Web3は既存産業に新たな価値をもたらすのか 〜採用市場のBraintrust〜
昔からある産業にもWeb3の波は来ています。ただ「Web3でディスラプトする」と単純に言える代物でもなく、「新しい価値を提供する」というケースが多いと感じます。
ではどんな価値をウリにしていて、その内Web3ならではの価値は何か?
ユーザーは実際Web3ならではの価値を理由にサービスを利用しているのか?
といったことを、実際のサービスをもとに、ユーザーから私自身が直接伺った話も踏まえ探ってみます。
本日取り上げるのは「採用市場」から、Braintrustという、テック系のフリーランス人材向けサービスです。
Braintrustの提案するユーザー(エンジニア)目線での主な価値
サービスサイトとホワイトペーパーには下記のようなことが挙げられています。
報酬にかかる手数料がゼロ(従来サービスは20〜30%程度とのこと)
ハイスキル人材が集まる仕組みがあり高単価が期待できる
エージェント的な役割のユーザーもおり仕事を案内してくれる
リファラル等によりBraintrustトークンを稼げる
トークンを保有することで運営にも参加できる
医療保険などを割引で利用できる
補足として、人材の報酬にかかる手数料はゼロですが、発注企業は、人材に払う報酬の10%相当額をBraintrustに払います。なので単に手数料を人材ではなく企業に課しているだけという見方もできますが、どこかで運営費は稼がねばなりませんので、これでも良心的と言えるかもしれません。
また、ハイスキル人材の割合を多く集める仕組みとして、リファラルによる報酬があります。自分が既にユーザーで、自分の紹介した人材または発注企業がBraintrustに登録して取引を行なった場合、その取引額に応じた報酬がトークンで自分に入ります。そのため、高単価の人材もしくは高単価な発注をする企業を紹介するインセンティブになる、という理屈です。
あとは、ユーザー登録に際してユーザー同士の審査(Peer-to-peer vetting)があります。具体的には不明ですが、何かしらの方法で人材の質=単価レベルを担保しようとしています。
ユーザーはどこに価値を感じているのか(本質的な価値はWeb3だからこそなのか)
もちろん、Braintrustのサイトで紹介されているように、トークンが稼げたり、それによりサービス運営に参加できたりする(どこまで決定権があるかはさておき)、Web3ならではの部分に価値を感じる人はいます。
ただし、そういう人がマジョリティかどうかは不明です。
ネット上の情報は信憑性の検証が難しいので、自分の友人でBraintrustに登録してみたという人に話を聞いてみました(サンプル数1ですが)。
彼の意見はこんな具合です。
なぜ登録したかというと、一番の理由は高単価案件が期待できるから
そしてエージェント的に仕事をマッチングしてくれる人がいるなら楽だと思った
手数料も取らないみたいだし
以上。
Web3的な部分は?トークンでリファラル報酬もらえる部分とかは?と聞くと
「それは全然関係ないかな。価値の変動が激しいトークンもらうよりは、価値が明確ですぐ使える現金とかAmazonギフト券とかもらった方がずっと嬉しい」
とのことでした。
この手のサービスの本質的な価値が何かを考えれば、自然なコメントかもしれません。
それは「あくまで自分の希望やスキルに合う内容と単価の仕事を極力楽に見つけられること」であり、リファラル報酬がトークンだとか、運営に参加できるとかは、それに必ずしも直結する話ではありませんので。
今回のケースでは、Web3だからこその本質的な価値を見出せませんでした。しかし気づかなかった部分があるかもしれませんし、採用市場をはじめWeb3サービスは他にもありますので、引き続き探ってみたいと思います。
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