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介護問題に取り組むシンガポールのデザイナー

「知り合いにノルウェー人の友人がいてね、彼の父が老いて、認知症を発症したんだ。父を認知症を対処してもらえる老人ホームに入所させようとしたのだけれども、父の年金と彼の財産でカバーできる施設はノルウェーでは見つからなくて、解決方法としてタイの施設に入所させたんだ。彼も父も、何の縁もない遠いアジアの国にお世話になることになったのだ。介護問題は、これから世界中で深刻化する問題なんだ。」

先週、高齢化、特に介護問題について取り組んでいるシンガポール在住のデザイナーと知り合い、一時間程、オンラインで話して、冒頭のエピソードを含め興味深い話をいろいろ聞けたのでメモしておこうと思います。

50代後半の彼は、シンガポールに住んでいます。十数年前に移住したそうです。その前は、台湾に住んでいたそうです。最近、長く勤務していたデザインファームを辞め、デザインスクールでの教師の仕事も控えめにして、一人会社を設立したそうです。そこで介護問題を解決する仕組みを開発するビジネスをするそうです。もちろん、このテーマだけやっていてもお金を稼ぐのは難しいでしょうから、関連ビジネスもやられるのだと思いますが、自分にとってのcallingは介護問題解決なのだと思います。

個人と社会と国の問題を地続きにして考えるDesign thinking

彼の話で、とても印象的だったのは個人としての介護問題と、社会、国、世界の介護問題を地続きにして、考え、整理して、解決策を探ろうとしている点です。彼の父はアジア人、母は北欧の人だそうです。二人は、今は離婚して、母は生まれ故郷に、父はオーストラリアの老人ホームに入っているそうです。両方の家を行き来しなければならないので非常にお金がかかると言ってました。
そして、彼が今、取り掛かろうとしているのがシンガポールの介護問題です。この問題を、介護現場の問題、医療システムの問題、国家政策の問題の3層でとらえ、これが統合されないまま問題が山積みになっていると言ってました。介護現場の人手不足、若い人たちが敬遠するので、移民に頼らざるを得なくなっていること、介護問題を解決しようとするITシステムは次々とたちあがるが、個別の課題への対応だけで、システム連携がされていないので、国としての介護問題を解決するためには機能していない、など指摘していました。

ヘルスケアデザイナーとしてキャリアを積んできた彼は、より上流に登り、高齢化、介護問題というより深刻な社会問題を解決する方策を考えるデザイナーとして生きていこうとしていました。そして、もちろん、日本社会もシンガポールと同様の介護問題があることを知っていて、あれこれ尋ねられました。僕の父も、今88歳で、一人暮らしをしていたのですが、つい最近、大腿骨を折ってしまい、入院しています。そういう意味で、この問題は一個人として常に考えざるを得ない問題なのですが、ビジネスの側面として捉えることはまったくなかったので彼の話とビジョンが大変新鮮でした。

彼の指摘通り、介護問題も、起業家が果敢に挑むべき社会課題ですね。彼の話でたくさんの気づきがありました。


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