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JW221 羽衣を盗んだ男

【開化天皇編】エピソード6 羽衣を盗んだ男


第九代天皇、開化天皇(かいかてんのう)の御世。

紀元前153年、皇紀508年(開化天皇5)2月6日、ついに先代の陵(みささぎ)が完成。

開化天皇こと、稚日本根子彦大日日尊(わかやまとねこひこおおひひ・のみこと)(以下、ピッピ)は、解説を始めるのであった。

合いの手は、大臣(おおおみ)の物部鬱色雄(もののべ・の・うつしこお)(以下、コー)である。

系図(物部氏)

コー「ほな、解説を始めましょか!」

ピッピ「うむ。よろしく頼む。」

コー「まずは、陵の名前でっせ! 剣池嶋上陵(つるぎのいけの・しまのえ・のみささぎ)やで!」

ピッピ「二千年後の地名では、どこになるのじゃ?」

コー「奈良県橿原市(かしはらし)の石川町(いしかわちょう)ですぅ。」

地図(孝元天皇陵・剣池嶋上陵・奈良県橿原市石川町)
孝元天皇陵(遥拝所)

ピッピ「して、陵の傍に池が有るが、これが剣池(つるぎのいけ)なのじゃな?」

コー「そ・・・それが・・・。」

ピッピ「如何(いかが)した?」

コー「池の名前は、石川池(いしかわいけ)やねん。」

地図(石川池)

ピッピ「なっ! 違うのか!?」

コー「ロ・・・ロマンということにしておくんなはれっ!」

衝撃の事実を知り、ピッピが驚愕しているところで、中臣神聞勝(なかとみ・の・かみききかつ)(以下、ミッキー)がやって来た。

系図(中臣氏)

ミッキー「陵が完成したね。おめでとう! ちなみに、エピソード218以来だよ。ハハッ。」

ピッピ「お・・・おう・・・。ミッキー・・・。来てくれたか。」

ミッキー「大王(おおきみ)の御指示なんだもん! 断るわけにはいかないよね。」

コー「なんや、よう分からへんけど、大王・・・何か、お命じになったんですか?」

ピッピ「うむ。神社を紹介してもらおうと思ってな・・・。」

コー「神社?」

ミッキー「我(われ)の父上が祀(まつ)られた神社が有るんだよ。ハハッ。」

コー「父上の神社? 汝(いまし)の父上、言うたら、梨迹臣(なしとみ)こと『トミー』のことやな? トミーを祀った神社が有るんか?」

系図(トミー)

ミッキー「そうなんだよ。その名も、乃弥神社(のみじんじゃ)だよ! 創建は十代目の時だよ!」

コー「次の大王の御世か・・・。せやけど、なんで『トミー』が祀られてんねん?」

ミッキー「そうだねぇ・・・。父上のお母さんが、天女(てんにょ)だからかな?」

コー「は?! 天女?!」

ピッピ「そうなのじゃ。『近江国風土記(おうみ・のくに・ふどき)』において、天女の羽衣伝説(はごろも・でんせつ)が語られておるのじゃ。」

コー「羽衣伝説?」

ミッキー「そうなんだよねぇ。父上の父上・・・。だから、我(われ)のおじいちゃん、伊香津臣(いかつおみ)こと『イカ』殿は、天女と結婚したんだよ。」

系図(イカ)

ピッピ「いつの頃か、よくは分からぬが、『イカ』は、淡海国(おうみ・のくに)で暮らしていたそうじゃ。」

ミッキー「そうなんだよ。そんなとき、余呉湖(よご・のうみ)で、八人の天女が、白鳥と一緒に水浴びしているところを目撃しちゃったんだよね。」

地図(余呉湖)

コー「目撃っちゅうか・・・覗(のぞ)き・・・とちゃうんか?」

ミッキー「そ・・・それで、一目ぼれした、おじいちゃんは、飼っていた白犬に羽衣(はごろも)を盗むように命じたんだ。」

コー「窃盗(せっとう)? は・・・犯罪やろ! ほんで、羽衣を盗んで、どうすんねん?」

ピッピ「実はな・・・。羽衣が無いと、天女は、天に昇れなくなってしまうのじゃ。」

コー「ええぇぇ!! それは、完全に嫌がらせやないかいっ!」

ミッキー「そ・・・それで、天に帰れなくなって、現地に留まった末っ子の天女が、我(われ)のおばあちゃん、なんだよ!」

コー「帰れへんようにして、嫁にしたっちゅうことか・・・。立派な犯罪者やがなっ!」

ミッキー「ち・・・ちなみに、羽衣を掛けていた木が、天女の衣掛柳(ころもかけやなぎ)として伝わってるよ。」

地図(天女の衣掛柳)
天女の衣掛柳

ピッピ「とにもかくにも、そうして『トミー』が生まれたわけじゃな?」

ミッキー「その通りだよ。生まれた子供は、二男二女。臣知人(おみしるひと)、梨迹臣(なしとみ)、伊是理比咩(いせりひめ)、奈是理比咩(なせりひめ)なんだよ。」

系図(イカと天女の子供たち)

コー「ほうかぁ。『トミー』にも、兄弟姉妹がおったんやなぁ。」

ピッピ「して、『トミー』を祀りし、乃弥神社(のみじんじゃ)は、二千年後のどこに鎮座(ちんざ)しておるのじゃ?」

ミッキー「二千年後は、消えて無くなって、我(われ)のおじさん、臣知人が祀られた乎彌神社(おみじんじゃ)に合祀(ごうし)されてるよ。」

ピッピ「トミーの伯父御にも神社が有るのか・・・。」

ミッキー「ちなみに、滋賀県長浜市(ながはまし)の余呉町下余呉(よごちょう・しもよご)に鎮座してるよ。」

地図(乎彌神社〔乃弥神社〕・滋賀県長浜市余呉町下余呉)
乎彌神社〔乃弥神社〕(鳥居)
乎彌神社〔乃弥神社〕(拝殿)

コー「せやけど、なんで、合祀されたんや?」

ミッキー「千七百年後に起こる、賤ケ岳の戦い(しずがたけ・のたたかい)ってやつで、二社とも燃えちゃったことが原因みたいだね。」

ピッピ「二社とも、燃えてしまっておるのか?」

ミッキー「そうなんだよ。そこで、地元の人々は、二柱(ふたはしら)を一緒にして、仮の社(やしろ)に祀ってたみたい。それから、二百年後の西暦1749年、皇紀2409年(寛延2)1月に、積雪で社殿が破損したんで、大きくて立派な社殿を建造したんだって!」

ピッピ「それが、二千年後の乎彌神社(おみじんじゃ)というわけか・・・。」

ミッキー「その通り! ちなみに、合祀される前は、乎彌神社(おみじんじゃ)から南に100mほどの『奥の堂』って平坦な地に祀られてたそうだよ。」

地図(奥の堂?)

コー「せやけど、中臣氏(なかとみ・し)が、淡海(おうみ)にも領地を持ってたとはなぁ。」

ミッキー「そうなんだよ。だから、我(われ)のおじいちゃんを祀った神社も有るんだよ。」

ミッキーの祖父、イカを祀った神社・・・。

そこは一体どこなのか? 

次回につづく

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