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【777文字エッセイ】ドアギワに116


腕を交差させた。

削られたフィルムから光線が示される。

侵略者は、塵になった。

あの時代のように象徴となるヒーローは、もういない。

消える年金、上がり続ける物価、そして、社内で火を噴くクッパ。

明日とは、どこにあるのか。

降りしきる雨、乗客たちは結露に気付くこともなく、四角い液晶画面を見つめ続けていた。



敬愛する尾崎豊はイヤホン越しに魂のお叫びをあげる。
「サラリーマンにはなりたかねぇ朝夕のラッシュアワー...」

乗りたくない思いを押し殺し、すし詰の電車に足を踏み入れた。

見たところ乗車率は約150%。

洗濯機からはみでる衣類のような肢体。

「ドアが-閉まります」

無機質な駅員の声をかき消すように、警報音が鳴り響いた。

そのとき、鈍い痛みが左腕に走った。

ムニュウ、ムグゥ、ギニュウ、トクセンタイ



閉まるドアに容赦はない。

まるでハンバーグを挟むかのようにぷにたんな上腕二頭筋をサンドイッチした。

軋むような痛みが、肉を噛みちぎる。


20年前に思いを馳せて、さつまいもを引っこ抜くように力を入れた。


ゼリー状のぷにたんは、解放されたが、まだ終わらない。

服が絡め取られたままだった。

カッターシャツを咥え込むドアが、食虫植物のように見えてくる。

「これが新手の緊縛プレイか。
もういい、このまま次の駅まで過ごそう、ドアとランデヴーも悪くない」

そう思ったそのとき、ドアがミシミシと音を立てた。

それは2つ隣の立っていた青年の指だった。
青年は全身全霊を指先に込めて、ドアを開けようとしてくれているのだ。

そこまでしなくていいのに…
もっと自分の指を大事にしてくれ…


青年のか細い指が紅潮すると同時に、ドアは数ミリ宙に浮いた。

首輪が解かれた犬のように飛び出してくる服。


しかし、青年に感謝の気持ちを伝えようにも、満員電車では言葉を伝えられない。
何かないものか。


そうだ。


自由を得た左手を伸ばして、結露した窓に魂を伝える。


116


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最後まで読んでいただきありがとうございました!

この作品は、電車シリーズ第二弾です!
(第一弾はこちら)


最後の116には、ヒーロー、HEROという意味を込めました。

世の中には、いろいろなヒーローがいるけれど、案外自分のそばにヒーローはいるよね、というお話です。

HEROといえば、キムタクのドラマ(あるよ、の田中さんが好きでした)や、甲斐バンドを思い出しますね!

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本当は別のラスト(実話)だったのですが、「引き算」の表現を意識して、116で締めてみました。(116のオチはフィクション)

説明して終わるより、116で読者の皆様に想像していただければいいなと思いまして。

結露した窓に116と書いた。より、魂を伝えた。という風にしてみました。


それと、もうひとつのこだわりは、

ムニュウ、ムグゥ、ギニュウ、トクセンタイ

というところです。
ここは、本当にくだらなく、無駄な一文です(笑)

しかし、ギニュー特戦隊は世界で大人気の漫画「ドラゴンボール」のファンにとってはたまらないキャラクターですので、さりげなく入れてみました。

AIが文章を書くといわれる時代、人間がAIに勝つには、このように「無駄」なウィットを詰め込むしかないと思うのです。


「社内で火を噴くクッパ」これもAIには書けないはずです。

これは、若手サラリーマンなら誰しもが経験する、理不尽にキレる上司への怒りを書き換えてみたものです(笑)

(この言葉はnoteクリエーターのMAXさんから教えていただきました!)


さらに、今回の本編は777文字です!

Wardで数えました(笑)

読んで頂いた皆様に「777」幸福が訪れる思いを込めています!



そして、もうひとつクライマックス(実話)はこちらです。


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彼は、俺を助けるために、指でドアを開けてくれたのだ。

「ありがとうございます」

すると彼は、にっこりとはにかんだ。

その笑顔はどんな女の子よりもかわいかった。

ずきゅうん。

結婚するなら彼みたいな好青年だ。

「サラリーマンにはなりたかねぇ朝夕のラッシュアワー...」
そんな考えを、ほんの少しだけ考え直した。

あと、5年。下積み時代だと思って、頑張ってみよう。

雨が上がった空には虹がかかっていた。


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どちらのクライマックスがよろしかったでしょうか。

本編の方は余韻を大切にしてみました。


今後もみなさんに楽しんでいただけて、気付きがあるような作品を書いていきますので、よろしくお願いします。


☆全ての社会人に捧げる、一度終わった男の再生譚☆
戦力外通告を受けたプロ野球選手を描く小説も書いています。
↓よければ読んでみてください^^↓ 

(現在、最終回までのプロットをじっくりと練り上げています。第二話は、夏の甲子園開幕と共に公開予定です!)

ツイッターもやってます!ほっこりすること、素敵な人との出会いを呟いたり、懐かしの名曲を弾き語ったりしています!



それと、最後に小ネタを少々。

尾崎豊「サラリーマンにはなりたかねぇ朝夕のラッシュアワー...」

この歌は、Bow!という曲を引用しましたので、尾崎がこの歌に込めたメッセージを伝えさせていただきます。

否が応でも社会に飲み込まれてしまうものさ若さにまかせ 挑んでくドンキホーテ達は 世の中のモラルをひとつ 飲み込んだだけでひとつ崩れ  

↑ドン・キホーテはスペインの作家、セルバンテスの小説です!その感想はこの記事です!

夢を語って過ごした夜が明けると 逃げだせない渦が 日の出と共にやってくる 。中卒・高卒・中退 学歴がやけに目につく 愛よりも夢よりも 金で買える自由が欲しいのかい 


尾崎豊は、学歴社会に疑問符をつけ、社会に飲み込まれてしまうことを嫌っていたのかもしれません。

若さにまかせ 挑んでくドンキホーテ達。

自分自身がそのような挑戦者になれているのか、再度考えてみたいですね!


最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

国家公務員⇒経営者団体⇒民間企業で営業 人生は喜劇を合言葉にブログ毎日投稿 全ての経験をコメディ・ノウハウに昇華! 【野望・展望】 ワクワク・笑顔・本質の捉え方を届ける! 創作=エンタメ映画製作 お仕事改革=教育システム構築 サポートのお金は皆様を笑顔にする事業の資金にします!