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夏目漱石「こころ」を読んだ

高校のときに国語の授業で読んだけど、理解できてなくて、ふと気になって読み直した。
もう少し言うと、現在婚活中で、最後の恋愛(笑)とも言えるので、恋愛ものとして頭に浮かんできて、気になって読み直した。

読み終わった感想としては、かなり楽しめた。
以下、物語の内容とちょっとした感想。

主人公と先生の出会い

先生が薄暗い過去を匂わせる。ちょいちょい闇を小出ししていく。これが謎として物語をドライブさせている。

主人公が父の腎臓の病を看取る話。

先生の死の匂わせと重なり、更に死を感じる。
父の病床にいながら、先生から長大な手紙が届いて、主人公が急いで列車に載ったところは、スリリングだった。
そこから先生の手記で物語が最後までいくところも、かっこいい構成に感じた。

若かりし頃の先生、叔父に遺産を騙し取られた話

無邪気に信じていた人や社会が、そうではないのではと疑いの目を向けていくさまがリアルだった。18歳あたりの自分の感覚にも少し重なった。

若かりし頃の先生、Kとお嬢さんの三角関係の話

若かりし頃の「先生」の優柔不断さ、思ったことを伝えない結果関係がもつれて行く様にはイライラさせられたが、20歳あたりの話だろうと思うと理解できる。

逆に言うと、思ったことは早めに伝えて話し合っていれば、ここまで酷い状況にはならなかっただろうなという教訓がある。

先生はお嬢さんが好きなのに、わざわざKを同じ場所に済ませるのもリスク管理的には問題ありだが、いろいろ事情があったので仕方ない気もする。

Kが死んだ後はもうどうしようもないというか、これを引きずって生きるのはかなり辛いだろうなと感じた。
自分を騙した叔父さんと、自分を重ね合わせるシーンはゾッとした。

先生はお嬢さんを、肉欲とは真反対の感覚で(ある種宗教的に)愛していたが、それ故に先生はお嬢さんに辛いことを共有したがらない(汚れさせたくない)のは、これはこれで厄介な関係に感じた。ちゃんと一緒に生きていきたいなら共有したほうが良い、という身も蓋もない感想。

総じて

恋愛小説というよりは、人の心の弱さと死について語っている小説だった。
主人公と先生という複数の視点から、話を組み立てていく様は、晩年の代表作にふさわしい感じがした。


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