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和歌・花のなかに花

「花ぐはし葦垣越しにただ一目
 相見し児ゆゑ千遍(ちたび)嘆きつ」

 万葉集巻11・2565 よみ人しらず


風に乗ってきた甘い香りに
鼻腔をくすぐられ
まるで何かに誘われるように
美しい花が咲き乱れる葦垣の前へやってきた

その途端、
私の目に
ひときわ美しい花が飛び込んできた
一人の乙女がそこにいたのだ

目が合って息を呑む

まるで時が止まったよう

思わず目をそらす
足早に帰ってきてしまった

たった一度だけ
見つめ合ったあの子のために、
わたしは千度も嘆くことだよ

彼女が花なら
わたしは蝶

花の美しさに
吸い寄せられ
すっかり魅了されてしまったよ

彼女の姿が
目に焼き付いて忘れられない

幻のようであり
夢のようなあの一瞬のために
わたしは千度も嘆くことだよ

あぁ…

*

ロミオとジュリエットで
「誠の恋は、目から入ってくる」
というセリフを
書き残したのはシェイクスピアですが、
一目惚れこそ真実の恋なのでしょうか?


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