見出し画像

マイ・ベスト・フレンド


私は父親ととても仲が良い。

父と娘というよりも、その関係性は友人に近い。

私は父のことが大好きである。


私の父は、適度に家庭を顧みずに仕事に打ち込み、暇な時は子供たちとわーわー遊び、全力で酒とパチンコ(最近は殆どやらなくなったらしい)を楽しんでいる子供みたいな人だ。

50半ばではあるが、普段の精神年齢は25歳くらいだと思う。多分心は同い年。


出張や単身赴任も多い仕事のため、父と共に暮らした記憶は多くはない。

ただ、家にいる時は一緒にカードゲームもしたしオセロもしたし、めちゃめちゃ遊んでくれた。

今でも一緒にショッピングをしたり、映画を見たりもするし、2人で飲みに行くし、母には絶対言えない悪いこと(定期的にめっちゃいいお寿司を食べてる)も結構してる。

雑学が大好きで、ちょっと何かが目に入るとすぐにうんちくを語り出すし、つまんない親父ギャグも連発する。

お腹も出てるし、頭皮も薄ら寂しくなってきたし、全然格好良くないのに変にキザな喋り方をするけれど私の父は最高にやさしくて格好いい。


そんな父と今晩は二時間半も通話をした。

私と父はお喋りなので(祖母の遺伝子が強すぎる)お互い会話の奪い合いになるが、テンポ良く進む話が楽しくって、ついつい長話になる。

長話ができる友人は多くないが、父は私の通話ランキングのベスト4入ってる。先月のランキングだと準優勝だ。おめでとう。

そんな父とは最近「仕事」や「結婚」の話をよくするようになった。

大人になったと認めてもらえたようでなんだかこそばゆいような、嬉しいような。


実は私は父と同じ業界で働いており、この業界がどれだけクソかという話をひたすらするのだが、「確かにお前はこの業界向いてなさそうだよなあ」とか「他にやりたいことないの?」とか「○○とかいいんじゃん?」とかあっさり転職を勧めるところも非常に父の、父らしいところ。

3年は続けてみろ!とか、頑張れ!とか根拠のない「正しい道」を押し付けてこないところも大好きだ。

結婚については、早く結婚しろとも言わないし、心配だから近くにいろとも言わない。(父親ってそういうものかしら?)

むしろ「一緒にいてみてもいっかな、って人が居れば結婚してみれば?30年くらい続けて分かったけど家族ってまあまあ楽しいしなあ」といい加減なアドバイスをくれるし、「俺は別にお前が選んだ相手なら誰でもいいぞ。外国人とかだったら言葉通じっか不安だけどなあ〜」とガハガハ笑う。

もっと父親の威厳とかないの?

アンタそれでいいの?

とも思うけれど、娘の人生を、きちんと他人事として考えて面白がってくれる父に感謝することも多い。

繊細で、自己愛が強くて、臆病で、攻撃的で、とんでもなく捻くれた私は育てるのが難しかったと思う。(主になって育ててくれたのは母だが)

茶化さないで真面目に話聞いてよ!って怒りと悲しみで大声を上げたこともあるけど父は常に冷静で、結局は私が泣きじゃくっていつも終わる。

いつも、なるようになるよって言ってくれる。

欲しい言葉はくれないけど、ちょっとだけ心が軽くなって、まあいっかって悩み事が些細なことに感じてくる。



圧倒的な味方感。

不変の愛を感じるのだ。



今晩、電話でつい、親友の結婚の話を口に出すと、お前も結婚したいの?と聞かれた。

私が「結婚、多分しないと思う。当分は」と言うと少しの間の後、父はちょっと残念そうに「そっかあ」と呟いた。

ごめんね、と心の中で謝ろうとした時、電話口でいつもの煩い笑い声が響いた。



「ま、死ぬ時看取ってくれる人がいれば人生上出来だからな!気長に探せ!」ガハハハ



愉快な私のベストフレンドに、今年の年末は何かプレゼントを買って帰ろう。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?