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子どもが出てくる映画の話をしよう。その7『ストレンジャー・シングス』

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』は、超人気のアメリカのテレビドラマシリーズ。じつは、遅ればせながらつい最近この存在を知り、ネットフリックスでシーズン3までイッキ観!

・・はまりました。

ジャンルでいえばSFホラーとなるそうだけど、じつはミステリーであり青春映画でありファンタジーでもあるという、エンタテイメントてんこもりのドラマなのだ。

でもここでは、『子どもが出てくる映画』という視点から、この作品を見てみたい。

シーズン1の舞台は1983年のアメリカの田舎町。12歳のなかよし男子4人組を中心に物語がはじまる。そのうちに一人が行方をくらまし、いっぽうどこかからあらわれた超能力をもっているらしい不思議な少女。謎の研究所。なんのへんてつもないこの町で何かがおこりはじめる・・。

最初みたとき、「え? なんで80年代?」とつい思ってしまった。この頃はまだ、テレビはチャンネル式で、電話はダイアル式。もちろんスマホもネットもCGを駆使した映像世界もない。ロシアがソ連と呼ばれ、冷戦が続いていた時代だ。音楽はレコードかカセットで、子供たちは、マーベルコミックや冒険ファンタジーに夢中。あ、でも翻訳語だが『オタク』なんて言葉は使っていたな。でもそんな時代だからこそ、謎の研究施設も闇の国からうまれた怪物との戦いも、ホラーもファンタジーもリアルになっていく。

大きなトランシーバーをあやつる子どもたちが自転車で疾走するシーンは、思わず「飛ぶんじゃないか?」と思うほど映画『E.T.』みたいで、どこか既視感がある。

そう。このドラマは80年代の魅力もまたてんこもりなのだ。ファッションや音楽や・・映画の数々。『死霊のはらわた』『ゴースト・バスターズ』『バック トゥ ザ フューチャー』『スター・ウォーズ』などなど、当時人気の映画へのオマージュがあちこちにありわくわくしてくる。

少年たちのなかでもカッコいいのは、研究室で育てられたエルという少女。(ミリー・ボビーブラウン)。首をこきと動かして相手をぶっとばしてしまう。敵が飛んで壁がへこむシーンが、大友克洋の『童夢』みたいだーと思ったら、wiki情報では監督は『AKIRA』とかから影響を受けたとある。あ、監督は『ナイト・ミュージアム』などを手掛けたショーン・レヴィですね。

ドラマはR15。いちおう子ども向け映画ではないらしい。ギリおさえてあるエッチ風なシーンがあるからというよりも、残酷な映像シーンはかなり多いせいだろう。それにメインの登場人物は子どもだけじゃない。

すこし年上のハイスクールの姉さん兄さんたちの恋愛事情も組み合わさって、青春映画としても存分に楽しめる。学校にはどこにでもいるイヤなやつやいじめっこがいて、当然のごとく主人公たちとは敵対する。こういうのはもう定番中の定番だと思えば・・このドラマでは最初は悪役だったひとが、しだいに変わっていく、あるいは実はそんな悪いやつじゃなかったという姿も描いている。大人のドラマもけっこう重要になっている。すべてのキャストが、そこにいる意味があるのだ。

この映画のキャスティングで筆頭にあげられているのは、ウィノナ・ライダー。

おお、あの子が今はお母さん役か! と思わずうなってしまうのは、ある年齢より上のひとのはず。ウィノナ・ライダーは行方不明になった息子をさがしまくる、狂信的にもみえる母親役だ。シーズン1ではとくに、こうした「不安」とすれちがいが、恐怖をよりもりたてている。しだいに彼女自身の前夫、恋人たちも登場する。子どもたちだけでなく大人のかかえた哀しみや迷いもしっかり追いかけているのだ。

『子どもが出てくる映画』という点でもうすこし。

シーズン2で子供たちは13歳になり、シーズン3は14歳くらいの設定らしい。そんなわけで、シーズン3になると、少年少女は冒頭からいちゃいちゃキスなんかしまくっている。おかげで保護者である保安官が気をもんで「二人でいる部屋のドアは7センチあけておけ」などという始末。女の子どうしでつるんで買い物したり、恋のかけひきを楽しんだり。冒険に夢中だった子ども時代から、少しずつティーンの世界にはいっていくんだね。

さて、このドラマには、『ゲド戦記』や『指輪物語』などのファンタジーの話もよくでてくる。絶体絶命の事態で、もうここでなんとかしなきゃ!ってときに、少年のひとりがGFにせがまれ、無線で歌を熱唱するシーンがある。それを敵と戦う現場で、怪物に追われる車の中で、仲間たちが、聴いている。ほんとうはそれどころじゃないけど、つい黙って聴いている。ここが、すごくすき。

その男の子が、あんまり女の子にモテなくて、無線の相手のGFも嘘だろうなんていわれてたのに、彼女が実在していっしょに歌を歌っているから・・というだけじゃない。なんといってもその曲は、映画『ネバー・エンディング・ストーリー』のテーマだから。

冒険談にあこがれ、秘密基地をつくり、ヒーローをめざし、トランシーバーでやりとりする少年たち。自分たちのはじまりであり、かつてもっていたもので、もう最後かもしれない、いやまだ終わっていないなにか。歌に耳をかたむける仲間たちや大人たちの思いが見えてくるようだった。

このドラマは、3シーズンかけて、子どもから大人へとうつりかわる少年少女たちを描いた物語でもあった。

ところで、

映画で長くシリーズが続くと子役もまたふつうに大人になっていく。大人になると数年で見た目は変わらないけれど、少年たちはみるみる変化してしまう。あの無邪気そうな少年がこんなゴツクなって・・となるわけで、映画づくりとしては難しいんだろうな。『ハリー・ポッター』は結局親になるまで描いてしまったね。日本の実写映像ではないなあ・・と思っていたら、あるではないか! 倉本聰の『北の国から』。いっしょに成長し、見守ってきた子どもたちがそこにいる。

というわけで、超人気の『ストレンジャー・シングス』は、なぁんとシーズン4がつくられるらしい。さすがにもう子役という年齢じゃないだろうけど、彼らにあうのは楽しみだ。

写真をまたお借りしました。Thanks.


















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