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Kazik Radwanski『Cutaway』&『Scaffold』ブレッソンとマッケンジーへの漸近

カジク・ラドワンスキ(Kazik Radwanski)短編二本。『Cutaway』は建設労働者として働き、恋人との間に子供が生まれようとしている男が迎える短い変化の時間を"手"のみで表現していく。壁をドリルで破壊する手、漆喰を捏ねる手、恋人とのSMSに返答する手、お金を引き出す手、恋人の手を握る手、頭を抱える手、窓の露を払う手。それぞれに不安や喪失感といった感情が宿った手の動作が連鎖していく。右の掌に怪我をしてから治るまでの長い時間を感じさせない、短く切られた場面の数々。窒息しそうなほどの視界の狭さ。そして、身体の一部を介して世界を見るという手法は正しくアシュリー・マッケンジーのものであり、妙な感動があった。『Scaffold』もアシュリー・マッケンジー形式の作品だ。カナダで働く東欧移民(多分ボシュニャク人)の男二人が、中庭に面した家の窓サッシを交換するという話。二人の顔は見ることができないが、足場を組んで、サッシを嵌め込み、コーヒー休憩をして、ペンキを塗って、という二人の動作が強調されており、外見ではなく動作(労働)から彼らが何者かを知ることになるという点が興味深い。顔が見えないだけで彼らの見る景色は見えるという意味では『Cutaway』より世界に開かれた作品。

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