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地味だけど注目があつまる「B細胞」

以前にT細胞について書きました。

ようは、
後天的に悪者を退治する「免疫」細胞の1つで、悪い奴を見つけて指示するヘルパーとそれをもとに直接攻撃するキラーに大別されます。

実は、同じくリンパ球には「B細胞」というキラーT細胞と類似の機能があり、あまり注目されませんでしたが、最近新しい試みが始まっています。

ようは、
遺伝子工学で編集したB細胞による遺伝子療法で、ヒトの臨床実験許可を当局(FDA)から取得した、
という話です。

まず、B細胞という名前ですが、T細胞が胸腺(thymus)発生由来と同様に、骨髄(Bone Marrow)発生由来からとられた言葉です。

キラーT細胞同様にヘルパーT細胞からの指令を受けて退治するわけですが、面白いことに、学習済みの抗体を生み出せるように自身を変身させます。

このあたりの流れは、下記サイトで分かりやすくまとまっているので紹介しておきます。

今回のニュースで意外だったのは、ムコ多糖症と呼ばれる、糖の生成に必要な酵素ができない病気に対して補助効果をもたらす、という点です。

今まで米国で承認された遺伝子療法は、「血液がん」で発生するがん細胞に対して、T細胞を遺伝子編集(ウイルス情報を挿入して攻撃力UP)で退治するパターンが多く、B細胞かつこのパターンは初の承認です。

興味深いのは、冒頭記事最後に記述のある
「このやり方だと従来と違って免疫力が低下しない」
という箇所です。
従来型の遺伝子療法では、治療行為自体も免疫性、つまり効果が弱くなるという問題があります。
今回のアプローチは、退治ではなく、遺伝子編集したB細胞を通じて新しい細胞を作れるよう機能付加する手法です。

これは、もしかしたら遺伝子療法の新しい境地への開拓かもしれません。
ただ、言い方を変えるとT細胞よりは編集が難しく、特に今回は従来のウイルス情報でなく、トランスポゾンという遺伝子タイプを挿入する方法が採用されたようです。

トランスポゾンとは、名前の通り「動く遺伝子」です。

この遺伝子は、以前は「ジャンク(ごみ)」扱いされたDNA内の情報ですが、近年その働きが見直されています。
余談ですが、DNA内で直接たんぱく質に変換するのはわずか2%で、それ以外はトランスポゾン系です。(細かくはさらに分類)

今では、ジャンクどころか貴重な要素とみられ始めた「トランスポゾン」。1つだけその研究をしている方の紹介記事を引用しておきます。

いずれにせよ、トランスポゾンの特性も踏まえて今回の新しい遺伝子療法が開拓され、これからの活躍に期待が高まります。

改めてですが、免疫の複雑さとそのチームワークの巧みさ、そしてDNAという生命の神秘性には目を奪われるばかりです。

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