【書評】UXリサーチの道具箱 イノベーションのための質的調査・分析

ユーザー調査概論から始まり、「ユーザーインタビュー」「データ分析」「ペルソナ」「シナリオ」「ジャーニーマップ」「ジョブ理論」「キャンバス」の7つの手法について解説があります。タイトルにあるように、定量的な調査ではなく、発見・仮説を得るための定性的なリサーチについて深堀されています。そこで気になった、役に立ったと思う部分だけを簡単に抜粋します。

ユーザー調査概要

ユーザーの声ではなく「体験」を聞くことが重要。これは、商品開発の素人であるユーザーの意見、憶測を聞き振り回されるのではなく、「事実」を捉え、プロである自分たちの仮説に生かす、ということになる。

量的調査と質的調査の二種類がある。量的調査は原則として、ある集団の全体像を推定するために行う。質的調査は、統計的な精度は求めず、深い洞察を得るために行う。

「調査」と「評価」の使い分け。アイデアを持っているならプロトタイプを作って「評価」する。アイデアを持っていないなら「調査」をしてアイデアを生む。

人間中心設計、デザイン思考、リーンスタートアップなど、どのような手法であれ、現在の商品開発の基本原理は――①ユーザーを調査して、②解決すべき課題を定義して、③解決案を創出して、④プロトタイプを作って評価する

ユーザーインタビューの項目

話の糸口をつかむことが重要。インタビューの最初には、①体験の有無 ②体験の頻度 ③直近の体験 を聞くことが定番。そのまま始めると、過去のその事象に関する体験の総括した話をしてしまい、話がもつれていくため、具体的な場面を指定する必要がある。

インタビュアーの役目は「質問をつくる」ことではなく、話を聞いて「質問を見つける」こと。文脈に沿って、相手の言葉を具体的に深堀していく。

「なぜ」という質問には多くの欠点がある。物事の原因は1つではなく、複数の要因が絡み合っているが、「なぜ」と問われると原因と結果を1対1で結びつけてしまう。工場の生産ラインのようにプロセスや因果関係が明確な事象の分析には適している。

そのためインタビュー分析で聞くべきは、「なぜ(Why)」ではなく「どのように(How)」。例えば、「スポーツクラブに入った理由」ではなく。「スポーツクラブに入った経緯」を聞く。なぜ入ったのかは、リサーチャーが仮説を立てて考える。本人たちが説明はできない。

ペルソナの項目

世の中の全員に向けて設計すると誰にも役立たない製品になってしまう。一人に向けて設計することが重要。そのためのツールが「ペルソナ」。設計を支援するための仮想ユーザー。

ペルソナは事実に基づかずに想像で作るものではなく、調査プロセスで発見されるもの。「ユーザーを①パターン化して、それを②擬人化して、さらに③優先順位をつけたもの」

調査によって共通点を見出し、ユーザーを3~4種類にパターン化。このパターンを骨格として、そこにインタビューや観察で得られた事実を肉付けしたり脚色を加えて構築されていくもの。

ペルソナは複数発見されるが、優先順位をつける。優先順位が高いペルソナの要求を優先する。

ジャーニーマップの項目

ジャーニーマップは、ユーザーの体験を可視化して、議論の活発化、ターゲットユーザーへの理解を深めることができる。

ジャーニーマップの正体は「表」である。きれいなデザインにしたものが多いが、それは表を飾り付けしたものに過ぎない。実務的には、表で十分機能する。

項目としては、①ステージ ②行動は必須。思考、感情、ペインポイント、タッチポイント、写真、発言引用、グラフ、感情アイコン、感情曲線、ビジネス機会などの項目も、ユーザー体験を表すものとしてある。多くして複雑にしないように、5~9項目ほどにする。

ジャーニーマップは箇条書き形式で簡潔に記述する。しかし、そのマップの背後にはもっと豊かな体験の物語がある。そういったストーリーの中にこそ解決すべき課題やビジネスチャンスが潜んでいることを忘れない。マップがすべてを表しているものではない。

ジョブ理論の項目

顧客が片付けたい「ジョブ(仕事)」に着目する理論。顧客が欲しいのはドリルという製品ではなく、「穴を空ける」というジョブの進捗がほしい。

一人でもできる簡易なジョブ分析。①どんなジョブさせるために製品Xを雇ったのか ②同じジョブをさせるのに、これまでどのような製品を雇った・雇おうと思ったことがあるか ③それらの製品を雇うとどうなるか(長所・短所) ④そのジョブをもっと上手く片付ける方法はないか?

以上です。

参考書籍も多くあり、知識を深めたい項目については、より深く学べるようになっています。気になる方はぜひ本書を手に取ってみてください。薄いのですが、このように俯瞰的に簡易に学べる書籍は理解を深めるきっかけになると思います。


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K太郎

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