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「電力会社の憂鬱」第一章~第四章

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電力会社の企業体質をテーマにした小説です。第一章は無料、第二章から第四章は200円で公開していますが、当マガジンでは全章で500円です。
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記事一覧

「電力会社の憂鬱」 第一章

「電力会社の憂鬱」 第一章

プロローグ海野雅治(うんのまさはる)は元西日本電力の副社長である。
退任後、妻が気に入っていた発電所近くのマリーナに家を借りて、夏になると夫婦で長期滞在している。
マリーナのある入江は穏やかで、釣り人達のために海釣り用の筏がいくつも並んでいる。朝、民宿から舟で送ってくれて、夕方に迎えに来てくれるシステムで、筏には簡易式トイレまで設けてある。
海野が釣り糸を沈めてから一時間ほどたった時、異変が起きた

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「電力会社の憂鬱」 第二章

「電力会社の憂鬱」 第二章

第二章 活躍と暗躍大異動海野はアメリカから帰国するとすぐに小村社長から辞令を受けた。
社長の小村純一郎は、小柄だが筋肉質で眼光鋭く威厳に満ち溢れている。
業務の説明の際でも、担当者が少しでも誤魔化そうとすると、一瞬で見抜く頭脳と眼力を兼ね備えている。
ただ笑うと、誰もがホッとするような優しさも感じさせる。

「君の頑張りはいつも本社から見ている。
『異色』らしいけど、これからも現場ファーストを貫い

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「電力会社の憂鬱」 第三章

「電力会社の憂鬱」 第三章

第三章 事故と故意中央制御室日本海発電所の中央制御室は、4セットある。1・2、3・4、5・6、7・8号機、それぞれ2基づつ同室に併設されている。
完全なミラー方式なため、運転員が勘違いしないよう、一方は薄いブルー、もう一方はイエローに基調色を変えてあった。
部屋の雰囲気は、まさに宇宙戦艦のコックピットのような感じで、上段に100を超える四角いアラーム点滅装置が並んでいる。
中段は、数々のバロメータ

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「電力会社の憂鬱」 第四章

「電力会社の憂鬱」 第四章

第四章 改革と挫折補修センターあれから一年後、ようやく「補修センター」の竣工にこぎつけた。
竣工式には西日本電力からは小村社長もかけつけた。
来賓は通産省次長、副知事、地元町長と華やかであった。
社長や来賓の挨拶の後、テープカット。
施設は海野が案内した。
その後、パーティーへと進んでいった。
席上、海野は小村に礼を言った。
「社長。遠路ありがとうございます。」
小村は上機嫌であった。
「海野君ご

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