おおた かつひさ

昭和40年生まれ。 30年以上のビジネス経験。前例の無い仕事経験が多め。でもルーティン…

おおた かつひさ

昭和40年生まれ。 30年以上のビジネス経験。前例の無い仕事経験が多め。でもルーティンワークは苦手。 平時に弱く、有事に強い。 スポーツ観戦好き。特に陸上競技、テニス、カーリング。 noteではあれこれと書きたいことを載せてます。 いつの間にか撮り溜まっていた写真も。

マガジン

  • 400字書評集

    400字以内で書いた書評をまとめています。

  • ショートショート集

    思いつきで書いています。短めの超ショートショートが混じっています。

  • スポーツに絡んだ書きもの集

    スポーツに因んだ短い文です。観戦記、スポーツの仕事、スポーツメンタルコーチングなど。

  • 400字エッセイ集

    400字目安の短いエッセイです。テーマは特にありません。その時々の思いつきを書いています。振り返って読むと自分のその時の心情が少し思い出されます。

記事一覧

書評 206 「砂糖の世界史」

表題からは人間の食文化の歴史、甘いものがどの様に食卓を変えてきたかといった話を期待するが、全く違う。 人間は甘味をカロリーとして本能で欲する。だから対価を払って…

書評 205 「人間の大地」

「ちいさな王子」(星の王子様)で知られるサン=テグジュペリの私小説的作品。 飛行機の操縦士、いわゆるパイロットを職業としていた著者。高空から地表を眺める。それ自…

八重山吹

書評 204 「人間はどこまで耐えられるのか」

面白おかしい科学エッセイの様なタイトルだが、限界環境で人間の身体はどの様になるのかを生理学者が解説した本。一般向けを著者も意識していて学術用語はほとんど出てこな…

藤の花

書評 203 「日本アニメの革新」

日本アニメの歴史解説本は作品のストーリーや設定、いわゆる世界観とかターゲット層に視点をおいたものが多いが、本書は違う。 もちろんその視点も持っているが、制作方法…

赤いチューリップ

書評 202 「仕掛学」

他者にある行動をさせたい。そこで、相関する事象をデータから読み解いて導き出す。そんなことを著者は研究していたそうだ。その過程で、どう見ても相関が見出せないのに実…

書評 201 「怖い絵」

名画と呼ばれる西洋絵画。美術館や画集で見て、美しいとか引き込まれるといった感覚を得る一方、凄惨な画面があったり、何か違和感を感じる絵がある。その様な絵を22枚取…

SS97 「手荷物検査」

久しぶりの海外旅行を前に、最新のスーツケースを購入した。小さな機械が内蔵されている。その分容量が少ないし、重いのだが、かなり画期的な機能がついている。 移動中に…

書評 200 「大胆推理! ケンミン食のなぜ」

食にまつわる文化史の著作が多い著者によるエッセイ集。都道府県ないし大きな市の特色ある料理や味付けを取り上げて、考察した22編が束ねられている。 著者は生活史研究…

書評 199 「OPEN」

米国シンクタンクのシニアフェローである著者。日本語では評論家になってしまうが、社会の分析・予想を行う専門家が近いか。 人類史を紐解き、人類の優位性とその発展に寄…

書評 198 「逆ソクラテス」

伊坂幸太郎の短編集。5編はどれも子どもが主人公。伊坂幸太郎と言えば、犯罪者や悪人が主人公で、違法行為をしている中でも人間味が表れたり、途轍もない極悪人に嵌められ…

書評 197 「最後通牒ゲームの謎」

経済学の範疇にあるゲーム理論。交渉する際の意思・行動決定をモデル化して見出そうという学問。しかし、その代表例の最後通帳ゲームでは、最も合理的な意思決定を多くの人…

書評 196 「為末メソッド」

著者が長年唱えている「人間を知りたい」。その探求と、自身が現役時代に考えて実行したことを重ね合わせて書籍やwebメディアで発信をされています。本書はそのエッセンス…

