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【あなたは大丈夫?】美味しいお酒と食事が食べられなくなる

今回は、美味しいお酒と食事をいつまでも食べるための方法を紹介します。

毎日の仕事終わりの一杯。
締めのラーメン。

そんな幸せを味わえなくなるとしたらどうでしょう。

肝機能障害のせいです。

肝臓は、余った栄養を必要な時まで保管してくれる働きがあります。

まさに、身体のなかの「物流センター」です。

わかりやすい例だと、Amazonがあります。

Amazonでは、皆さんから注文が入るまで、商品は物流センターで保管されています。

肝臓も、身体から注文が入るまで、栄養を保管しておくことができるのです。

しかも、ただの物流センターではありません。

肝臓は、身体に有害なアルコールやアンモニアを解毒することもできます。

物流センターに毒を処理する科学班を完備。

お客様に危ない物をお届けするわけにはいかない、というプロ意識の塊のような臓器、それが肝臓です。

そんな肝臓の機能が低下してしまったら?

今回は、そんな肝機能障害について解説していきたいと思います。

  1. ざっくりとした病態の解説

  2. なってしまった時の注意点

  3. 肝臓を守るための食事

この3点を紹介していきます。

  • まだ私は健康だから大丈夫!

  • 毎日好きなものを好きなだけ食べてるよ!

という、健康な人にこそ見てほしい記事になっています。

肝臓の病気について詳しくなることで、

  • 将来、肝臓の病気にかからない健康的な生活を送れる。

  • 歳をとっても好きなお酒を飲んだり、美味しいご飯を食べられる。

そんな記事になっておりますので、最後までお付き合いください!

肝機能障害になると起こるヤバイ変化


肝臓は、身体の中の物流センターでしたね。

そんな物流センターが止まってしまうとどうなるでしょうか?

必要な時に、必要なエネルギーを身体に届けることができなくなります。

例えば、糖質であるグルコース。

グルコースは、炭水化物が唾液や胃液で分解されることで作られる栄養素です。血中を流れ、細胞が働くためのエネルギーとして利用されています。

エネルギーは1日ずっと必要ですが、グルコースが入ってくるのは食事時間のみです。

大量のグルコースをその一瞬でエネルギーに変えるのは、不可能。

後ほど必要だけど、今はいらないよー、という状態。

そこで、余ったグルコースは、必要な時にいつでも取り出せるように、肝臓や筋肉で保管されるのです。

血中には約80キロカロリー、筋肉に約480キロカロリー、肝臓に約280キロカロリーのグルコースが保管されています。

肝臓が障害されると、貯蔵庫を失った280キロカロリー分のグルコースが露頭に迷うことになるのです。

どこにも使われることないグルコースは、中性脂肪となってしまいます。

また、肝臓には、優秀な解毒担当のスタッフがいました。

肝機能障害になると、そんな優秀な社員であっても、もちろん解雇。

アルコールやアンモニアなど、危ない荷物をバンバン身体に届けることになるので、身体は徐々にダメージを蓄積していくのです。


肝臓の病気ってどんなものがあるの?

肝臓の病気は、大きく分けて2種類。(1)(2)

①ウイルス性
②非ウイルス性

ウイルス性肝機能障害

ウイルス性は、B型肝炎やC型肝炎といったウイルスによって起こる肝機能障害です。

しかし、ウイルス性はここ10年で大幅に減少しました。

C型肝炎を完治させる薬が開発されたからです。

それまではというと、強い副作用に苦しむ割に、ウイルスの排除率が低い薬ばかり。

一生、C型肝炎とは付き合わなければならないと覚悟を決めていた人達もいます。

しかし、ここ10年で一変。

95%近いウイルス除去率をもつ薬が多数開発されているのです。

現在は、肝機能障害のほとんどが非ウイルス性のものになっています。

非ウイルス性肝機能障害

非ウイルス性のほとんどの原因は、脂肪肝です。(3)

内臓脂肪、って聞いたことありますよね?

お腹周りにつく脂肪と違って、内臓についてしまう脂肪です。

その内臓脂肪が肝臓についてしまった状態、これが脂肪肝になります。

わかりやすくいうなら、物流センターに脂肪という届け先不明の荷物が溜まってしまった状態。

届け先不明の荷物のせいで、物流センターで働くスタッフの仕事が邪魔されていきます。

ついには荷物だけで物流センターがパンパンになり、スタッフすら追い出されてしまう。

こんな状態が脂肪肝です。

脂肪肝の原因は2つ。

①アルコール性
②非アルコール性(肥満によるもの)


脂肪肝を放置していると?

