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45歳からのヒルクライムー振り返り編(2)

今から思えば、ロードバイクに本格的に乗り始めて数ヶ月足らずで、試走もせず、どんなコースもわからないままに参加したことを考えれば、1回目の富士ヒルは上々の出来だった思います。
ただ、せっかくなのでもう少し頑張って1時間15分を切ってみたいという思いを抱いたのも事実。そこからパワーメーターを利用した科学的トレーニングの模索が始まりました。もともと研究者で凝り性ということもあって、とにかく参考文献を読み漁って自分なりのスタイルに落とし込みました。
結果だけを見れば次の2021年富士ヒルでシルバー(1:12:36)を獲得できたので、効果があったと言えますが、その後、色々と問題点も浮上します(それについてはまた別の機会に書いてみたいと思います)。


トレーニングの三本柱(2021~22)

それまで近所の坂をゼーゼーハーハー言いながら上っていた僕ですが、シルバー獲得を目標にしたあとは、パワーメーターなるものを入手してパワーを参照軸としたローラーでのトレーニングに舵を切ることになりました。
基本的なトレーニングのゾーンと方法は以下の3つに集約できます(リカバリー的なEasy Rideは除く)。

閾値 Threshold

*60〜75minコース(TSS 80程度)
T01: L4 Intervals 20min x 2(レスト10min)
T02: L4 Intervals 5min + 6min + 7min + 6min + 5min + 6min + 7min(レスト 2min)
*45minコース(TSS 50〜60程度)
T03: L4 Intervals 20min x 1
T04: L4 Intervals 5min + 6min + 7min + 6min + 3min(レスト 2min)

VO2max

*60〜75minコース(TSS 80程度)
V01: L5 Intervals 6min x 4(レスト 5min)
V02: L5-6 Intervals 2min(L5) + 1min(L6) x 6(レスト 5min)
VO2maxのインターバルが効果的なのは>VO2max90%が10分以上の時(Buchheitらの研究)。自分(当時)であれば250W前後の滞留時間を10分以上確保する。

筋力 SFR

*60〜75minコース(TSS 80〜100程度)
S01: 高月(近所の激坂)周回x 5(重めギアで)
S02: L5-6 Intervals 2min(L5) + 1min(L6) x 6(レスト 5min)(重めギアで)

トレーニングで最も重視したもの

時間効率

当然ながら、ホビーレーサーの僕にとってロードバイクはあくまで趣味。日々の仕事の合間に楽しんでやる「ホビー」であって、仕事や家庭に悪影響を及ぼすほど疲弊したり、精神的プレッシャーを感じるような類の活動となっては本末転倒です。
さらに小学生の子供がふたりいる自分にとって、週末に何時間もロングライドと称して家を空けることもできませんでした。だいたい1日にスポーツに割ける時間は1~2時間程度。3時間以上となると休暇中でないと難しい。基本的に早朝5時前後からトレーニングして、子供が起きてくる頃には終了していました。
したがって最も重視したのは時間効率です。上記トレーニングの項目に必要時間が書いているのは、そのためです。その日、スポーツに使える時間の中で最大限の効果を得られるようにトレーニングをデザインしました。

短時間高強度のインターバル

時間的制約がある中で、当時の僕が最も重視したのが、短時間高強度のインターバルでした。Stöggl Tの研究によるとFTP以上の高強度が全体の20%程度を占めるトレーニングにおいてVO2maxの向上率(11.7%)が最も高かったといったように、短時間高強度の費用対効果の高さを示す研究は多いです。
また健康診断で肝機能などの数値を見ると、長時間の実走後の方が悪化し、むしろ高強度短時間のインターバルトレーニングに方が身体的ダメージが少ないことがわかったことも理由です。

みんなで楽しむ!

真面目にトレーニングすればするほど、ライドが単調になってパワーに拘束されてしまいます。パワーに拘束されると妙な強迫概念も芽生えて、結果として自転車がつまらなくなってしまうので、時間があればできるだけ家族や友人とみんなで走る機会をつくりました。
「富士ヒルを何分で走った!」とか「目標としていたシルバーを獲得できた!」という感慨は今は薄れてしまっていますが、みんなでワイワイ言いながら上った時間は、今でも本当に貴重で、得難い思い出となっています。
パワートレーニングは個人的モチベーションの維持に効果を発揮しますが、やはり趣味としてのスポーツの本質は「楽しむこと」にあるのかな。みんなで楽しむことこそが、僕がスポーツを続ける社会的モチベーションとなっています(社会的モチベーションについては下の記事に書きました)。

妻・長男、そしてNさんと富士ヒル試走(2021)。
富士山メロンパンはよく考えると普通の味なのですが、上った後に食べると何故か美味い(笑)。

2021年の富士ヒル

自分なりに割ける時間の中でなんとか効率の良いトレーニングができて臨んだ2021年の富士ヒルは、コロナで参加者が少ないということもあって順位は全く参考にならないのですが、タイムとしては目標の1時間15分を切ることができました。パワー等は以下の通り。
平均パワー:216W
ケイデンス:88rpm
心拍数:151bpm

僕の場合、富士ヒルを自分のFTPでは走れません。それは高度がかなり関係しているように思います。空気が薄くなってくると、普段は余裕のパワーを維持するのもかなり苦しくなってきます。これは今でも大きな課題ですが、結局「実走FTP」の底上げが重要なのだろうなと考えています。
なので、このレースでPWRは4倍程度ですが、実際には集団で走るドラフティング効果があるので、比較的楽にスピードが出せました。つまりシルバー程度であれば4倍で踏めればなんとか達成できます
そして主催者選抜で参加したNさんも見事にゴールド! 1時間15分切るので精一杯の自分には想像できないレベルですね…… 僕が住んでいる日野の「やきとり千鳥」で日を改めて開いた慰労会は格別でした。ちなみにやきとり千鳥はご主人も登山やサイクリングを楽しみ個性的な方で最高の料理を出してくれます。僕は基本は料理はおまかせで、その日に出される皿を楽しんでいます(吉田類の酒場放浪記でも取材されていましたので下にリンク貼っておきます)。

レース後の慰労会。節制していた分、お酒も料理も最高の味わいでした。
やきとり千鳥オーナーの伊藤さん。思えば祝い事でも気軽な外食でも、なんでも千鳥(笑)。
ここは家族の思い出と寄り添った大切な場所。

ただ、シルバーを獲得するために行ってきたこうしたパワートレーニングにも若干の問題があって、それが露呈したのが次回2022年の富士ヒルでした。それについては次回、書きたいと思います。


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