書評 195 「遺跡が語る日本人のくらし」

著名な考古学者で国立歴史民俗博物館の館長を務めた、故佐原真さんの著書。考古学の面白さを中高生に伝える視点で書かれている。 日本人が考古学と言われて思い浮かぶもの…

書評 206 「砂糖の世界史」

書評 206 「砂糖の世界史」

表題からは人間の食文化の歴史、甘いものがどの様に食卓を変えてきたかといった話を期待するが、全く違う。

人間は甘味をカロリーとして本能で欲する。だから対価を払って買う。大量であっても売れる。この前提があって、砂糖が世界商品になっていく過程を記述している。

過程とは主にサトウキビのプランテーションのことで、西欧諸国による中南米とアフリカの植民地化によって形成が加速された。中南米の島々や大陸の土地を

もっとみる
書評 205 「人間の大地」

書評 205 「人間の大地」

「ちいさな王子」(星の王子様)で知られるサン=テグジュペリの私小説的作品。

飛行機の操縦士、いわゆるパイロットを職業としていた著者。高空から地表を眺める。それ自体が特別で、自分が生きる世界への視点が変わる。世界は見方によって姿を変える。壮大な姿は時に過酷でもある。しかし、それを知らなかった自分よりも知った自分の方に価値があると言う。

また、当時の航空機は故障で不時着を余儀なくさせる場面も少なか

もっとみる
書評 204 「人間はどこまで耐えられるのか」

書評 204 「人間はどこまで耐えられるのか」

面白おかしい科学エッセイの様なタイトルだが、限界環境で人間の身体はどの様になるのかを生理学者が解説した本。一般向けを著者も意識していて学術用語はほとんど出てこないが、単なる身体の反応を紹介するだけでなく、なぜそうなるのかまでが明瞭に書かれている。

高度、水深、高温、低温、宇宙空間、強酸・アルカリ性などの極端な環境と場合分けをして、人類が実際に成し遂げた記録と共に、なぜ過酷な挑戦なのかを解説。また

もっとみる
書評 203 「日本アニメの革新」

書評 203 「日本アニメの革新」

日本アニメの歴史解説本は作品のストーリーや設定、いわゆる世界観とかターゲット層に視点をおいたものが多いが、本書は違う。

もちろんその視点も持っているが、制作方法や製作側の経営方針、経営の背景などに言及している。昭和中盤生まれとして「テレビ漫画」の時代からリアルタイムで体験してきた者としては、首肯できるものが多い。

気になったのが「受容」という単語の頻出。需要の誤植では、と思った。実際、素直に読

もっとみる
書評 202 「仕掛学」

書評 202 「仕掛学」

他者にある行動をさせたい。そこで、相関する事象をデータから読み解いて導き出す。そんなことを著者は研究していたそうだ。その過程で、どう見ても相関が見出せないのに実際にある行動を導き出しているものが世の中にはある。その気づきから、調査研究を進め、そのまとめとして書き上げたのが本書とのこと。そして、これが学術研究の対象になり得るとして、名付けたのが「仕掛学」。なるほど。

その前振りからすると、実例集が

もっとみる
書評 201 「怖い絵」

書評 201 「怖い絵」

名画と呼ばれる西洋絵画。美術館や画集で見て、美しいとか引き込まれるといった感覚を得る一方、凄惨な画面があったり、何か違和感を感じる絵がある。その様な絵を22枚取り上げて、解説をしてくれるのが本書。

見ているのが辛い様な厳しい画ながら、当時の欧州では違和感の無い場面であったことの解説はさらっと読める。しかし、画面以上に辛い背景があったとか、違和感の裏側には作者による隠された世情の批判、あるいは壊れ

