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Virginie Verrier『Marinette』マリネット・ピションのサッカーへの想い

Virginie Verrier長編一作目。フランス史上最高の女性サッカー選手と呼ばれたマリネット・ピションの半生を描いた一作。彼女の30年間を90分にまとめたためにやや駆け足ではあるが、家族/サッカー/恋愛というエッセンスは過不足無く収まっている。飲んだくれで暴力的な父親、嫉妬からマリネットを虐めるチームメイトなど敵対的な人物も多くいるが、サッカーをすることに協力的な母親、学生時代に入っていた男子チームの監督、SMOの監督、フィラデルフィア・チャージのチームメイトなど好意的な人物も多く、彼女の努力やプレーが人を惹きつけてきた事実を外側からも垣間見る事ができる。また、米仏双方の女子サッカー界を見てきたマリネットだからこそできる、仏女子サッカーの遅れ(未プロ化、低賃金、低観客動員など)などの指摘が多く盛り込まれている。サッカーがしていたかったのに16歳以上は男女混成チームに入れないと言われた後、グレて不良たちとつるみ始めた頃から変わらない"サッカーしたい!"という熱い思いが感じられて、正直プレー映像より熱くなったかもしれない。この手の作品は、試合での劇的な勝利をクライマックスに持ってくることも多いが、本作品は勝利も敗北も人生の一部として淡々と進んでいく、それどころか90分くらいの試合は瞬く間に過ぎていくような感覚になる。また、アメリカ時代ではマリネットの恋愛面、レズビアンであることを隠さなくてよいと知って、より自分を外に出せるようになっていく様が丁寧に描かれている。ちなみにこの映画、撮影時に観客席は無人で、後に合成されたらしい。全く分からなかったが、確かにチラッとしか映らないので人を入れないほうが安上がりなのかもしれないと思うなど。

・作品データ

原題:Marinette
上映時間:104分
監督:Virginie Verrier
製作:2023年(フランス)

・評価:70点

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