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独断と偏見で選んだ、愛しのローカルメディア特集。


地元の人で溢れる、ローカルな居酒屋。近所の老若男女が緩やかに交わる、心地の良いカフェ。決して派手さはないけれど、その街にしか存在しない、お店や街の風景、空気感。

そんな尊い日常を、地元ならではの視点で切り取り紹介しているのが、「ローカルメディア」の魅力だと思っています。

私は普段、メインのホテルの企画の他に、フリーで地方のプロデュースの仕事にも関わっておりまして。

実はいま、宮崎県の都農町という人口一万の小さな街のローカルメディアを立ち上げていて、地域の情報を発信する価値や魅力を改めて考えていました。

自身の勉強のために、今まで出会ったローカルメディアや、リサーチのために気になるメディアをピックアップしていると、「地方にはこんなにも、想いのこもったメディアがたくさんあるのだな・・・」と、感動し、いつかこの地域に訪れてみたいと感じたメディアと数多く出会えました。

(こんなにたくさんの良いメディアがあるにも関わらず、その地域のことを知らないと、あまり出会うことがないのが、ローカルメディアのさだめ・・・・。)

今回は、せっかくなので、偏愛・地域愛に溢れた、思わずその街の日常にお邪魔したくなってしまう、個性的で素敵なローカルメディアたちを、まとめてみました。

独断と偏見で選んだ、愛しのローカルメディア特集。

ローカルな旅が好きな人、そして、ニッチですが地方の情報発信の仕事に関わる人には、ちょっぴりためになる情報なはず・・!

それではいってみましょう!


①盛岡という星で

まずひとつ目は、岩手県盛岡市から。「盛岡という星で」というローカルメディアです。

このメディアを知った時、コンセプト・ロゴ・世界観、全てが完璧すぎる・・!と思うくらいに素敵で、ぶっちゃけ、とても嫉妬しました。笑

コンセプトはこちら。(オウンドメディアより抜粋。サイトも素敵だからぜひ見て!)

盛岡を小さく丸いひとつの星に例えます。
今までとは違う角度から盛岡を写し取り、
見つめようとするものです。

「盛岡という星で」とは、盛岡市が2018年から開始している、新プロジェクトです。盛岡市では若年層の人口転出が年々拡大していることが大きな課題となっています。今までは「移住・定住/U・Iターン」という視点から働きかけを行ってきました。

このプロジェクトは、さらにその前の段階である「関係人口」に着目しています。関係人口とは、「移住した『定住人口』でもなく、観光で来た『交流人口』でもない、地域や地域の方々と多様に関わる人々」を指します。実際引っ越して住み始める、というところまではまだ考えられないけれど、なんだかいつも盛岡が気になっていたり、行きたい・ちょっと帰りたいと思っていたり、東京に住みながら「盛岡」という言葉にちょっとだけ反応してしまう。そんな人たちが増えたら、きっと将来盛岡の力になってくれる。そう考えています。
盛岡を小さくて丸いひとつの星と見立て、様々な角度から生き生きと写し取り、見つめ、それをいろんな形で、人に伝えていく。
それが「盛岡という星で」プロジェクトです。

くぅぅぅぅぅ!良すぎる・・・!考えた人は神様かなにかかしら?

もう、びっくりするくらい魅力的で、関わる人たちへの優しい想いがあふれる内容でした。

日々更新されている写真やテキストも、一見、統一感がないようで、でも、全部の投稿に1つ1つストーリーがあって「これも誰かの星なんだな」と思わせてくれる投稿です。共通の可愛い手書きのロゴが、メディアの世界観をキュッとまとめてくれている印象。

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そして、このメディア(プロジェクト)のもうひとつのすごすぎるポイントは、なんと、「盛岡市」が総括しているということ。HPにはこのように記載されていました。

Project Team Member
盛岡市 市長公室 都市戦略室
「盛岡という星で」プロジェクトを総括。個性あふれる民間のプロジェクトメンバーとともに盛岡のことをいつも考え、官民連携のメリットを活かしたマネジメントを心がけています。

泣いた。全こばみほが泣きました。

行政が主体の地方の情報発信や、メディアに関わったことがある人には、この凄さが少しは伝わるかと思います・・・・。涙涙涙
もちろん、官民連携で素敵なプロジェクトが生まれることだって(この盛岡のように)ありますが、行政は中立の立場を取らなければならない場合が多く、尖ったキュレーションができなかったり、個性を活かしきれなかったり、という壁にぶちあたることが多々あります。なんなら、WEBを作ることだけが目的になっているプロジェクトとかなんかも、あったりします。(悲)

