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上司のための「質問力」活用〜「営業指導」基礎⑤〜

大学時代のゼミの同期会で再開した佐藤と高橋。某銀行で支店長を務める佐藤がふとしたことで部下育成について高橋のアドバイスを受けることに。
今回は、「アプローチ」についてです。

最後までお読みいただけると得られそうな情報は?
✔︎ 事前準備の重要性

✔︎ アプローチの目的とゴール
✔︎ 銀行ならではの雑談とは?

✔︎ 本日の質問

1、忘れちゃいけない、事前準備。

高橋(以下T):では、いよいよ各ステップを細かく見て行こうか。

佐藤(以下S):前回はなんとなくはぐらかされたからなぁ。「聞き耳を立てて頂く」んだったよね。YESを2回とかなんとか。

T:そうそう。そうなんだけど、アプローチの前に、事前準備という大事な大事なステップがあります。

S:もしかして忘れてた?

T:すいません。。。

S:まぁ、いいよ。で、何?

T:こんな感じ。

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S:なるほど。まずは情報を整理、ね。

T:そう。事前準備で最も銀行員が気をつけるべきは、「分かった気」にならないことなんだ。

S:分かった気?

T:そう。銀行は情報の宝庫である口座情報があるから、お客様のことを「分かった気」になってしまう。でも、分かっているのはほんの一部で、分からないことがたくさんあるんだ。

S:でも、どうすればいいの?

T:簡単。分かること、ではなく、分からないことが何かを整理すればいいんだ。

S:分からないことを整理?どうやって?

T:例えば家族構成。こんなシートを埋めていくことで、埋まらないところが分かる。つまり分からないことが整理できる。

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S:これいいね。

T:金融庁のホームページに載っているところから引っ張ってきた。多分どっかの銀行のツールみたいだね。

S:へぇ。

T:家族構成以外にも取引金融機関、総資産、投資経験、将来の夢や希望、お考え、といったものが提案には必要だけど、それも同様に整理する。何が分からないか、は意外と把握できないので、先ほどのような定型のシートを活用して分かっているところを埋めていくと分からないところが把握できる、というのが理想。

S:確かに。で、その上でニーズを想定する、と。

T:そう。分からないことが多い上でニーズを想定するとどうなる?

S:うーん。。ニーズ想定できない。

T:うん。一つにはニーズを絞れないよね。複数できちゃう。

S:あ、だから複数の面談ストーリーができるわけね。

T:そうなんだ。

S:これだけ準備すればかなりいい面談になるね。

T:いやいや。まだ一番大事な事前準備をしていない。

S:あ、最後の「質問を考える」か。

T:その通り。例えば、60代のお客様の家族情報整理して、お子さんにお子さん、つまり、お孫さんがいるのかいないのかも知りたい、として、「お孫さんはいらっしゃいますか?」というのはちょっと唐突でしょ。

S:アンケートだね。でも、それ以外にどう聞くの?

T:前振りの質問、ともいうかな。例えば、季節に合わせて例えば、「お正月はご家族皆さん集まるんですか?」なんていうのを面談前の雑談でやっておくんだ。

S:雑談いらないって言ってたじゃん。

T:目的のない雑談はいらない、ということ。

S:それで?

T:「お年玉とかご準備されるんですか?」といったさらに中間の質問を刻んで、「何人いらっしゃるんですか?」「お近くにお住まいなんですか?」と。

S:なるほど。

T:いらっしゃらないなら、「そんな、うちは孫いないから」とかでおしまいだし。

2、「アプローチ」=聞き耳を立てて頂く?

S:やっとアプローチ。

T:はい、こちら。

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S:お、Yesを2回、出たな。

T:ここには2つ狙いがあって、まず、一般的、というところ。

S:一般的?

T:そう。この段階はお客様は警戒心を持っている場合が多い。何か勧められるぞー、とか。そこに、いきなり、「お客様には運用が必要です!」とか言われたら、引きまくりだよね。この段階では、まだ、お客様個人に当てはめず、一般的、つまり、世間広く一般的にはこう言われてますけど、みたいなイメージ。

S:なるほど。

T:で、Yesを2回は、もう完全に心理学なんだけど、会話の冒頭に連続してYesを2回言ってもらうとその面談全体に対して肯定的な雰囲気を獲得できるんだ。

S:そんなもんかなぁ。

T:まぁ、これは、簡単に答えられる質問、ということになるので、お客様にこれからいろいろお伺いするために質問をしていく、ウオーミングアップ、も兼ねてると思って深く考えずにやってみると効果あるよ。

S:まぁ、理屈わかんなくても効果あるなら。

T:そうそう。あと、セールス側にも、最初にYesと言ってもらえてなんとなく噛み合ってスタートできているなぁ、と安心できる効果もあるから。

S:了解。その次も一般的、なんだね。いきなりニーズ出しちゃうの?

