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むかし、男ありけり/俵万智「恋する伊勢物語」

飲み物の注文をする時に、「とりあえず、ビール」という言葉を耳にするけれど、『伊勢物語』の書き出しというのは、あれに似ている。

「(とりあえず)むかし、男ありけり」


「恋する伊勢物語」は、俵万智さんの「伊勢物語」について綴ったエッセイです。「伊勢物語」は、有名な「歌物語」であり、伝説のプレイボーイ・在原業平の様々な恋が描かれています。本書では、「サラダ記念日」などで有名な俵万智さんが、ご自分の恋愛論、体験談などを交えながら「伊勢物語」の魅力について語ってくださいます。

この本はこんな人におすすめ

①日本の古典文学が好き
②古典は堅苦しくて苦手……。
③恋愛のヒントを得たい

それでは、本作の魅力を紹介していきたいと思います、ぴょん!

*「伊勢物語」とは?

まず、「伊勢物語」の簡単なご説明から。「伊勢物語」とは、平安初期に成立した、和歌にまつわる物語を綴った「歌物語」です。多くの段が「むかし、男ありけり」から始まり、主人公は不明ですが、在原業平を思わせる描写が多数見受けられるため、在原業平の一代記とも呼ばれています。業平といえば、伝説のプレイボーイ。「伊勢物語」には、不倫も、ナンパも、有名スキャンダルも、切ない恋も、どんな恋模様も綴られています。それはさながら、恋愛の見本帳。美しい日本語の表現と、ドキドキの恋模様に目が離せません。

*俵万智さんの「古典&恋愛講義」

本書では、「伊勢物語」の現代語訳とその見所、魅力の他、俵万智さんご自身の恋愛論がたくさん綴られています。ちょっと話が横路に逸れたり、大きく脱線することもしばしば。しかし、それが良い意味で、実際に授業を受けているようなフレンドリーさがあり、読むハードルがぐっと下がりました。「こういう見方もあるのか!」と新たな発見にも繋がり、とても面白いです。

個人的には、「鬼一口」と呼ばれる段について書かれた「殺し文句は永遠に」という章が印象に残りました。業平の超・有名スキャンダルを描いた段ですが、非常にドラマチックかつエキセントリックな物語となっています。

二週続けて平安文学の書評になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?古典ビギナーさんには特におすすめな「恋する伊勢物語」、是非読んでみてください、ぴょん!


(2021年10月31日にはてなブログで公開した記事を、一部加筆修正しました。)

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