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現代の教育が向かう先〜教育スタイルの4ステージ〜

こんにちは!
前職を辞めた後、せっかくだからと一念発起し、世界周遊をしながら様々な国の教育を見て周りました。
今回はその中で気づいたことを書いていきたいと思います。

それは、、
教育には様々なスタイルがありますが、大きく分けて4ステージあるということです。
その4ステージについて、そして日本が今後進んでいくであろう教育についてです。
※僕の個人的な分析ですのでホンマでっか程度に読んでみてください。

教育に関わる人や子どもを育てる親、教育に興味がある方に読んでもらい、現代において必要な教育を考えるきっかけにしていただければ幸いです。

🔶教育は社会ニーズの写し鏡

これは改めて書くことではないかもしれませんが、
昔から教育はその時代や社会に求められるスキルやマインドを育むために使われてきました。
そのため、時代・社会が変われば求められる教育も変わります。どのような教育が正しいか、最良かを考え、改善を繰り返しているように見えて、その実はその時代・社会に求められるニーズに応えているだけなんです。

これを前提に考えると、旧時代的に思われがちな一方的な一斉授業や厳しすぎる規律もその時代・社会を生きる上で必要な教育だったのではないかと思います。

では古今東西には、どのような教育スタイルがあるのでしょうか?
僕はその形を以下の4ステージに大別してみました。
1)OJT特化型(ギルド型)
2)レクチャー型
3)インタラクティブ型
4)オープンラーニング型
(ステージというとどうしても階層を想起させるので少し違和感があるのですが、とりあえずこれで進めます。笑)
それぞれのスタイルがどのようにニーズにマッチしており、どのような特徴を持っているのか書いていきたいと思います。

🔶OJT特化型(ギルド型)

その時代・社会において必要なスキルを、現場経験を通じて直接身につけていくのがこのOJT特化型です。
教育システムが国家や都市レベルで整備・体系化されておらず、町村や集落で行われている場合が多いです。
慣習や専門技術を学ぶ体験型の学習スタイルです。

大きなメリットとしては、教育にかける費用が少なくても実施することができるという点です。
技術を学びながら実践を行うので、例えば狩猟採集の手伝いをさせることもできます。教育を与える側にも短期的な視点で利益があり、教育へのコストが少なくなります。

いつの時代の話?と言われそうですが、
現代でもグローバルサウスやアジア各地で行われています。
地域や集団レベルで行われている場合もあれば、貧困が原因で家庭レベルで行われる場合もあります。

🔶レクチャー型

このスタイルが1番日本人に馴染み深いのではないでしょうか?
教育者1人に対して大人数の学習者がいる、いわゆる一斉授業をイメージしてもらえればと思います。

目的は多数の人間により効率的に知識や伝統、慣習を伝達することです。
ここで「身につける」ではなく「伝達」と書いた理由は、ここ50年間の日本の教育史からもわかるように、体得する方法として有効性が認められるかは疑問の余地があるからです。
しかし、大多数の人間に一定基準の結晶型知識を伝えるには非常に優れたスタイルだと思います。

ある時代の中央集権的な政治システムにおいて、有能な官僚を育成することが教育の最重要目標でした。
多くの情報にアクセスすることが難しい社会では、より多くの知識を吸収することができる人間は非常に有能な人材でした。そしてそういった人材を見つける方法として一斉授業は非常に効率的な方法でした。

メリットは下記のような点でしょうか。
・ある程度の知識を効率よく学習者に伝えることができる
・教育者の人数が少なくていい
・教育者に求められる能力がそれほど高くない
・効果的に優秀な(記憶力の良い)人材を集めることができる
・コスパが良い(ある程度の資源で、一定水準の教育を均等に提供できる)

🔶インタラクティブ型

学習者と教育者、もしくは学習者どうしの交流を通して学ぶスタイルです。
アクティブラーニングや体験学習などもこのスタイルに含まれます。

対話や体験を通して学ぶのですが、おおよその筋書きがあり学習者は教育者の意図に沿った学びを与えられます。
教育者には学習者にこうなって欲しい、こういうスキルを身につけて欲しいという明確な意図があり、ある程度のレールが引かれています。
そのレールの中で学習者は他者との対話や実体験を通して自ら学びます。

学習者にある程度の自主性は求めるが、主体性はあまり育まれないようです。
今回の旅で見た多くの学校ではこのインタラクティブ型のスタイルでしたが、子どもたちが主体的に学んでいたかというとそうではなかったです。

この教育スタイルは平時の比較的安定した社会になると合わられるもので、古代ギリシャのアテネでは行われていたらしいです。
概念や思想に意識を向け、新しいものを作ろうとする0→1の時代で求められる教育スタイルです。

