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美しい世界に行きたかったのかもしれない。

北欧福祉の真髄を見た気がした。

この将来のために、
彼らは税金をたくさん、
そして喜んで払っているのだと。

コペンハーゲンの中心に
Old cityというエリアがある。

OLDと言っても
京都のような歴史的な街、という意味ではなく
高齢者が住んでいる、という意味だ。
「街」というか、大きい集合住宅地のよう。

”高齢者だから”という理由だけで
狭い家に住むことのないように、と自治体が
高齢者住宅が集まったエリアを作っているようだ。

団地のようなイメージで、
たしかに各部屋はかなり綺麗で、広かった。

1号館は「Slot(お城)」という名前で
約120年前に建てられたという。

そこから周りに建物が増設され、
徐々に街化していった模様。

例えば、高齢者ゲイ専用の住宅
認知症の人のための高齢者住宅、
65歳以下の認知症の人のための住宅、
認知症予備軍と診断された65歳以下の人が
15週間トレーニング(脳&身体)する施設
500人のウクライナ難民が住んでいる棟、3棟

などが集まった大きな集合住宅地が、
コペンハーゲンの中心地から
徒歩10分もしないところにある。

そこにある、
65歳以下の認知症の人が住む
住宅施設にお邪魔した。

直近の1ヶ月間は、週3日、
認知症の人と毎日5時間過ごした。
祖父も認知症だし、
日本の仕事で介護施設に少しだけ
出入りしたこともある。

だから同世代の中では
認知症を知っている方だと思っていた。

でも、これまでの衝撃がかわいいものに思えた。
それくらい、今回の経験は強烈だった。

まだうまく言うことはできない。

語弊を恐れずに、
そしてかなりの失礼を承知で、
無理に言葉にするなら、

目の前にいる、明らかに顔が若い人が
認知症の症状を表出させているショック。

わたしはこれまで割と、
起きたことや目の前のことを
受け入れるタイプだと思っていた。

しかし「顔が若くみえる人」に対する固定概念が
大きく存在していたことに気づく。

会って20秒くらいで、誰かも知らないわたしに対し
「私たちから家族に愛を送ってね」と頭にキスをして
「わざわざ日本から来たことが誇らしい」と泣く。

「そうだ!写真を撮ろうよ」と言っては、
結局自分の携帯の使い方がわからず、
なんで携帯を触っているのかも忘れて
また「家族に愛を送ってね」と抱きしめてくれる。

滞在時間は30分ないくらいだったと思うけれど、
何度も彼らと出会いなおした。

聞くと、前述した「15週間のトレーニング施設」
の生活を終え、知ってか知らずか
家に戻ることはなく、施設に移ったそう。

その15週間の期間から、仲間と励まし合って協力して
今もこうして共同生活を送れて嬉しいのだと、

各自の部屋はあるけれど、仲間を愛しているから
共有スペースで1日の多くを過ごすのだと、

教えてくれた。

とても幸せそうだった。

愛に溢れて、
子供よりも純粋に、
人の目をまっすぐ見て、
美しい言葉を使って世界を表現する。

今のわたしは
この衝撃は1日経っても消化しきれていない。

ただ、言い表せない感謝があるのはたしか。

彼らがどうか、
どうか安心して愛を受け取れる
美しい世界でありますように、と
祈るしかできなかった。

お返しの愛は無限大、一緒に幸せに貪欲になりましょうね!!