私も過去に同じような経験をし、担当者と一緒になってこの障壁を突破できたこともあれば、ぐぬぬぬぬぬ・・・!と悔しい想いをして枕を濡らしたことも・・・。

プロジェクトの(おそらく)オーナーである盛岡市さんが「個性あふれる民間のプロジェクトメンバーとともに盛岡のことをいつも考え・・」というスタンス。素晴らしいいいいいいい!盛岡市で仕事したいいいいい!(笑)

勇気をもって、民間の個性的なメンバーに裁量を任せること。全力でサポートすること。

そんな素敵な関係性が、HPやInstagramからも垣間見えました。はぁ、うらやましい・・・すてき。

発信・キュレーションの仕方、コンセプト、スタンスなど、色々な面で参考になるメディア(プロジェクト)でした。今後も応援したい&私も盛岡に訪れ、紹介されている"日常"に触れてみたいなと思っています。

<盛岡という星で>
・地域
盛岡市
・発信方法
オウンドメディアInstagramTwitter。おそらくInstagramメイン。
・こばみほ感動ポイント
コンセプト。運営の官民連携のバランスやスタンス。日々のストーリーの切り取り方。素敵なロゴ。
・運営体制
盛岡市が総括、homesickdesignという地元のデザイン事務所がインスタグラムの運営、ロゴや各種ツールのデザイン、全体のクリエイティブディレクションをされているそう。納得のクオリティです。大拍手。

②さかだちブックス

まずは、見て下さい。

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このかわいいクリエイティブを・・・・!!
さかだちブックス。キービジュアルも逆立ちしている。なんか可愛い。

こちらは、岐阜の情報を中心に紹介しているメディアで、地元のデザイン会社さんが運営。オウンドメディアにはこのように書かれています。

さかだちブックスについて

さかだちブックスはウェブメディアや書籍の出版を通して、岐阜を中心に身の回りの情報を発信しています。

運営しているのは、デザイン会社「株式会社リトルクリエイティブセンター」。

広告やwebなどのグラフィックデザインやディレクション、ショップや地域のブランディング、商品の企画開発などを行っています。その他にも「ALASKA BUNGU」の運営、「KAKAMIGAHARA STAND」や「やながせ倉庫団地」の共同運営を通して、街と共に歩んでいる会社です。

こちらも、合点、合点。素敵なメディアがある街には、素敵なデザイン会社ありにけり。

SNSでの日々の発信は、編集部のひとたちのリアルな日常が伝わってくる内容で、メディアには実際に通う美味しいランチやモーニングの情報などが紹介されています。さすがは編集部の皆さんで、文章も写真もとても美しいです。

同じく、さかだちブックスさんが運営されている、ALASKA BUNGUという雑貨屋さんも、個性あふれるプロダクトがたくさん並んでいて、興味をそそられます・・・。

自分たちの等身大の日常や、遊び心満載のプロダクトやマガジンの紹介、岐阜の"いいもの"を彼らがキュレーションし、ストーリーとセットで伝える、そんな記事が溢れるさかだちブックス。

そんなメディアからは、彼らの地域への愛情や、地域に根ざした仕事への想い、なにより、楽しみながら岐阜のことを紹介している様子が伝わってきて、見ていて温かい気持ちになるメディアでした。

地元のデザインや企画、ブランディングをやっている会社さんが運営している、というのがこれまたミソで、自分たちのポートフォリオでもあり、ファンづくり・ファンとつながるプラットホームにもなっているというのが良い仕組みですよね。ローカルメディアの最も難しいところって、「継続性」だと思うので、こんな風に、みんながハッピーな形で運営できるのって、理想です。(もちろん、大変だとは思いますが・・・!)

岐阜って飛騨牛くらいしか、あまり知らなかったのですが(ごめんなさい)、素敵なお店やセンスの良いモノがたくさんあるんだなぁ〜と、行きたくなってしまいました!

