人が何を言ったのかということではなくて、自分自身の力で、考えを深めていくことだからです。

同著 6頁より抜粋

私自身、本や書籍に載っている言葉ではなく、自分の言葉で、自分の物語を語れるようになりたいという願望がある。

それは読書会や人に出会ったからこそ気づいたことで、ネットで見ているだけでは知らなかったことも多い。仕事における良い経験も悪い経験も、そこに沢山の人が介在したからこそである。

もっと人に会うべきだなと、しんみり思った次第。ちょっぴり怖いけれどもね。それではまた次回!

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