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マティス展:1 /東京都美術館

 20年ぶり……
 待ちに待ったアンリ・マティスの大回顧展が、上野のお山へついにやってきた。

 展示作のほとんどは、パリのポンピドゥー・センター(国立近代美術館)の所蔵品。改修工事を契機として、150点もの作品の来日が実現した。
 試みに、ポンピドゥー・センターのサイトで「Henri Matisse」と検索をかけてみると、282点もの作品がヒットする。画像ありに絞れば61点。見たところ、そのうちのかなりの作品に、会場で出合うことができた。
 これはまさしく、空前絶後。

 ※《ルーマニアのブラウス》が来ていなかったことに気づいた。


 本展は、小刻みな8つの章からなる。
 各章の長さはほぼ同じで、章の合間にコラムなどの箸休めは挟まずに、マティスの生涯と創作を時系列で見ていく。なかなかにストイックだ。ポンピドゥー・センターのコレクションをごっそり借用できたからこその構成であろう。

 本展の公式ページでは、8章それぞれの主要作品を、解説とともに大きな画像で紹介。予習・復習に打ってつけの内容となっており、主催側の力の入れようが伝わってくる。

 この立派なページにすでに書いてあることを、あえて繰り返す必要もあるまい。 
 それより、この場でぜひお伝えしたいのは、本展が高まりきった期待を裏切らないものだということ。
 海外の美術館からの借用が主体となる展覧会では、蓋を開けてみるとタブロー(油彩)はリーフレットに載っている作品くらいで、あとはデッサンや版画ばかりだったということも珍しくない。今回のように作家名を冠する展示だと、その作家よりも周辺作家のほうが多かったり……
 もちろん、デッサンや版画、周辺の作例も重要であるし、全体として整った内容となっていれば有意義で万々歳、大歓迎といえるのだが、“羊頭狗肉” の感が多少なりとも残ってしまうのは否めない。観る側も「まあ、こんなところかな」と、慣れっこになっているふしはあろう。
 本展では、広い会場のどこまで進んでいっても、一級品の作品が出てくる。デッサンも含まれるが、奔放でいて確信に満ちたマティス特有の線の魅力を存分に感じられるものが選ばれ、タブローにも見劣りしない。
 終盤の7章『ジャズ』は版画集で、8章のロザリオ礼拝堂に至っては現地に行かないと本物には触れられないけれど、『ジャズ』以外の切り絵の大作や礼拝堂の内装の原画なども出ており、最後まで気が抜けない。


 ——次回は、そんな出品作のなかから、とりわけお気に入りの作品を数点挙げてみるとしたい。(つづく)


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