優秀な遺伝子を持つ者だけが成功を手にする世界。
あなたならこの世界をどう生きるか。
　1997年公開のSF映画『ガタカ』は、近未来の世界において’不適正者’の主人公の夢を追い続ける姿を描いた。SFでありながら本作を重厚な人間ドラマに仕立て上げたのは、音楽担当の作曲家マイケル・ナイマンといっても過言ではない。彼は、イングランド生まれのピアニスト・作曲家であり、映画『ピアノ・レッスン』を手掛け一躍有名になった。本作『ガタカ』の音楽は、彼に名誉あるゴールデングローブ作曲賞をもたらした特筆すべき作品。中でも、物語の結末に添えられた本曲「ディパーチャー」は、一度耳に入れば忘れられない。哀切な旋律は、一連の詩のように流れるようで美しい。人情味のあるストリングスと一音一音に重みのあるピアノの音色は、真っ直ぐな志を秘めた魂の告白のように響く。
－戻ることなんて考えず、ひたすら泳ぎ続けた。－
劇中の台詞が頭をよぎった。
本曲は、あなたに教えてくれる。
諦めきれない夢は、夢ではなく、いずれ辿り着く運命だということを。