脂肪肝では、そこかしこで炎症が起こっています。

炎症がたまにだったら、すぐに細胞は修復されます。

ですが、毎日毎日、長年にわたって炎症が起こるとどうなるか。

細胞は、かたーく繊維化してしまうのです。

肝臓がまるで石のように硬くなってしまうことこら、肝硬変と呼ばれています。

こうなると、もはや物流センターとしての機能を満足に果たすことができません。

肝硬変は、肝臓がんのリスクにもなるため、大変危険な状態です。

一刻も早く、対策しなくてはなりません。


肝硬変の食生活

ここで、肝硬変になってしまった時の食生活について少しだけ紹介しておきます。

肝硬変は、もはや物流センターとしての機能がわずかしか残っていません。そのため、エネルギーであるグルコースを貯蔵することができません。

そこで、肝硬変では、ある特徴的な食生活を送ることになります。

それが、「つまみ食いパターン」です。

もし、肝硬変の人が私たちと同じように、1日3回お腹いっぱいまで食べる食事を摂ると、

  • 余ったグルコースは、貯蔵されずに脂肪となる。

  • ご飯の合間(とくに夕食から朝食までの約12時間)にエネルギー不足が起こる。

そのため、肝硬変の人は、1日4〜7食にちょっとずつご飯を食べる「つまみ食いパターン」を行うことになります。(4)

子どもの頃、寝る前に食べるなんて健康に悪い!と母親に怒られた方も多いのではないでしょうか。

ですが、肝硬変の場合は、むしろ積極的に夜食を食べる必要があります。


肝硬変の救世主、BCAA

BCAAって耳にしたことありますか?

BCAAとは、分岐鎖アミノ酸と呼ばれます。

通常、アミノ酸は長い鎖状の形をしているのですが、BCAAは途中に枝分かれがあることから、分岐鎖アミノ酸と呼ばれています。

肝機能が低下している肝硬変において、BCAAは救世主となります。

その理由は、アンモニアを除去してくれるから。

実は、肝臓という物流センターが止まると、身体は第2の物流センターで、有毒なアンモニアを除去しようとします。

その第2の物流センターこそが、筋肉なのです。

筋肉は、機能が低下した肝臓に代わって、アンモニアを解毒します。(5)

しかし、その解毒作業にBCAAを使うのです。BCAAは、筋肉で働く解毒スタッフさんのエネルギー。

そのため、肝機能障害時は、BCAAが必須です。

多くの場合、病院でBCAA製剤を処方してもらうことになります。


もし、アンモニアが処理できなかったら?

肝臓でもダメ、筋肉もダメ。

有毒物質であるアンモニアが処理しきれなかったらどうなるのか?

それが肝性脳症(かんせいのうしょう)です。

有毒なアンモニアが脳に蓄積して起こる合併症。

症状としては、

このような、認知症にも似た症状が起こります。

近年、プロバイオティクスを摂ることで、肝性脳症を予防できるとする研究もあります。(7)

プロバイオティクスとは、腸の環境を整えてくれる食品のこと。

ヨーグルトや納豆、キムチなどの発酵食品です。

日々、悪玉菌と戦う善玉菌を助ける強力な援軍。

そんなプロバイオティクスは、腸内環境を整えることで、肝性脳症にも効果があるかもしれないというのです。

しかし、

  • 研究によって結果がまちまちであること。

  • 研究途上であること。

以上の理由から、日本肝臓学会のガイドラインからは、収載が見送られています。

いずれは、正式にガイドラインに載る可能性もありますね。

次回予告

そんな恐ろしい肝硬変。

肝硬変になる手前、脂肪肝の段階で何としてもストップさせたいところ。

次回は、脂肪肝を予防する食事療法について紹介したいと思います!

言いかえれば、内臓脂肪を落とす方法です。

  • お腹周りの脂肪が気になっている方

  • ダイエットがしたい方

肝臓が気になる方以外でも、学べる記事になっておりますので、お楽しみに!

それでは、また次回の記事もよろしくお願いします!



参考文献

(1) The original version of this article appeared in Japanese as “Kankouhen Shinryo Guidelines 2020,” from the Japanese Society of Gastroenterology and the Japan Society of Hepatology, published by Nankodo, Tokyo, in 2020. Please see the article on the standards, methods, and process of developing guidelines.

https://onlinelibrary.wiley.com/share/9MHXEHFTCPGXBHSSYJFE?target=10.1111/hepr.13678

(2) Yoshiji, H., Nagoshi, S., Akahane, T. _et al._ Evidence-based clinical practice guidelines for Liver Cirrhosis 2020. _J Gastroenterol_ **56,** 593–619 (2021). https://doi.org/10.1007/s00535-021-01788-x

https://idp.springer.com/authorize?response_type=cookie&client_id=springerlink&redirect_uri=https%3A%2F%2Flink.springer.com%2Farticle%2F10.1007%2Fs00535-021-01788-x#citeas

(3) NASH•NAFLDの診療ガイド2010 日本肝臓学会ガイドライン

https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/NASH-2010.pdf

(4) Verboeket-van de Venne WP, Westerterp KR, van Hoek B, Swart GR. Energy expenditure and substrate metabolism in patients with cirrhosis of the liver: effects of the pattern of food intake. Gut. 1995 Jan;36(1):110-6. doi: 10.1136/gut.36.1.110. PMID: 7890212; PMCID: PMC1382363.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1382363/

(5)エーザイの肝疾患サポートサイト

https://patients.eisai.jp/kanshikkan-support/eat/nutrition.html

(6)よくわかる肝臓の病気 疾肝啓発 あすか製薬株式会社

https://www.aska-pharma.co.jp/kansikkan/complications/

(7) Lunia MK, Sharma BC, Sharma P, Sachdeva S, Srivastava S. Probiotics prevent hepatic encephalopathy in patients with cirrhosis: a randomized controlled trial. Clin Gastroenterol Hepatol. 2014 Jun;12(6):1003-8.e1. doi: 10.1016/j.cgh.2013.11.006. Epub 2013 Nov 15. PMID: 24246768.

https://cghjournal.org/retrieve/pii/S1542356513017436

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