対話を重んじる民主主義との相性がいい教育だと思います。
他者との合意形成、協働を学べるので現代の日本において必須スキルを身につけられると言えるのではないでしょうか?
日本の教育が目指しているステージであり、現在多くの学校で導入されつつあるスタイルだと思います。

メリットは、
学習者が体験を通して学ぶため、知識の定着と実社会での応用力向上に役立つ点でしょうか。
さらにいうならある程度の自主性を担保しながら、教育者の意向に沿った学びを提供することができる点だと思います。

デメリットも挙げておくと、
教育者に高度なコーチングスキルとファシリテーションスキルが求められるます。
さらに、教育者1人に対する学習者の人数に制限があります。どんなに多くても25人ほどが限界ではないかと考えています。

このスタイルは一見、理想的に見えます。
教壇に立っていた5年前は僕自身もこのスタイルを目指して教えていました。
インタラクティブな授業、体験学習を行えば子どもたちは主体的に学習に取り組むことができると信じていました。
だからこそ、欧米諸国のインタラクティブな授業を見学しに行く決断をしました。

しかし、実際に幾つかの学校で子どもたちを見ている限り、インタラクティブ型の授業は子どもたちを主体的な(自律的と言ってもいいかもしれません)学習者には育てられていないように感じました。

学習を楽しんでいる様子は見られましたし、認知・非認知能力が向上している様も見られました。
しかし与えられたタスクをこなしている感覚から抜け出すことができず、学びを自分ごとかできるているようには見えませんでした。

というのもインタラクティブな授業を何年も(数十年も)前から実施している学校であっても、子どもたちが学校の勉強を「楽しい」ということはなかったのです。
「必要だからやっている」「仕方なくやっている」「やめてもいいならやらない」こういった発言が大多数を占めていました。

🔶オープンラーニング型

最後にオープンラーニング型を紹介します。
これは僕がフィンランドとオランダで訪問した学校に見られたスタイルです。
1番の特徴は学習者が自分で「学び」を選ぶことができる点です。
学習者は何を、どれくらい、いつ学ぶかを選ぶことができます。
大学のカリキュラムを想像すると分かりやすですが、さらに授業内で自ら学習プランを作ることができるイメージです。
授業内では具体的に何をするかを指示されることはなく、単元やテーマに沿って様々なレベル・学び方・活動方法があり、それらを組み合わせて自分なりに学んでいくスタイルでした。
2022年度からスタートした探究学習が日本においては1番近いかもしれません。

この教育の目的は自己実現(自身の幸せを実現すること)だと思われます。
そのために重要なのは競争や比較をなくすことです。
選択の自由が与えられたとしても、他者との比較や競争社会の中では結局外的要因によって学びが決定されてしまいます。
そのような環境下では「自分を幸福にする」という本来の目的から離れた選択をしてしまします。
これでは意味がありません。

オープンラーニング型は
「子どもたちが自分の『学び』を選ぶことができる」
「子どもたちができる限り比較や競争から解放されている」
という2つの環境が揃ってる教育システムを指します。

これは『量』よりも、高い『質』を求める社会において求められる教育なのかもしれません。
現代では大多数の人が安定した生活を送ることができるようになり、安全の上にある幸福を求め始めています。
さらに人生の選択肢が多様化したため、幸せな人生をテンプレ化することができなくなりました。
これにより個々人が『自分の幸せ』を探し、それを実現していかなければならなくなりました。
この社会において人々が求めた教育がこのオープンラーニング型なのではないかと考えています。

メリットは
学習者のモチベーションを保ちながら、自らの学びに向かわせることができる点です。
さらに自分で考える力を身につけることができ、自主性・主体性を身につけることもできます。
自分の人生を自身の行動で幸福感のあるものにすることができます。

デメリットは
教育者側が学習者の学びをコントロールしづらい点でしょうか。
学習者が、各々の活動を通して学ぶ内容にはかなりの幅があります。
具体的にこれを学んで欲しい!!という想いは伝わりづらくなります。
ある意味ではこれこそが最近よく言われる「子どもが中心の教育」なのかもしれませんが、、

🔶まとめ

各ステージに優劣はないと思っています。
その時代・社会において求められた教育が違ったというだけだと思います。
だからこそ、今この時代においてどのステージを目指すべきなのかを理解する必要があると思います。

時代や社会が求めていない教育スタイルを提供し続けていれば、そのコミュニティは成長が止まり淘汰されてしまいます。
今の日本はインタラクティブ型を目指しているように見えますが、それで良いのでしょうか?
何十年も前からインタラクティブ型の教育スタイルを実施したアメリカやヨーロッパの先進国は今も多くの課題に直面しています。
日本がこれから10年かけてインタラクティブ型ステージに到達した時、同じ課題に直面するのではないかと考えるとなんだかやるせない気がします。

この時代において必要な教育はなんなのか、
教育に携わる方だけでなく、社会全体で考え続ける必要があるのではないかと考えています。

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