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「営業」はAIによってなくなる?

クリエイターって代わりがいくらでもいるんです。
新しくて面白いクリエイターって自然に出てくるんです。
新しいタレントって毎年たくさん出てきますよね。
あれと同じで、常に新しいクリエイターって生まれてきます。
しかも今ってインターネットがあるから、面白いクリエイターって探したらたくさんみつかります。
(引用:大人の条件)

渋谷のバーテンダー・林伸次さんの著書『大人の条件』を読みました。

飲食店の激戦区・渋谷で20年以上もバーテンダーを務めてきた林さんが、若者に向けて書いてくれた人間関係や仕事や恋愛に関するエッセイです。

本中ではいろんな面白い話が登場するんですが、今回はそのなかでぼくが一番印象に残っている話について書きます。


「AI(人工知能)が人間の仕事を奪う」みたいな話、よく聞きますよね。

あとそれとセットでよく聞くのが、悲観論的な言い方をすると「クリエイティブな仕事した残らなくなる」で、楽観論的な言い方をすると「人間はよりクリエイティブな仕事に集中できる」って話です。

キーワードは「クリエイティブ」。


クリエイティブってなんだって話ですが、その言葉を聞いてたくさんの人が思い浮かべるのは、歌をつくったり、映像をつくったりといった、何かしらの「つくる」行為に紐づいたものかなと思います。

だから逆に言うと、すでに作られたものを売る「営業」って、相対的に言うとクリエイティブとは遠くて、今後はAIによって代替される仕事なのではないかと思う人もいるのではないでしょうか。

著書の林さんも、どちらかと言えばそういった考えを持っていました。

いまこの文章を書いているぼく自身も、何となく「何かを作る仕事が今後も残るものなのかなあ」と思っていました。


ただ、そういった言説に対して広告業界で働く林さんの友人が放ったのは、「営業ってめちゃくちゃすごい仕事で、今後も大事な役割になる」という内容の言葉でした。

そして、その一部が今日のnoteの冒頭で引用した言葉です。

内容を補強するために、違う箇所も引用します。

こちらも、その広告業界で働く人が林さんに対して言った言葉です。

結局は「この人は人間として信頼できる」とか「この人は変なことは絶対にしない」とか、そういうことが人が誰かにお願いしたり発注したりする一番の理由なんだと思います。
で、一番大事なのは、そういう人間関係って、「旬」とか「もう古い」とかってことがないってことなんです。


ぼくはいま「BOTCHAN(ボッチャン)」っていう自社プロダクトを扱っている会社で働いているんですけど、企業ってひとつの分け方として「自社プロダクトを売る会社」か「他社のプロダクトを代わりに作るor売る」かって基準があるんですね。

ぼくたちの会社はいまのBOTCHANを開発する前は後者の「他社のプロダクトを売る」ことによって売り上げを立てていて、「代理店」とも呼ばれます。

それで、代理店は基本的に「属人的」な組織形態になりやすくて、そこが弱点として挙げられやすいんです。


なぜ属人的になりやすいかと言うと、結局売っているプロダクト自体は他の人が作ったもので、「何を売っているか」では差別化できなくて、「誰が売っているか」に収斂するからです。

言い換えると、お客さんが「商品」につくのではなくて、「人(=営業担当)」につきます。

「この商品だから買う」じゃなくて「この人だから買う」。


ただ、経営目線からすると、基本的に「属人性」が高まることは経営のリスクとして捉えられることが多くて、組織は基本的に「いかに属人性のない組織を作るか」という方向性を志向します。

そのため、「属人性が高い」って表現は、ビジネスにおいては基本的にマイナスな意味として使われることが多いです。

ただ、「組織としてのリスクヘッジ」みたいな観点を度外視して、「個人としてこれからの時代をどう生きるか」のような観点で見たときには、「この人だから買う」って、とても価値のある行為だと言えるのではないかなと思いました。

そこの信頼関係の間には「AI」とか「最新のテクノロジー」とかが入り込む余地はありません。

そう考えると、「クリエイティブな仕事しか残らなくなる」って話、もう少し再考の余地がありそうですね。

そもそも、クリエイティブな行為を「自身の価値観や思想をもとに何らかの表現をすること」と定義するなら、「人間関係の構築」って、クリエイティブな行為そのものだなとも言えますよね。


そして最後に若干脱線する&あんまり結論を決めずに見切り発車した話を書くと、ぼくのとある友人が「SaaS」という事業モデルでやっている会社で働いているんですね。

「SaaS」というのは「Software as a service」の略で、正確な説明は実際にググっていただきたいなと思うのですが、すごくざっくり言うと「対してクラウドのサーバーを通じて、お客さんに"商品の所有権"ではなくて"商品の利用権"を売る」みたいなイメージです。

これだけだとなんのこっちゃか分からないと思うんですけど、例えば「家でドラえもんの映画を観たいな」と思ったときに(話を単純にするためにレンタルの選択肢をこの世から消します)、ひと昔前は映画の「DVDを買う」って行為をしていたと思うんですよね。

これが「商品を所有する」に該当します。


ただ、いまってそういう人ってたぶん少数派で、「映画を観たいな」って思ったら、加入している「ネットフリックス」をポチってするじゃないですか。

あれって、「ネットフリックス」に対してお金を払っているのは、「ネットフリックス(≒ドラえもんの映画)を所有していること」ではなくて、「ネットフリックス(≒ドラえもんの映画)を見る権利」に対してなんですよね。

って感じです。

これ以上書くとこのnoteのテーマが「営業とAI」から「SaaSとドラえもん」に変わってしまうのでこれくらいにしておきますが、脱線の本題は実はまだ出ていなくて、このSaaSって事業モデルと相性が良いのが「THE MODEL(ザ モデル)」と呼ばれる組織モデルです。

THE MODELも簡単に紹介すると、組織形態を「マーケティング」「営業」「カスタマーサクセス」などの役割ごとに分けて、効率よく事業を行おう!ということを目的とした組織モデルになっています。

それで、この「効率よく行おう!」って、言い換えると「属人性を下げよう!」ってことなんですね。


だから営業も「誰が営業をやっても自社の商品を売れるように組織体制を作ろう」ってことを目指しています。

具体的には、そのために開発段階でめちゃくちゃ良いプロダクトを作って、マーケティングが自社のターゲット顧客をたくさん集客して、営業はもうあと商品の詳細を紹介するだけで受注できて、そのあとはカスタマーサクセスにパスするみたいな状態を目指します。

SaaSとかTHE MODELとかって、いまめちゃくちゃ流行ってるんですけど(ぼくがいま生息しているベンチャー界隈で)、これってこのモデルがその組織において洗練されればされるほど、「自分である必要がなくなっていくよなあ」って思いました。

組織としては、めちゃくちゃ最高の状態なんですけどね。

その友人も、扱っているプロダクトが素晴らしいものであるがゆえに、「自分が売った!って感覚が少し乏しいのが寂しい」と言っていました。

このあたりは、トレードオフと言ってしまえばそれまでなのかもしれないですけどね。

あとは、事業とか会社とかのフェーズも関係してくるかもしれません。


最後にすんごい脱線してしまいましたが、今日このnoteで書きたかったことは「営業って仕事もとても尊くてこれからも大事だな」って話でした。

ぼく自身もガッツリ「営業」として働いた経験がないので、改めて「営業の人たちすごいな」ってこの本を読んで感じました。

クリエイティブの定義はどうであれ、「この人なら信頼できる」と思ってもらえるような人を心がけて、ぼくも生活していきます。


ぼくが本著の著者・林さんにインタビューさせてもらった記事も、ぜひ読んでください!



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