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003_雑居ビル

雑居ビルがある。
そこそこの繁華街の外れに雑居ビルがある。

1階部分には地元の信用金庫が入っているが、2階から最上階の3階までは何も入っていない。

信用金庫入口横の2階へと続く階段からは、割れて変色したプラスチックの置き看板と薄黄色のビールケースが重なっているのが見える。

昔は個人経営の飲食店がいくつか入っていたのだろうか。
薄暗いので、立ち入り禁止の柵越しに覗けるのはそれくらいだ。

アルバイトに行く際に前を通るので、普段は気にもとめない日常の風景。

アルバイトの帰り道、その日は珍しく月が綺麗にでていたので、何ともなしにその雑居ビルの向かえで空を見上げた。
道路を挟んでいたので、最上階までよく見える。

良い月だな、と思っていた矢先、屋上に人が見えた。3〜4人ほど。
表情までは確認できないけれど、ゆらゆらと左右に揺れている。

深夜とまではいえない時間だったけれど、人通りも少ない場所ということもあって、なんだか怖くなって足早に帰った。


翌朝、天気も良かったし昨晩のことも気になったし、あのビルまで散歩することにした。

信用金庫の開店にはだいぶ早い時間だったけれど、入り口の付近ではスーツ姿の男性職員が熱心に掃き掃除をしていた。

軽く会釈しながらその前を通る際、ちりとりの中がちらりと見えた。
白と黒の長い紐みたいなものが何本も入っていた。

一瞬ぎょっとしたけれど、声かけるのも変かなと思ってそのまま通り過ぎた。
足元には掃かれる前の紐みたいなものが数本うにょうにょしていた。

なんだったんだろうと今でも思う。



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