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不登校と中学受験(42)

ある子どもの中学受験と不登校(5)


勉強しかしていなかった彼。

しかし、周りの同級生はクラブも、遊びも、恋愛もといろいろやっていて、そして、勉強もしているのに自分は全く勝てない。

そのことで、さらに焦燥感で追い詰められていった彼。


勉強のことで、さらに苦しむことになってしまいます。


周りの子ども達とも距離をおき、大学受験直前かのように勉強をしていくのですが、定期テストですら、20位以内にどうしても入れず、そのことで悩み、食事をとることができなくなります。

これ以上は危険だと、ご両親に連れられて、これまでとは違う精神科医のところに行き、診察をしてもらうことになり、うつ状態でこれ以上放っておくと良くないと、勉強量を減らして、今は、ゆっくりするようにと言われてしまいます。

勉強だけが支えでここまできた彼は、勉強で追い詰められ、勉強を手放さざるを得なくなり、放心状態の日々を送るようになります。


お母様からお聞きしたのですが、この時の彼の状態は、かなり辛いものでした。

毎日、起きては布団の上に座って、ただ、ボーッとどこか遠くを見ているような状態で、声をかけても、すぐに返事もできず、気がつかないとが多いような状態で、もう一度、見にいくと再び布団の中に入って眠っていたようです。

1日のうち、起きている時間が数時間で、ほとんど寝て過ごすようになり、もちろん、高校にも行けず、どうすることもできない状態が半年以上続いたようです。


高1の後半をほとんどいけず、出席日数不足で、結局、留年になってしまいます。

本人に高校に通う意思もなく、本人とご家族とが高校を中退することを決意します。


このままでは、本当に彼がダメになると焦ったご家族は、いろいろな通信制高校にも相談に行ったり、カウンセリングをご夫婦でお受けになったりされたのですが、彼は動けないままだったのです。

お父様が高卒認定試験のことを説明して、とりあえず、大学には進学できる道筋をつけておくのはどうか、ということに、少しだけ反応を示して、高2の11月の時点で実施される、その年の2回目の高卒認定試験に向けて、ほんの僅かに動き出したのでした。


それでも自分で勉強ができるようにはならず、外に出ることのリハビリがてら、予備校で高卒認定試験の勉強ができることがわかり、これが彼に再び勉強に対する意欲を取り戻させるきっかけになります。

予備校で勉強して、大学受験で全てを取り戻すと決意をして、またもや、勉強に向けてエンジンが掛かってしまうのです。


ご両親はというと、この状態で彼が動き出したことに、ご夫婦で意見が食い違ってしまいます。

お父様は、あのまま死んだような状態になっていても、打開策はないなら、たとえ勉強がきっかけであっても、再び、動き出せるようになったのだから、大学に合格できたら、彼が変わるから、やらせてやればいいと主張されました。


ところが、お母様は、もう勉強などはいい、人として人間らしく生きていけるようになって欲しい、とただそれだけを願われていたようです。


お父様には「動けなくてもあのままがいいと言うのか!」と激しく責められて、お母様は強く言うこともできず、彼が大学受験に向けて突っ走り始めていくのを、懸命に「無理をしないで、無理をしないで!」と泣きながら止めることしかできなかったと、当時を振り返って私に教えてくださいました。


彼はこの高2の11月の高卒認定試験を1回で全科目合格します。


そして、これをきっかけに、「京都大学合格」を最終目標に、彼の辛い戦いが再び始まってしまうのです。

ここからが本当に辛い戦いになってしまい、一歩間違えば、ニュースを賑わせていたことになっていたと、お母様からお聞きしたのです。




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