<さかだちブックス>
・地域
岐阜県
・発信方法
オウンドメディアInstagramTwitterfacebook
・こばみほ感動ポイント
かわいいクリエイティブ。編集力・キュレーション力。みんながハッピーな運営方法。
・運営体制
岐阜のデザイン会社「株式会社リトルクリエイティブセンター」が運営。

③gifudiary

続いても岐阜です。gifudiaryさん。

毎週水曜日に、厳選された岐阜のローカル情報が更新されます。Instagramではマガジン形式で、オウンドメディアではお店の詳しいレポートが紹介されています。

メディアのコンセプトはこちら。(オウンドメディアから抜粋)

『gifudiary』ではセレクトショップのように厳選した情報のみをお伝えしていきます。自分たちが「本当におすすめしたいお店」「本当に良いと思った物」などをご紹介します。更新頻度は多くはありませんが、その分、心を込めて丁寧にお伝えすることを心がけています。

(一部略)

最後に、『gifudiary』は夫婦でこじんまりと運営しています。夫が岐阜市の柳ヶ瀬商店街の出身です。現在は家族で大阪に住んでいるため、月に1回〜2回、岐阜に帰省してお店にお伺いしています。

『gifudiary』を通して、岐阜の魅力が多くの人に届きますように。

・・・・・涙。

伝わってます・・・・。岐阜、行きたくなっています、とても!

記事には、実際に足を運び、体験し、心動かされた瞬間がシンプルながら、とても丁寧に書かれていて、「数や量、頻度ではなく、想いの質量が大切だよなぁ」と改めて気づかせてくれるメディアです。毎週水曜日の更新が心待ちになりそうですよね。

日々SNSを使っていると、コスパ・量・合理的メリットを謳ったほうがバズりやすかったり、とても想いを込めて発信した情報が、一瞬にして消費され流されていってしまうことに、苦しさを感じることもあるのですが・・・。

数多く更新できなくても、こだわりをもって、自分が感動したことを丁寧に伝えていこうと思えて、なんだか勇気をもらってしまいました。

<gifudiary>
・地域
岐阜県
・発信方法
オウンドメディアInstagramTwitterInstagramはマガジン形式。
運営者の方は個人でTwitterもやられていらっしゃいました。
・こばみほ感動ポイント
地元への想い。こだわりをもったお店選び。丁寧なレポート。
・運営体制
ご夫婦2人で運営、毎週水曜日更新。

④しおまちブラザーズ

瀬戸内海に浮かぶ広島県尾道の「生口島」から、街のローカル情報を発信している「しおまちブラザーズ」。

瀬戸田しおまち商店街の活性化に取り組む、しおまち企画という会社のブラザーズたちが日々情報を更新中で、ゆくゆくは、ロースター ・宿泊施設・ 観光案内所・食堂を島で開業予定だそうで。現地での移住生活や仕事の様子をUPしています。

このメディアで面白いなーと思ったのは、ずばり、設定の妙!「島に移住した擬兄弟のアカウント」というおもしろい設定で運営されています。

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情報発信を始めるとなると、どうしてもその街の”良いところ”"キラキラした側面"だけがピックアップされたり、ましてや移住者の人がはじめるとなると、ちょっと気取った雰囲気やクリエイティブのものが良くも悪くも作られがちだったりしますよね。(私もやっぱり、カッコつけちゃうときって、あります。笑)

ところが。しおまちブラザーズは、ちょっとゆるく、ださかわいいネーミング。(ブラザーズが似合うなんて、真心ブラザーズしか出会ったことなかったw)思いっきり、移住者の若者の人格ありきの設定。

島のことを知り、その街に溶け込んで、好きになっていくプロセスまでもが気取らずに、泥臭さすらもありつつリアルに更新されていくのが、とても素敵だと思いました。地元の人からは「なんだか、若者たち頑張ってるな〜!」と応援したくなったり、会話のきっかけになりそうなメディアだなぁと。

自由度が高く、リアルな人格が感じられるからこそ、1万人に届けるよりも、顔の見える100人に日々チェックしてもらって、応援したり、なんなら「俺もインスタにかっこいい写真出してよ!笑」と地元のおっちゃんに言われたりしそうな(笑)、楽し気な雰囲気が伝わってきます。

少し前には、Twitterに迷子犬の投稿があがっていて

ああ、これこそローカルメディア!!と思いました(笑)すごくいい。

実は、Twitterを更新しているしおまちブラザーズのゆかいなお兄さんの方と知り合いでして。応援という意味も込めて!これからの更新も楽しみなローカルメディアです。

