見出し画像

なんて静かな土曜日

六月も この週末でおしまいです。

「沖縄は梅雨明けしたんだよ。」

そうですね。
でも こざるカフェの地域は、今日も雨が降ったり止んだりの
梅雨空です。

「土曜日だけど、何だか静かだね。」
「やっぱり この天気のせいだよ。」
「晴れていたら、もっと賑やかに、みんなの声が聞こえる気がするな。」
「人通りも少ないからね。」

こざる達は、皆で わいわい おしゃべりをしながら、
夕飯の仕度をしています。

「でも、こうして静かな土曜日も、悪くはないと思うよ。」
「うん、何だか いい感じの静けさというか、穏やかな空気が流れているみたい。」
皆、うんうん頷きます。

「そうだ!」
こざるちゃんが、何か思いついたようです。
そして、一冊の本を持ってきます。

「どれどれ? あ、『博士の愛した数式』だね。」
小川洋子さんの『博士の愛した数式』、
りこちゃんも、こざる達も、大好きな一冊で、
何度も読み返しています。

「博士が、『ああ、静かだ。』って、つぶやくよね。」
「そうだね。いい意味で、称賛している言葉として使う感じだよね。」
皆、うんうん頷きます。

「ちょっと、読むよ。」
そう、こざるちゃんは言って、一節を読みます。
「正解を得たときに感じるのは、喜びや解放ではなく、
静けさなのだった。
あるべきものが、あるべき場所に納まり、
一切手を加えたり、削ったりする余地などなく、
昔からずっと変わらずそうであったかのような、
そしてこれからも永遠にそうであり続ける確信に満ちた状態。
博士はそれを愛していた。したがって静かであることは最大級のほめ言葉でもあった。
彼は気が向くとよく、台所で料理している私の姿を食卓からよく眺めていたが、
餃子を作っている時は特に驚異の視線を注いだものだ。(略)」

皆、うんうん頷きます。

こざるちゃんは続けて読みます。
「『さあ、できました。』
皿一杯に行儀よく並んだ餃子を私が持ち上げると、
博士は食卓の上で両手を組み、感じ入ったようにうなずきながら言った。
『ああ、なんて静かなんだ。』と。」

皆は、博士が言った「ああ、なんて静かなんだ。」の余韻に浸ります。

「静けさって、優しさが漂っているようないい空気だね。」
「うん、穏やかで、幸せを感じるよ。」
 
夕飯の仕度ができたようです。

「りこちゃん、呼んでくるねー。」
こざるちゃんが、りこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、夕飯できたよ。今日は、餃子、たくさん作ったよ!
皆で一緒に食べよう!」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
明日もまた大雨のようですので、どうぞ気をつけてください。
よい毎日でありますように(^_^)


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?