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小論文は単なる「それっぽく書いた作文」。志望動機、自己PRにも使える文章の”基本”【後編】

「小論文」と聞くだけで億劫になる人もいるが、小論文はいわば

それっぽく書いた作文

なだけ。

小学校のとき、400字詰め原稿用紙に読書感想文を書いた。それとおなじことを、ただ難しい言葉やかしこまった表現で書いているだけで、基本は単なる作文だ。

だからどうか、あまりかしこまらないで気楽に考えて欲しい。



・・・という前編の一番大切な締めの文章を、前編の最後に書き忘れた。

さて、新型ウィルスで世間は騒がしく、休校になり戸惑っている学生も多いだろう。そこで、ライターとしてご飯を食べている私から、ちょっとでも学生たち(大人でも良し)の勉強の役に立てばいいと思って書いた『文章の基本』。

前編】では、文章を書くときの基本となる形と、それぞれの考え方について書いた。簡潔に噛み砕いて書いた場所もあるので、「おお!そうなんだ!」と思う人もいれば「そんな単純なもんじゃないんだよ小論文なんていうのは!」という人もいるだろう。

それでいい。文章に正解はないのだから、自分が納得できるもので学んでいけばいいと思う。


前編のおさらい

前編でまずお伝えしたのは、

小論文や自己PR、志望動機などで問われているのは

「本人が何を考え、どう思っているか」

ということ。

ゆえに、小説などドラマチックな展開が必要な場合に使われることの多い「起承転結」はあまり必要なく、考えや思いをストレートに伝えるために

結論→理由→まとめ

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が大事だとお伝えした。

テーマが「好きな食べ物について」であれば、

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このような流れで、自分の思いを相手にわかるように伝えるだけだ。

では具体的にどう書き進めていけばいいのか。

【後編】では、実際に書き進めていくための方法をいくつかご紹介したいと思う。


骨組みをしっかり考える必要性

文章を書く前には、まず構成を考えよう。実は文章は、構想……つまり骨組みさえあれば8割出来上がっているといえる。

前編からご紹介しているこの図だって、立派な骨組みだ。

タイトルは「好きな食べ物について」

結論・・・卵焼きが好きだ。これからその理由を説明するぞ!

理由・・・何故好きかというと理由はこうだ!

まとめ・・・だから卵焼きが好きなんだよ!

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しかし、このような図だけではちょっと文章が膨らまない……、文章は書けるけどなんだか小学1年生の作文のようになってしまう……という人は、もう少し文章を書くための骨組みをしっかり立ててみよう。

何もないところから文章を生み出せと言われると困るけれど、骨組みやガイドラインに沿って必要な言葉を入れていくことなら簡単にできるかもしれない。


素材を集める

単に卵焼きが好きだ、と言うだけでは漠然としている。これでは文章ではなく、箇条書きやメモのようになってしまう。もう少し書き進めるだけの素材が必要だ。なぜ好きなのか、卵焼きのなかでもどこらへんが最も魅力的に感じるのか、どんな経験を経て卵焼き好きになったのかなどなど、卵焼きが好きな説明をするための素材を集めよう。

卵焼きが好きな理由は……美味しいからだろう。まずくて好きな人はいないだろうし、多くの人は美味しいから好きなのだと思う。では、

なぜ美味しいのか?

・卵自体の味が美味しいから、シンプルに焼いただけでも美味しく食べられる
・甘くても辛くても、醤油でもソースでもマヨネーズでもケチャップでもイケる
・トッピングを混ぜて焼いてもイケる

などが挙げられる。

短い文章ならこの素材で十分書けそうだけど、800文字や1000文字といった長文の場合だとこの素材だけではちょっとちょっと厳しいように思わないだろうか?

ということで、もう少し「卵焼きが好きだ」ということにまつわる素材を探してみよう。

なぜ好きなのか?

・あと一品、というときに活躍してくれる……頼れる存在!
・子供の頃、土曜のお昼ご飯に必ずお母さんが卵焼きを焼いてくれた……思い出!
・卵焼きが上手に焼けるようになるまでたくさん失敗し、やがて成功した……努力・成功体験!

