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四季折々の俳句 21



「 舞ふために 」

いちにちのはじめの息の白さかな

かき鳴らす鈴の音うつろ神の留守

どつしりとあぐらをかいて眠る山

突つ立ちて我いつぽんの枯すすき

納豆汁なつとくのいくうまさかな

目みひらくわれら旅人きりたんぽ

さいごまで告げぬのも恋息しろし

ぞんぶんに生きてきてこの冬夕焼

十一月過ぎゆくままに過ごしけり

屏風絵をまへに時間がとまりけり

たい焼きの湯気までゆたか大家族

朝が来て終はるしあはせ羽根布団

ふるさとに出たといふ鮫恐れけり

乾杯は明日へのちからボーナス日

海山をまるごと食らふちやんこ鍋

お歳暮の品おくりあふえにしかな

降る雪がこころの底へきえゆけり

舞ふために生まれし巫女か神楽歌

バス今日ものんびりはしる十二月

寒風を真つ正面に立ちにけり

夜といふ奈落の底にひとり咳く

末ながく生きるしあはせ玉子酒

とほり過ぐ人ばかりなり冬すみれ

みあげれば雨うつむけば冬菫

まだ誰のものでもなくて冬すみれ

降る雪の華がこころにのこりけり

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