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【一緒に勉強】文章力を高めよう・第三講⑤

こんばんは、如月伊澄です。
第3講の続きになります。

参考文献はこちら


【読者はどんな姿勢で読んでいるか②】

【前回の振り返り】

前回、読者に文章を集中して読んでもらうためには、「他人事」を「自分事」に変換するためのなんらかの仕掛けが必要、という話をさせてもらった。

今回は「なんらかの仕掛け」について詳しく見ていこう。

まず、一つ例を見て頂きたい。

携帯メールも使わないような、おじいさんに向けて「スマートフォン」の営業をしている場面である。

「スマホは情報化社会において不可欠な知識」「インターネットで世界中の情報にアクセス」「サブスクで映像も音楽も見放題、聞き放題」などと、営業トークをするパターン。

「スマートフォンを使えると、お孫さんとテレビ電話でお話することができますよ」とお勧めするパターン。

どちらの方が彼の心を掴めるだろうか?

これは前回見てきた

①    押しのアプローチ(説得)

②    引きのアプローチ(納得)

の構図となっている。

そもそも前者は「誰にでもわかる表現」という視点から見ても、あまり出来のよい営業トークとは言えないだろう。

逆に後者は、孫という最大の関心事を持ち出すことで、本来なんの接点もない両者を結びつけることに成功している。

これが「関連付け」のテクニックである。
他人事を自分事に変換させてしまうのである。

もう少し具体的な「関連付け」の方法についてみていこう。

【探偵と助手】

読者に当事者意識を持ってもらうためには、問題意識を共有し、当事者の一人として一緒に考えてもらう必要がある。

そのために必要なのは「読者を議論のテーブルに着かせる」ことである。

書き手が一方的に主張を語るのではなく、読者を交えた形で議論を交わす場をセッティングしてあげよう。

その方法は簡単である。
あなただけの仮説を提示することだ。

方法については参考文献から引用させていただく。

文中の早い段階で、独自の“仮説”を提示する。一般論とは相反するような“仮説”だ。そして読者に「あなたはこの仮説をどう思うか?」と問いかけ、読者と一緒になって、その“仮設”が正しいかどうかの検証作業にあたるのである。

古賀史健(著)20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社 e-SHINSHO)2012 p.140

まさにミステリの推理パートである。探偵とその助手のように、仮説と検証作業を進め、結論を導き出す。読者にゲームのプレーヤーになってもらおう。

【みんな大好き塊魂】

読者を巻き込むための方法として「起”転”承結」という方法がある。

起承転結についてはこちらで復習してくださいね。

上記でも書いたように、起承転結は「ストーリー仕立て」の文章において効果を発揮するものであり、日常文やビジネス文書では「序論・本論・結論」が効果的なのは間違いない。

しかし、この起承転結の考え方を日常文に活かす方法があるとしたら?
それが「起転承結」の考え方なのである。

実際に例文で見ていこう。

①起・・・・・・いま全世界的に温室効果ガスの削減問題が議論されている
②転・・・・・・しかし、地球温暖化現象は本当に温室ガス効果によるものなのか?
③承・・・・・・(その疑問を抱いた理由、客観的事実など)
④結・・・・・・よって、温室効果ガス削減の議論はかなり根拠に乏しいものと考えられる

古賀史健(著)20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社 e-SHINSHO)2012 p142

冒頭に一般論、続けて”転”としての疑問の投げかけ。
読者の関心をぐっと引きつけてから、小難しい検証作業に入り、結論へとつなげていく。

ただ順番を変えるだけで、読者の興味を強く引きつけることができるのである。

もちろん、転で仮説を立てる以上、承ではきちっとした論理展開が必要である。仮説だけが素晴らしくても、検証が下手な記事に次はないだろう。

ちなみに、ここでのコツは「冒頭に真逆の一般論」を持ってくることにある。伝えたい主張があるのであれば、そこから文章を始めるのではなく、まずは主張と真逆の一般論から文章を始め、そこに反論するように「転」としての「主張」を持ってくるべきであろう。

最後にミステリで考えてみよう。

ある豪邸で屋敷の主が冷たくなって見つかった。

警察「これは自殺だな」 起
探偵「いや待ってください。これは殺人事件です!」 転
警察「なんだと?何か証拠でもあるのか?」
探偵「~謎解き~」 承

謎解きのロジックが通っていなければ、事件は解決に導けない。
そんな探偵はただの邪魔者でしかないはずだ。

さらに言えばここで警察が「これは他殺だ」などと言い始めた日には、探偵の魅力は半減してしまう。警察が見抜けないほど巧妙に隠されたトリックを鮮やかに解き明かすからこそ、探偵の魅力は輝くのである。

仮説における検証もこれと同じ。
ただ、探偵には助手がつきものだ。

文章を書くあなたが「探偵」だとしたら、読者に「ワトソン君」を演じてもらうことが、読者を文章に没頭させるコツなのだ。

少し回りくどい書き方をしてしまったので、参考文献よりまとめを引用し、この回の終わりとさせていただこう。

問題は、仮説を自分一人で片付けてしまうのか、それとも読者に問いかけ、一緒に検証していくのか、という点にある。もちろん、望ましいのは後者だ。

古賀史健(著)20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社 e-SHINSHO)2012 p143

【はしがき】


まだまだ第3講は続きます。長いです、あと2,3回分くらいはあるんじゃないかな・・・・・・。

この文章力講座の記事にも、学ぶたび付け焼き刃で学びを活かそうとしているのですが、どうですかね?

改めて第一回を読んでみると「もっとここはこうした方が・・・・・・」とか、「十年前の自分はこの書き方じゃ読まないかな」とか、いろいろ考えることがあるので、多少は学ぶことが出来ているといいなぁ。


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