この辺りからエピソードを選んで文章に使っていけばいい。

さらにもう一息。小論文に多い「反論」みたいなところも考えてみよう。必ず「反論」を入れるよう指導する先生もいるようだけれど、小論文にはけしてそういった決まりがあるわけではない。ただ、これまでの肯定的な意見から一転、逆からの意見を交えて考えてみると、選んだテーマについてさらに深く考えることができるし読んだ相手も「おお、客観的に物事を観察できるんだな」と思ってくれる。ので、書くことに困ったら、反対意見やネガティブな仮説を立ててみるといいかもしれない。

もし卵焼きがこの世になかったら……

・「今日はどんな卵焼きにしようかな〜」という日常の小さなワクワクが減る
・なくても困らない。けれど、ないと寂しい。
・焼くだけ、というシンプルな料理が一つ、日本の家庭料理から消えてしまう

最後のはちょっと大袈裟だけど(笑)

このあたりから、使えそうな素材を選んでみよう。


素材を厳選する

さて、素材は集まった。次は、集めた素材の中から必要なものを選んで順番を決めよう。

卵焼きが好きだ。その理由は美味しいから。

・何故美味しいのか

・卵自体の味が美味しいから、シンプルに焼いただけでも美味しく食べられる
・甘くても辛くても、醤油でもソースでもマヨネーズでもケチャップでもイケる
・トッピングを混ぜて焼いてもイケる

シンプルに焼いても美味しいし、ソースやトッピングを選ばない万能さも良い、ということを伝えたい。ここではこれらの素材を全部使って文章にしてもいいかも。

なぜこんなにも好きなのか?

・卵焼きが上手に焼けるようになるまでたくさん失敗し、やがて成功した……努力・成功体験!

卵焼きが好きで、上手に焼けるようになりたくて一生懸命練習した成功体験は今も鮮明に覚えている……とかエピソードとして良さそうなので、これを選択してみる。

・もし卵焼きがなかったら……

・「今日はどんな卵焼きにしようかな〜」という日常の小さなワクワクが減る
・なくても困らない。けれど、ないと寂しい。

卵焼きがもともとなかったとしたら多分困らない。でも、今感じている日常の小さなワクワクが減ると、悲しい。……なんて、なんか文章ぽいじゃない! よしこれを選ぼう。


図にするとこんな感じ。

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ここまでくると、もう文章が書けそうではないか? 

実際の文章っぽく並べてみよう。

Android タブレット – 1@2x

どうだろう、これだけで随分文章っぽいと感じないだろうか?

Android タブレット – 1

テーマ、結論(序文)、理由、まとめが成立している。

最後に、この骨組みにおかしなところがないか、筋が通っているかを確認しよう。おかしなところがなければ、この骨組みに沿って肉付けをしながら書き進めていくだけだ。


書き進める

骨組みをもとに、人に読んでもらうための文章にしよう。先ほどの図は文章ぽい形にはみえるが内容自体はまだまだメモ程度。
きちんとした文章に仕上げる必要がある。

【結論(序文)】

好きなものは卵焼き

数ある食べ物のなかでも、私の好きな食べ物は卵焼きだ。

「私の好きな食べ物は卵焼きだ。」だけでもいいが、テーマに沿ってきちんと答えているように示すためにこう書いてみてはどうだろう。

【理由(本文)】

①卵焼きはとにかく美味しい
卵焼きは万能だ。塩や砂糖を少々混ぜ、ただ焼くだけというシンプルな調理方法でも十分美味しいと思えるのに、ソースや醤油、ケチャップやマヨネーズなどの調味料をかけても美味しくなる。さらに、卵焼きのなかにネギやしらす、チーズや明太子などのトッピングを入れても美味しくいただける。これほど万能で美味しい食べ物は他にないだろう。

②どうして私はこんなに卵焼きが好きなのか
私が卵焼きを好きな理由は、味の美味しさだけではない。卵焼きが好きで、自分でも上手に作ることができるようになりたいと思い、幼い頃何度も何度も練習をした。卵が均一に焼けなかったり、焦がしてしまったり、うまく巻けなかったりと散々失敗を繰り返したが、やがて納得のいく卵焼きが焼けるようにまでなった。この成功体験が、卵焼きが好きだという気持ちをさらに強くしているように思う。