T:ここでいうニーズはあくまで一般的な、つまり世間一般のニーズなので、例えば、「不確実な時代だから今は投資はせずに、預金で持っておきたい、という方が多いのですが、」とか「公的年金心配される方多いのですが、」といったもので、やはりまだお客様自身には当て嵌めないんだ。お客様自身にフォーカスするのは、次のヒアリングのステップから。

S:なるほど。で、アプローチのゴールは?

T:さっきのような一般的なニーズを提示した後に、肯定的な反応、「まぁそうだね」とかうなずくでもいいんだけど、それを確認した上で、ヒアリングのためのお時間を頂く合意をとりつけることがゴール、だね。

S:なるほどね。

T:なので、アプローチは短くてOK。雑談とかは得意でかつお客様が楽しそうに話してくれるならやってもいいけど、盛り上がっちゃって、肝心の本論の時間がなっくなっちゃったら困るし。

3、それでも雑談したい!という方に。

S:そうだね。でも、やっぱりちょっと雑談でほぐしたいなぁ。

T:こだわるね。そういう場合、どうせなら心理的距離を縮める効果のあるもので、かつ、銀行なら不自然じゃない話題で行こうか。

S:お、そんな都合のいいものあるならぜひ。

T:共通点があると親しみを感じるっていうのあるよね?

S:うん。実は出身が同じだった、とかでしょ?

T:それそれ。でも、なかなか探すの難しいでしょ?でもね、必ず共通点があるんだよ。銀行、っていうね。

S:は?

T:お客様の口座開設日ってあるでしょ?それをチェックして、それを話題にするの。

S:え?

T:例えば、今50歳のお客様で口座開設日を見たらお客様が22歳の時に作った口座だと分かれば、「長年お取引いただきありがとうございます。こちらは22歳の時に開設いただいたようですが、給与口座としてお作りいただいたのでしょうか?」みたいにね。

S:おー。

T:あとは、支店統合とか結構していると思うので、開設店が違っていたら、「○○支店でお作りいただいたんですね。当時は□□のビルでしたよね。お勤め先がお近くだったですか?」とかさ。

S:おー、使えそう!

T:まぁ、初対面でしか使えないけどね。お互い興味ない雑談を無理やりするぐらいなら、こういう方がなんぼか気が利くし、ヒアリングネタにもなるよ。

S:ヒアリングネタ?

T:「どうしてそちらのお勤め先に就職されたんですか?」とか「奥様とは職場結婚だったんですか?」とか。

S:なるほどー。確かに。

T:お役に立てば何より。では、次は、ヒアリングなんだけど、ここは長くなるから、今日は一旦ここまでにしようか。

4、本日の質問

いきなり質問するには気が引ける場合に「前振り」質問

T:例えば「お正月はご家族皆さん集まるんですか?」なんていうのを面談前の雑談でやっておくんだ。
S:それで?
T:「お年玉とかご準備されるんですか?」といったさらに中間の質問を刻んで、「何人いらっしゃるんですか?」「お近くにお住まいなんですか?」と。

本文中でされていますので、解説は割愛しますが、それに加えて、上記のようにそのまま一気に聞きにいく以外にも、「お年玉」ぐらいで止めておいて、お客様がお話しされたいことを話していただいて雑談は終わらせ、本題が進んで、家族構成の話になった時に、「そういえば、お正月にご家族がお集まりになるということでしたが、」とかいう感じでお孫さんの人数とかを聞く、という方法もあります。それ聞きたかったからその話題振ったんかい!というのを避けられますし、よく話を聞いてくれているなぁ、と感じていただけることもあります。


最後までお読みいただきありがとうございました。

お読みいただいたお時間分だけでも参考になるところがあれば嬉しいです。

こちらにこれまでの分をまとめましたのでご興味をお持ちいただけたようでしたらぜひご覧ください(ちょっと長いですが)。

また、他にも「上司のための『質問力』」に関して投稿していますので、よろしければそちらもぜひご覧ください。


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