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宇宙から見た安全保障3

前回は、人工衛星特有の問題について触れました。

破壊することで自国への被害も起こりうる人工衛星特有の問題もあり、物理的な破壊より安全かつ低コストなのが「非物理的な攻撃」です。

1つ目は、「電磁波」による攻撃です。
これはよく「EMP(electromagnetic pulse)」攻撃と呼ばれ、人工衛星だけでなくあらゆる電子機器全体にも含まれます。
要は、強力な電磁波を瞬間的に浴びせることで電子回路をショートさせてしまうやり方です。
余談ですが、太陽フレアによる自然現象としても起こりうる現象です。以前にも関連で少しふれたので引用しておきます。

関連では、単純なパルス波による過電流だけでなく、マイクロ波/レーザー等を使った高エネルギー出力型も同じように電子回路への攻撃を意図したものもあります。(余談ですが電子レンジもマイクロ波の軍事研究きっかけで発明されています)

2つ目は、「サイバー(電子)攻撃」です。ようは、物理的な機器でなく電子信号自体に対して攻撃する方法です。

まず、民間にも普及したGPS衛星ですが、以前にふれたとおり位置と時刻を載せた電波を全方位に発信しています。
ただ、高度数万kmからの電波であるため、地上につく頃にはその信号強度は弱くなってしまいます。
そこで、これと同じような信号を地上から横やりを入れることで、GPSの受信を妨げます。

信号を受信できないようにすることを「ジャミング」、偽の信号で成りすますことをGPSスプーフィングと呼びます。

ジャミングは同じ周波数で強い信号を送ることで攪乱し、スプーフィングはまず信号内容を識別してそれに近い偽の信号を送ることで実現します。

このサイバー攻撃は現代においても話題になっており、例えば下記の記事でも触れています。

これに対しては、地上でのバックアップ信号でGPSの安全性を高めようとする動きがあります。

そのほかの非物理攻撃で注目されているのがストーキング行為です。

2020年に、一時期ざわっとする事件が報道されました。

元々科学調査用としていたロシアの衛星が、米国の人工衛星にストーキングをしたという事件です。

大事にはいたらなかったものの、これは人工衛星の脆弱性を考えさせるものです。
宇宙デブリの問題もあり、主要国では人工衛星やデブリの位置を可視化するSSA(Space Situational Awareness:宇宙状況把握)を意識しています。
それを踏まえて宇宙空間の交通を整理するSTM(Space Trafic Management:宇宙交通管理)という構想も国際的な議題にはあがっています。

今回取り上げていない宇宙に絡む安全保障の論点もありますが、いずれにせよ、科学技術の発展がより宇宙空間の重要性を高めたのは間違いないと思います。
元々の本シリーズきっかけの安保関連3文書や国連での役割もあり、日本の安全保障の動きは流動性もあるので言及は避けておきたいと思います。

何よりも、2023年がより平和に近づけるように心から願いたいと思います。

<主な参考文献>

防衛白書(令和4年度版)

Space Threat Assessment 2022

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