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【体育 ネット型】4年生「バウンドボール」

こんにちは。
先日、Xで「バウンドボール」についてのポストをしたところ、なかなか好評でしたので、改めて詳しく解説をしようと思います。(Xのリンクの下より始まります。)




1.ゲームのルール

バウンドボールのルールは以下の通りです。

2.ボール操作技能の面から見たバウンドボール

バウンドボールで狙っているボール操作技能は
①両手で強く打ちつける
②落下点に入ってキャッチする
の2点です。

①両手で強く打ちつける

両手で強く打ちつけることはなぜ大切なのでしょう?
それは「投能力に直結する」からです。

強く打ちつけるために必要なポイントは以下の通りです。
・頭の後ろまで振りかぶる
・片足を出して踏み込む
・全身を鞭のように使う
・適切なタイミングでリリースする

投げる運動が苦手な児童は、はじめ、どのように打ちつけるかというと、
・おでこくらいまでのふりかぶり
・両足はそろえたまま
・上半身は曲がらないで腕だけ
です。
しかしながら、これではバウンドボールのネットを越すことができません。
そこで、上記のポイントを一つずつ確認しながら強く打てるようになるまでペアでバウンドパスの練習をします。

さらに、苦手な児童にとって両手投げが良い理由がもう一つあります。
それは「体をひねらなくてよい」ということです。
野球ボールのようなものを投げるとき、投げる方向に対して横向きに立ちますね。そして、体をひねりながら投げます。
この「ひねる」という動作をしながら振りかぶり→足を踏み出すという動作をし(体重移動をさせる)、さらに適切なタイミングでリリースしなければならない。
体をひねらせるというのは、横方向の回転です。そこに投げるという行為(縦方向の動き)が加わるわけですね。
難しいのです。
なのでまずは「縦方向のみ」で強く投げる動作を習得させていくとよいのではないかというのが私の考えです。
そういう視点からも、バウンドボールでは「両手で打ちつける」というルール設定にしています。

②落下点に入ってキャッチ

バウンドボールでは、天井方向から落ちてくるボールを取る場面設定になっています。
いわゆる「落下点に入る」という行為が必要なのですね。

これが、
・ある程度大きなボールで
・比較的ゆっくりなスピードで

何度も経験できるというのも、このゲームの良さです。
そうですね。「安心感」のある状況設定になっているわけです。

この技能は、ネット型ゲームでは特に重要な基礎技能になりますし、他のボール運動でも必要な技能です。
だからこそ、中学年でたっぷり味わわせることが必要になります。

3.「遊び」の視点で見たバウンドボール

バウンドボールは、非常に優れた「遊び」だと思っています。
(ここでいう「遊び」とは、ロジェ・カイヨワの言う「遊び」を意味しています。)
まず、思いっきり打ちつけるという動きは、上下に頭が大きく揺さぶられ、ある種の「眩暈の遊び」になっています。
これは実際にやってみてください。思いのほか、眩暈の遊びを味わうことができます。

また、「ギリギリ狙った位置にバウンドで打つ」や「高いボールを取る」といった行為は「運の遊び」要素が強くなります。ただし、「完全な運ではない」というのがポイント。突き詰めれば「技能」にはなるのですが、中学年の子どもたちの発達段階で考えると、「運の遊び」の要素がかなり高くなります。攻撃も守備も「ハラハラ」するわけですね。

さらに、ボールゲームの学習は「スポーツ教育モデル」をベースに学習を進めていきます。スポーツ教育モデルでは、様々な役割を子どもたちが担っていくわけですが、それは「模倣の遊び」に近いものがあります。

そしていうまでもなく、ゲームですので「競争の遊び」であるわけです。

このように、バウンドボールを遊びの視点で見ていくと、4つの遊びが潜在しているゲームであることがわかります。

4.系統性で見たバウンドボール

バウンドボールをネット型の系統で見てみましょう。

私は4年生にこのゲームを入れていますが、系統を以下の通りに考えています。

バウンドボールは、はじめは「キャッチした人がそのままの位置で打つ」というルール設定になっています。しかしながら、これだと苦しくなる場面があります。それが、①ネットに近すぎる、②ネットから遠すぎるの2つの場面です。こうなってくると、パスの必要性が生まれます。ポイントはここです。初めから「パスするんだよ」ではなく、パスが必要になったらパスOKにするのです。これにより、パスの有用性を子どもが実感することができます。そうすると、その場での役割の判断が生まれてきます。3年生のフロアボールで身に着けた役割の認識がここで生かされるのです。そして、バウンドボールの動きやゲーム様相は5・6年のキャッチバレーボールにつながっていくのです。

5.バウンドボールの発展性

さて、最後に、バウンドボールが多くの可能性を秘めたゲームであることをお話しします。

基本ルールは上記の通りですが、このルールをアレンジすることで様々なゲームが生まれます。

①パスを入れる

これは先ほどお話しました。パスを入れることで、役割分担が生まれ、より「チームスポーツ」に近づいていきます。

②片手で打ちつける

バレーボールのスパイクのように、キャッチしたボールを片手打ちにします。これにより、攻撃側の難易度が大きく上がります。

③ネットを下げる

ネットを下げることで、バレーボールのような様相から、テニスのような様相に近づいていきます。さらにこれを発展させ、プレルボールにするということもできます。

このように、様々な発展がこのゲームにはあります。他にもあると思いますで、実践される中で、自由に創造してみてはいかがでしょうか。

6.おわりに

バウンドボールは、非常に単純な動きで楽しめる「易しい」ゲームです。
ネット型の楽しみを十分に味わうことができます。
これは、どこかに実践を見つけて行ったわけではありません。
はじめは、別のネット型ゲームの基礎感覚づくりの運動として、ペアでの強い打ちつけのバウンドパスを行っていただけでした。子どもたちがキャッチのハラハラ感を楽しんでいたので、ネットをはさんでやったら楽しそうだと思ってやってみたのが始まりです。
このように、「新しいゲーム」というのは、日常の授業の中にそのヒントがかくれているのかもしれません。

現場からは以上です。。。

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