③もし卵焼きがこの世からなくなったら
卵焼きがもし世の中になくなったと仮定しよう。突然卵焼きがなくなってしまうと困るが、もともと世の中になかったものだとしたら、おそらく何も支障はないだろう。しかし、普段私は卵焼きを作るとき、「今日はどんな卵焼きを作ろうかな」という少しワクワクした気持ちになる。卵焼きがなくなれば、こうした小さなワクワク感を得る機会がなくなるので、少し寂しいようにも思う。

それぞれの理由を、骨組みに沿って文章にしてみた。特別何も付け足してはいない、そのまま人に説明できるような文章にしただけである。

【まとめ】

だから卵焼きが好きなんだ。

以上のことから、私はとても卵焼きが好きだ。日本人なら誰でも食べたことのある卵焼きだが、あまりに身近な存在ゆえに軽視されがちだと感じるときもある。卵焼き好きとして私はこれからも美味しい卵焼きを食べ続け、その存在の素晴らしさを伝えていきたいと思う。

「以上のことから、私の好きな食べ物は卵焼きだ。」でもいいが、冒頭の結論(序文)で書いた文章と全く同じになるので、ちょっと捻って「私はとても卵焼きが好きだ」に変えてみた。あとは、前編でもご紹介したまとめの文章を付け加えてみた。

どうだろう?

いろいろと砕けた部分もあるかもしれないが、無事文章にはなった。テーマから話も逸れていないし、大人の作文、つまり基本的な文章を作るという点ではそこそこ読めるものになったのではないだろうか?


大人の作文を書くときの注意事項

小論文では俗っぽい言葉や話し言葉は避けたほうがいいとされている。詳しくは「小論文 NGワード」などとググって欲しいが、こうした言葉は別の言葉に置き換えたほうが良さそうだ。こういうところが、私が冒頭に話した「大人の作文」である理由だと思う。

とても→非常に
すごく→極めて
だから→したがって
でも、だけど→しかし
しっかり→確実に
わりと→比較的
わざわざ→特別に

今書いている私の文章ではこうした俗っぽい言葉も多々使っているが、いわゆる“大人の作文”ではちょっとカッコつけて背伸びした言葉を使ったほうが良いとされている。

また、意見を述べる上で客観性を求められることもあるので、次のような言葉も避けて、言い換えるほうがよさそうだ。

~と思う→~と考えられる
~かもしれない→~の可能性がある
~と感じる→~と推測される、~と思われる
~は嫌いだ→~は適切ではない

ネットでは「絶対使っちゃダメ!」と書かれているので、「〜と思う」という表現だけで失格!と思っている人も多いようだけれど、実際はそうではない。論文などでは個人の見解は必要ないので「〜と思う」は本当に不要なのかもしれない。しかし、誰かが本当に思ったのであれば「〜と思う」も使っていいし、小論文などで自分の意見を伝えなければいけない時には「〜と思う」も使っていいそうだ。

ただ、「〜思う」「〜思う」と連発して、幼稚で曖昧な文章になってしまうのは避けたい。できる限り使わないで済むようにがんばってみると良い。


大人の作文は、ルールを守ってカッコつける

ここまで読んでくださった人はお気づきかもしれないが、小論文や自己PR、志望動機などの大人の作文のようなものは、ある程度のルールを守ってちょっとだけカッコつけて書いた文章でだいたいOKなのだ。

もちろん、もっともっと精度を上げていくためには、私がご紹介したようなゆるい書き方ではダメかもしれない。しかし、

私は卵焼きが好きだ。卵焼きは美味しいと思う。卵焼きをずっと食べていきたいし、食べられなかったら死ぬ。

みたいな文章しか書けなかった人は、今回ご紹介したような方法で文章を書いて(組み立てて!)みてもらってはいかがだろうか。ちょっと今までとは違う文章が書けるようになるかもしれない。




※文章の書き方には正解はありません。「学校の先生と言ってることが違う」ということもあります。文章に関しては、自分がわかりやすい、書きやすいと思ったものを参考にしていけば上達していくと思います。




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