帰る間際「…久し振りに辰巳屋の『曙の桜』が食べたいな…」と財布を預けられた。好物だった羊羹だ。「明日見てくる。一口サイズを一個でいいね?」「…ううん、二個入りの…」「二個入り?また買うよ?」「…違う、…アンタの分も…」胸が詰まる。自分が世を終える寸前まで、我が母とは斯く在る人か。

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