もっとみる
SS97 「手荷物検査」

SS97 「手荷物検査」

久しぶりの海外旅行を前に、最新のスーツケースを購入した。小さな機械が内蔵されている。その分容量が少ないし、重いのだが、かなり画期的な機能がついている。

移動中に中の衣類を綺麗にしてくれるのだ。
どういう仕組みなのかわからないが、洗濯機がついている様なことらしい。試しに朝、衣類を放り込んでスイッチオン。仕事から帰ってスーツケースを開けてみると、確かに綺麗になっていた。ちょっと皺が目立つが、普段着の

もっとみる
書評 200 「大胆推理! ケンミン食のなぜ」

書評 200 「大胆推理! ケンミン食のなぜ」

食にまつわる文化史の著作が多い著者によるエッセイ集。都道府県ないし大きな市の特色ある料理や味付けを取り上げて、考察した22編が束ねられている。

著者は生活史研究家を称しているが、歴史学や社会学などの学者ではない。言って見ればライターなのだが視点が面白く、なおかつ等身大というか市民目線で調べて考えているのが読者としては馴染みやすい。

本書では福岡の豚骨ラーメンなど誰でも聞いたことがあるものから、

もっとみる
書評 199 「OPEN」

書評 199 「OPEN」

米国シンクタンクのシニアフェローである著者。日本語では評論家になってしまうが、社会の分析・予想を行う専門家が近いか。

人類史を紐解き、人類の優位性とその発展に寄与した最大の要素としてオープン性を挙げている。開放性、受容性と呼んだ方がわかりやすいかもしれない。集団を形成することで地球上の生物の中で圧倒的に力を持った人類。その力の源泉は集団の多様性であり、個々の優位を活かした分業。ならば、その多様性

もっとみる
書評 198 「逆ソクラテス」

書評 198 「逆ソクラテス」

伊坂幸太郎の短編集。5編はどれも子どもが主人公。伊坂幸太郎と言えば、犯罪者や悪人が主人公で、違法行為をしている中でも人間味が表れたり、途轍もない極悪人に嵌められた人が起死回生の一手を打つ様な話が多い。本書は小学生が主人公という点が新しく、後書きで著者もそこに難しさがあったと言う。

それでも著者一流の転がる様な展開や仕込まれた小さな伏線を楽しみながら読み進める。登場人物の個性を子どもなりに際立たせ

もっとみる
書評 197 「最後通牒ゲームの謎」

書評 197 「最後通牒ゲームの謎」

経済学の範疇にあるゲーム理論。交渉する際の意思・行動決定をモデル化して見出そうという学問。しかし、その代表例の最後通帳ゲームでは、最も合理的な意思決定を多くの人が受け入れないことがわかっている。本書はその理由をわかりやすく紐解いてくれる。

人間は目先の経済的メリットだけで動かない。では中長期的にはどうかというと、これまた同様。お金がほしいが、一方で損をしてでも拘る行動もあるのが人間。それはなぜな

もっとみる
書評 196 「為末メソッド」

書評 196 「為末メソッド」

著者が長年唱えている「人間を知りたい」。その探求と、自身が現役時代に考えて実行したことを重ね合わせて書籍やwebメディアで発信をされています。本書はそのエッセンスを整理して、100の見出しにまとめている。

元陸上選手ではあるが、トレーニングや技術的なことは書かれていない。副題は「自分をコントロールする技術」。ただし、メンタルトレーニングのテクニカルなことではなく、考え方やモノの見方が中心。為末さ

もっとみる
書評 195 「遺跡が語る日本人のくらし」

書評 195 「遺跡が語る日本人のくらし」

著名な考古学者で国立歴史民俗博物館の館長を務めた、故佐原真さんの著書。考古学の面白さを中高生に伝える視点で書かれている。

日本人が考古学と言われて思い浮かぶものを網羅し、遺跡や発掘物からこんなことがわかるんだ、と教えてくれる。古代の人々の暮らしぶりを再現するのみならず、共同体から社会への発展過程であったり、抽象的な事に価値を見出す精神の発達といった事まで読み解く。

さらに現代社会の中にも批判さ

もっとみる