<しおまちブラザーズ>
・地域
広島県尾道市生口島
・発信方法
InstagramTwitter
・こばみほ感動ポイント
島に移住した擬兄弟のアカウントというおもしろ設定。気取らなさ。
・運営体制
主体は瀬戸田しおまち商店街の活性化に取り組む、しおまち企画という会社。社員でもあるしまちブラザーズが、それぞれが個人で更新。

⑤金沢民景

石川県金沢市のローカルメディア「金沢民景」。「金沢民景」とは、街の住民が作り出した風景を収集し、本にまとめる活動だそうで、主軸は小冊子です。

おもしろい点は、街のありふれた景色を、独自の切り取り方でしっかりコンテンツにしていること。見慣れた街の魅力を再発見し、楽しく紐解いているところが素敵だと思いました。

小冊子には全て、「金沢の路上でみつけた ●●」というコピーが。
「風除室」なんかもあって、どんな写真が載っているのか興味をそそられたり、「キャノピー」「私有橋」というあまり聞いたことのない言葉も。どれも金沢の人には、馴染みのある景色なんだとか!

私が金沢民景を知ったのは、WEBメディアさんちのインタビューを拝見したのがきっかけなのですが、記事の中でメディアの仕掛け人の山本周さんという方がこのように語られていました。

※WEBメディア さんち記事中から引用
無くなってしまう前に

「僕は大学が金沢だったんですよ。卒業後は東京で6、7年働いて、独立して設計の仕事を始めていました。
ちょうど北陸新幹線が金沢に通った頃に、こちらに来るタイミングがあって来てみたら、大学の頃に好きだった風景が、だいぶ変わっていたんです。

ホテルがずらっと立ち並んでいたり、いいなと思っていた路地が都市公園に整備されていたり。なんだかちょっとやばいな、これ無くなっちゃうと思ったんです」

もともと街なかの風景を撮るのが好きだった山本さんは、それから金沢の、自分の好きな景色をひたすら撮影するように。

(全文は、こちら)

この気持ち、すごくわかる、と思いました。お気に入りだった何気ない街の景色が変わっていってしまう悲しさや焦りを、私も感じたことがあります。もっと写真残しておくんだったなぁ、と後悔したこともあったり。

街のシンボルのような目立ったものは長く残されていきますが、決して派手ではないけれど、小さい頃から見慣れた、実は味のあるなもなき景色って、失われて行きがちだったりします・・・。

誰かの、なもなきお気に入りの景色が、消えてしまわないように。

そんな思いが溢れ伝わってくる、マニアックで愛おしくなるローカルメディアでした。この本を片手に金沢の街を散歩して、お気に入りの「金沢民景」を発見しにいきたいです。

<金沢民景>
・地域
石川県金沢市
・発信方法
小冊子(100円で販売中)、InstagramTwitterWEBサイト
小冊子がメイン。
・こばみほ感動ポイント
街の切り取り方の視点。街の景色に対する想い。
・制作体制
仕掛け人の山本周さんが、取材と文章、全体の取りまとめを行い、奥様の知弓さんが表紙のデザインを担当しているそう。

以上、愛しのローカルメディア5選でした!

いかがでしたでしょうか。どのメディアもその土地ならではの視点で、街の景色や空気感を伝えてくれる、お気に入りのローカルメディアをご紹介しました。

編集者の偏愛やユニークな視点で地域の魅力を棚卸ししていくことで、地元の人達も、自分たちの地域の魅力を再発見できる。ちょっぴり地元が誇らしくなる。

旅する人は、その地域ならではの、個性的な魅力と出会える。

旅へ行く側のわたしが読んでも楽しいし、きっと地元の人が読んでも発見があるのが、素敵なローカルメディアの魅力なんだろうなぁと感じます。

ローカルメディアを調べていく中で、素晴らしいクオリティなのに、更新が止まってしまっていたり、クローズしてしまっていたりと、持続可能な運営体制の確保など、課題は多いように感じています。

切り口や運営方法など、様々な選択肢がある中で、どのような価値づくりをしていけばよいのか。既にあるローカルメディアのことも、もっとたくさん勉強して、地方でのメディアの価値や可能性について、思考していきたいなと思っています。

本当は他にも紹介したいメディアがいくつもあるのですが、長くなってしまったのでひとまずこの辺で。

少しでも、ローカルな旅が好きな人や、地域に関わるお仕事をする方の参考になれば、幸いです!

いただいたサポートは、noteを書きながら飲む、旅先の珈琲に使わせて頂きます!