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flower shower #シロクマ文芸部

花吹雪が舞い、顔の上に落ちてきた。

散り際の桜の木がある川べりで、一人寝転んでいたケンは、突然降ってきたたくさんの花びらに驚き、思わず起き上がった。
ケンの視線の先には、カオルの笑顔が見えた。
真新しい制服に包まれ、手には桜の花がついている。
「……何だよ」
ケンは顔についた花びらを払った。
「ぼんやりしてたから、桜のシャワーで目を覚まさせてあげようと思って」

カオルはケンの中学時代の同級生。
学級委員で成績も優秀だったカオルは、今年の春から、進学校として有名な高校に通っていた。
「休みの日まで制服着てんのか。どんだけ学校好きなんだよ」
話しかけるケンの横にきて、カオルは座り込んだ。
「違うよ…今日は登校日。学力テストがあってね。テストの成績でクラスが決まるんだ」
「……さすが進学校だな。まだ一ヶ月経たないのに、クラスまで変わっちゃうのか」
ケンの言葉に、カオルは少し寂しそうな顔になる。
「仲良くなった子もいたのにな……。年に何回もテストして、その度にクラスが決まるみたい」

風が強く吹いて、花吹雪が舞う。
今度はカオルの頭の上に、桜が落ちてきた。
ケンはカオルの髪についた花びらをとり、自分の手にのせた。
「別に関係ないだろ…」
ケンは手のひらにある桜を見ながら言った。
「……え?」
「クラスが違ったって……学校が違ったって……友だちはずっと友だちだろ」
「そっか……そうだよね」
カオルはそう言いながら、ゴロンと仰向きに寝転んだ。

「……制服汚れるぞ」
ケンもカオルと同じように、また寝転んだ。
「大丈夫だよ……桜のシャワーが洗い流してくれるから」
緩やかになった風にのりながら、桜の花びらが舞っているのを、二人はいつまでも見ていた。


小牧幸助さんの企画に参加させていただきました。

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