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フランソワ・ポンポン展 〜動物を愛した彫刻家〜:2 /佐倉市立美術館

承前

 ポンポンの彫刻を初めて観たのは群馬県立館林美術館だったが、直近で観たのは、目黒区美術館であった。加賀百万石・金沢藩の前田家の所蔵品にポンポンが含まれていて、ちょうど1年ほど前、同館の特別展で公開されていたのだ。

 上のリンクにあるように、前田家のポンポンは当主みずからがアトリエを訪ね、直々に発注したもの。それが、このときに初公開(!)されたのである。
 前田家も注文した《シロクマ》の彫刻は、いわずと知れたポンポンの代名詞。人気商品であったのだろう、大小・素材さまざまな《シロクマ》が残っている。
 なかでもパリ・オルセー美術館にある、ほぼ原寸大・大理石製の《シロクマ》が最も有名で、フィギュアなどグッズ化もされている。
 ポンポンはロダンはじめ何人かの彫刻家の助手を永年務めていたが、この現・オルセーの巨大《シロクマ》によって一躍、表舞台に立つこととなった。このとき、じつに67歳。
 それから晩年の11年ほどのあいだに、数多くの動物彫刻を残したのだった。

 《シロクマ》に象徴されるように、最晩年のポンポンは、動物のすがたかたちを極限まで単純化して表現した。
 毛並みの細かな描写はほぼないため、ブロンズや大理石などの素材性が代わって前面に出てくる。それでも、金属・石材の質感は「鋭利」「冷徹」の印象をいだかせず、むしろ「なめらかさ」「やわらかさ」が際立つ。そのまろみのなかに、いきものの肉体の動感がこめられているといえよう。
 このような要素のそぎ落としができた背景には、ポンポンが動物の外面・外形だけでなく、筋肉のつき方や動き方、その生態を日常的に観察し、目に焼きつけていたことがあろう。動物園の常連だったポンポンが檻の前に姿を現すと、動物たちが寄ってきたというほっこりエピソードも伝わっている。
 作品名に聞き覚えのない鳥の名があったので、その場で画像検索をかけてみた。すると、ポンポンが見事に実際の鳥の特徴を捉え、離さず、その種と断定できる要素を残しながら高度な抽象化をおこなっていたことが、よく理解できたのだった。
 動物園などで、動きまわる動物を薄目でぼやかして見てみると、きっとポンポンの彫刻に近い像が結ばれるのではと思われる。ぜひ試してみたいものだ。(つづく
 


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