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リーダーシップの意外な盲点:組織の長期的な原動力を生むのは何か?

リーダーシップ発生の起源

人が二人以上存在すると、リーダーシップが発生します。その二人が、持ち場を分担するだけなら話が早いのですが、仕事はそんなに単純ではありません。最初から答えやアプローチが分かっていることは、ほぼないからです。私たちの仕事は問題解決の連続です。問題が大きくなればなるほど、細かく分解して取り組んでいく必要があります。それを一人で片づけていくと物量的に終わりが見えません。分解して、一人ひとりが自分の持ち場で力を発揮していくことが求められます。

目標達成の重要性

そうなったときに、どこを目指すのかという目標が必要になります。そして、目標が達成されると私たちは充実感を得ることができます。また、目標を達成しようとするプロセスにおいても、充足感を得ることができます。目指す方向に向かっているという充実感だったり、難しいタスクに向き合うこと自体の高揚感だったりします。

人間関係の複雑さ

ところが、仕事を分担することになった時点で、一人ひとりがすることに違いが生まれます。適材適所といいますが、現実はそんなに簡単ではありません。うまく行っているうちは良いですが、うまく行かなくなると途端に不平不満が出てきます。あいつの方が楽している、美味しいところばかり持っていっている、不公平だ…などなどの不満です。だから、集団を維持するために、それぞれの心情に配慮する必要が出てきます。

関係構築の価値

そう考えてくると、リーダーシップにおいては、目標達成的な機能が主で、集団維持、関係構築的な機能が従のように思えます。しかし、関係構築が主である方が良い結果を生むという考え方もあります。

成功の循環サイクル

MITのダニエル・キムが提唱する成功の循環サイクルです。キム教授は、「関係の質を高めることから始めよ」といいます。関係の質が高まることで、思考の質が高まり、行動の質が高まって、結果が変わってきます。

これが、ひとつずれて、「結果の質」から始めるとうまく行きません。
このモデルが面白いのは、悪循環といいながら、周っている向きは同じということです。どこから始めるかで、好循環・悪循環が変わってきます。つまり、いくら結果=目標を達成しようと働きかけても、関係の質が低いとパフォーマンスが積みあがらず、空まわりするというわけです。

人間関係と個人の成長

この点を見落としているリーダーが多いように思います。目標は、短期的な仕事の原動力にしかなりません。中長期的には、関係の質が私たちの原動力になります。そして、ここで大切なのは、関係の質の良さとは、「波風が立たないこと」ではないということです。他者との葛藤を通じて学び、本当の意味で一人ひとりが前に進むことが大切なのです。

感情の役割と人間関係

私たちは、生まれ落ちた時から、他者との関係性の中に身をおきます。物理的に身体を持っているからです。また、それ以上に、私たちを特徴づけるのは、感情です。感情の起源をたどると、「快」や「不快」という基本的な感覚に行き着きます。これらは、私たちの日常生活における他者との関わり合いの根底に流れる感情の泉です。時には、ただ誰かのそばにいるだけで幸せを感じ、また別の時にはその逆もあります。これらの感覚は、特定の人々に対してだけでなく、私たち自身の心の状態にも強く影響されます。

他者との相互作用の価値

私たちは、本当の意味で「生きる」ことには他者が必要だということを忘れてしまうことがあります。人間関係は、私たちに安全、愛、そして所属感を提供します。これらは、私たちが自分自身だけでは決して得られない体験です。何より、私たちは、他者との関係性の中で自己を発見し、成長します。他者との相互作用は、単に生理的な欲求を超えたものです。それは、私たちが自己理解と自己実現を深めるための手段となっています。

たとえば、相手が私たちに与える快不快の感覚を通して、私たちは自分自身の好み、価値観、そして感情の複雑さを理解し始めます。さらに、他者との関わりは、私たちが生きる世界の認識を広げます。他者から学び、触発され、時には挑戦されることで、私たちは自分だけの限られた視野を超えて成長する機会を得るのです。

人は潜在的に互いを賢くしあう能力を持っている

コンサルタントとして経営者と対話していると、互いを活かしあい、より良く生きる仕組みの枯渇が課題になっていると感じます。効率化ばかりに目が行った結果、誰でも良い仕事に追われているパラドックスに陥っています。これは、生成AI等、テクノロジーの急激な進化やコロナ禍の体験によって浮き彫りになったように思います。

今後さらに、人の本質的な生きる喜び、働く尊さを取り戻すことが課題になってくるでしょう。そのカギを握るのが、他者との関係性を出発点とした組織づくりであり、リーダーシップです。

戦略構築はAIの方が得意です。これからの経営は、人どうしの関わり合いによって、原動力を生み出していくことが求められると確信しています。
今後も、お客さまと共にそうしたリーダーシップのあり方を探求していきたいと思います。

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