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育児とキッチンドリンカー→アルコール依存症への可能性

今回は、3歳と1歳の子育て(育休中)している保護者からの相談です。家族構成は夫を含め4人家族。子育てスタイルは夫の仕事が変則勤務かつハードワークのため、母親のワンオペ状態です。台所に立つと、いつの間にか缶酎ハイを飲んでいます。気が付けば、完全に酔っぱらっている時もあります。アルコール依存症になりそうで怖いです。

※今回の相談は保育園の園長・主任クラスが対応していける内容にもなっています。

◆様々な条件が重なり合い構成される子育て環境

時代の変遷と共に家庭環境も変遷を遂げていますが、子育て環境のベースは「家庭環境」にあります。家庭環境に子育て方針や教育、子どもへの育児アプローチ等が積み重なることで子育て環境が整っていきます。

2015年ころから使われるようになった「ワンオペ育児」という表現。しかし、ワンオペ育児については、古くからの子育てスタイルでもあります。

戦後、団塊、バブル期を経て徐々に世帯によって家庭の貧富の差が表面に顕著に現れるようになってきました。核家族化も深刻になり、子育て中の親は中々自分の気持ちを打ち明ける場所がなく、子育てに奮闘しながらも子育てを行っている親は内向的になりがちになる、自己肯定感の低下、子育ての方向性を見失う等…「子育てを楽しめない状態」で子育てをしている家庭が増えてきました。

今回の子育て中におけるキッチンドリンカーの大半が母親に起きやすい事象でもあります。

◆キッチンドリンカーへの道

皆さんの、この質問に対する回答や見解はいかがでしょうか。

「なぜ、台所でお酒を飲むようになるのか?」

この質問の回答は本人しかわかりません。が、、、

きっかけは、
イライラしていたから。気持ちがもやもやしていたから。話す相手がいなくて苦しかったから。一人で頑張って子育てしてるのに、上手くいかない感じがして辛かったから…。

そもそも、キッチンドリンカーとはですが、自宅での育児を中心に台所で食事を作りながら、お酒を常態的に飲むことです。

「キッチンドリンカーはアルコール依存症へ誘発しやすい」

と言われており、最近よく出てくる「毒親」の原因の1つとされています。

そして、母親に話を聞くと、

「子育てが大事なのは分かっているけど、出口が見えない中で、自分が何をしているのか分からなくなってきました。夫に話しても子育てに伴う自分の頑張りは当たり前のこととして認識され、自分は誰からも認められない存在なんです。お酒を飲むと嫌なことが忘れられる。」

母親に悪気はなく、自分なりに気分転換しようとした結果なのです。

また、妻がキッチンドリンカーであることに気が付かない場合が多いです。
さりげなく台所で飲んでいる、お酒の缶などはゴミ分別としてすでに処理されている、夫か仕事から帰宅した時はすでに子どもを寝かしつけと同時に寝てしまっている等です。

◆母親の心の健康を取り戻すために保育園ができること

このような状態の母親は以下について回復の援助等が必要になってきます。

ア)自己肯定感、自尊心等の回復
イ)アルコールからの回復
ウ)家庭環境の把握と父親へ子育て参加や子育ての協力認識を高めるアプローチ 等。

保育所保育指針では、「保育所を利用している保護者に対する子育て支援」を打ち出しており、我々は保護者の子育てを自ら実践する力の向上に寄与する使命があります。

ア)自己肯定感、自尊心等の回復

子どもの登降園時に子どもの日々の様子を伝え、園でできたことは家庭での子育ての積み重ねが園で発揮されている旨を丁寧に母親に伝えます。母親が子どもの成長を保育士と共に感じていく中で、母親自身でも気付かなかった子育てに対する有能感を感じることが非常に大切です。

イ)アルコールからの回復

キッチンドリンカーが常態化(アルコール依存症の可能性)の場合は、アルコールなしで毎日をしっかり送れる自分にチェンジしていくことが、治療を受けていく成果であり、そのゴールは断酒です。

また、キッチンドリンカーからの脱却は、母親の自宅での行動範囲になるので、我々の範疇を超えてしまいますが、今回のように母親から悩みとして聞いた場合は、関連機関への促しが限界値になります。
まずは母親とのコミュニケーションを密にし、定期的な面談を経て信頼関係をしっかり構築していきながら、関連機関の促しへと繋げていきましょう。

ウ)家庭環境の把握と父親へ子育て参加や子育ての協力認識を高めるアプローチ

母親の心理的状況を予想すると、夫にキッチンドリンカーを打ち明けるのには非常に勇気がいることであり、恐怖心(夫婦間の信頼関係の崩壊や夫からの不信感を持たれてしまう可能性)や今後の子育てに対する不安が大きく心を占めています。

母親の気持ちに寄り添ったうえで、自然な流れを準備し、子どもの成長について夫婦で共有してもらうよう園で面談を行うのも一つです。あくまで保育園の立場は子どもが中心なので、子どもを健全育成していくために家庭でどんな取り組みや関わり方をしていくのが良いのかを話していきます。

そして、父親に対する子育て参加への意識向上に方向を示していきましょう。父親も家庭環境も様々なので、すぐに目に見える解決や結果が出ないかもしれませんが、地味に我々がさりげなく伴走していくことは重要です。

このレベルの対応になると、さすがに一般保育士には対応できかねます。熟練した主任クラス・園長で支援していきます。

◆まとめ

夫であり父親である皆さんも日々の仕事やストレスで疲れていると思いますが、どうか妻と子どもたちのために、

・妻の話に耳を傾け、一緒に過ごす時間を多くするようにする
・妻の変化(睡眠、食欲など)を見逃さない
・子育て不安が引き起こすキッチンドリンカーやアルコール依存症、鬱病、自律神経失調症等の知識を高める

夫の気付かない間に妻が心の病気になっていたという事は起き得ることです。

母親が自己肯定感や自尊心を取り戻した時、その母親からは「優しい笑顔」がキラキラとこぼれていることでしょう。
家族の絆は保護者・子どもの「心の健康」を保ちます。

保護者の皆さん、応援しています!!





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