マガジンのカバー画像

つらつらと

35
運営しているクリエイター

#二十歳

言葉は、誰かの世界の一部

先月末、ずっと好きだった人に会えた。

少し難しそうな本をよく読んでいた人で、その人自身も最近は小説を書いているらしいと聞いていた。読んでいる本と同じように、少し難しい文章を書く人で、計算されたような文章だったけれど、その言葉の裏には強い意志と優しさがあったと思う。私は、彼の書く文章が好きだった。

ある日、そんな彼が「あなたの書く文章が好きです。なんだか、心が温かくなるっていうか。」と言ってくれ

もっとみる

隣のあのひと

私が彼を好きになったのは、初めは確かあの人の字をちゃんと見た時だった。

少し崩された、でも芯が通った、そんな感じの字。姉が「字が綺麗な人って、それだけでいいよね。好きになる。」って言っていたことを思い出す。字だけで誰かにそんな特別な感情って抱けるの?って思ったけれど、確かに字だけで私は彼を好きになった。

それからは毎日ドキドキして、受験で私と同じ日本史を使うと知った時は、それをわざと利用して、

もっとみる

母の日はありがとうっていう日じゃないと思う。

小さい頃から、母の日にお母さんに感謝を伝えたことがなかった。学校でもテレビでも、「母の日にありがとうを言おう」って言っていたけど、照れ臭くて言ったことがなかった。

恥ずかしいことに、二十歳になった今でも母の日にありがとうと言ったことがない。

数年前、母の日なんてすっかり忘れてしまっていたとき、お母さんと本当に小さなことで口喧嘩をした。今はもう思い出せなくらい小さなことだった。どうせいつもみたい

もっとみる

言えなかった言葉の行方

「この言葉が、あの人に届いて欲しいな」

そんな気持ちで言葉が細々と紡がれる。誰に見せるわけでもなく、ただあの人に届いて欲しい言葉がある。ずっと好きだった人に。

「ほんとはずっと好きでした」

言えなかった言葉は、言えなかったからこそ自分の中に色濃く残ってしまって、なかなか消えてはくれない。言って楽になってしまえばよかったのに。

形を変えた言葉の陰に気持ちを隠す。気付かれないように、でも気づい

もっとみる

一人で立つ

自分ではずっと、自分は一人で立てる人間だと思ってた。人間関係もうまく築けるし、勉強の成績だっていいし、運動も平均よりも少しできるし、頭のいい子って言われてたし。

だけど、最近もしかしたらまだ私は一人で立ててないんじゃないかなって思うことが増えてきた。

小説や漫画の主人公みたいに、例えば友達や恋人と喧嘩した時にあんなに思っていることを相手が納得出来るように言えないし、朝は一人で起きられないし、感

もっとみる