大傑作。凄まじく速い。アントニオーニくらい誰もいない街の通りで初めて出会った男女が見つめ合い、次のカットではセックスしてるみたいな。しかし、出鱈目な速さというわけでも、クシシュトフ・ザヌーシ『Illumination』みたいな時間の無情さがある速さでもなく、行動の中間を可能な限り省略していくタイプの速さなので、緩急もハッキリしていてバランスの良さすら感じる。例えば、フランシスカ指輪目撃→近所の女が井戸で同じ指輪をしてるという2カットで、不倫は一瞬で描かれてしまうが、フランシスカの戸惑いは時間をかけてゆっくり描いている。まぁ間は考えりゃ分かるっしょくらいの温度だからこそ、この映画に特異である闘鶏部分がより注目され、そこを突破口に悲劇へと突き進む。西部劇の撃ち合いのように睨み合う闘鶏たちの短いショットも見事。物語は闇落ち版『サンライズ』というシンプルなものなので、大胆な省略も自然に機能している。

・作品データ

原題：The Romance of Aniceto and Francisca / El romance del Aniceto y la Francisca
上映時間：63分
監督：Leonardo Favio
製作：1966年(アルゼンチン)

・評価：90点