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上司のための「質問力」活用〜「営業指導」基礎①〜

大学時代のゼミの同期会。久しぶりに再開した佐藤と高橋。某銀行で支店長に昇進した佐藤が部下育成の悩み高橋に打ち明けたことから、高橋のアドバイスを受けることに。

最後までお読みいただけると得られそうな情報は?
✔︎ えっ、銀行って担当者個人に販売目標ないの?
✔︎ 個人目標がなくて上司は部下の評価ができるのか?
✔︎ 営業のプロセスは?

1、支店長のやりがいは?悩みは?

高橋(以下T):支店長になったんだって?おめでとう!

佐藤(以下S):ありがとう。でも、昔の支店長とはだいぶ違うからなぁ。

T:法人営業は別部門だもんな。リテールだけか?

S:詳しいねぇ。そうそう。

T:一国一城の主人。何が一番楽しい?

S:うーん、部下が育つことかなぁ。

T:素晴らしいね。じゃ、うまくいってるんだね。

S:いやいや。苦労してるよ、なかなか思う通りには育ってくれない。

T:そっか。今、担当者個人には目標ないんだろ?どうしてるの?

S:やけに詳しいなぁ。そーなんだよね。まぁ、そこはほら、支店には目標来てるから、テラーが何人いて、渉外が何人いて、ゴニョゴニョ、みたいな。

T:分かってくれよ、と?

S:まぁね。本部からは、適切なKPI管理で活動量を評価、みたいなこと言ってくるけど…

T:うまくいかない?

S:まだ成功したとは言えないなぁ。いろいろ試してるんだけどねぇ。

T:難しいよねぇ。うちの会社でも数年前に組織改革やって、個人に販売目標張るの禁止したんだよね。

S:お、それぜひ聞かせてよ。

T:まぁ、うちは代理店さんに売って頂く間接営業だから事情はだいぶ違うけど。

S:まぁ、でも参考になるよ。で?何がポイント?

2、個人の販売目標をなくしたら?

T:15あった営業部でうまくいったのは1つだけだった。

S:え?あとは?

T:半年も経たずに営業部長からやっぱり個人目標がないと達成できない、とかなんとか突き上げがすごくて、任意で目標設定してもよし、としたら1つの営業部以外は全部もとに戻っちゃった。

S:なんで?

T:個人に販売目標設定しないと、何で評価することになる?

S:ん?活動量とか?それぞれのKPIとか?

T:そうだよな。だけど、営業部長からすると、部下が納得するようにそれらをフィードバックして評価するのはすごく大変なんだよ。普段からよく見ていないと、あいつ訪問数は目標の2倍とか言ってるけど、実績は平均以下じゃねーか、嘘の報告しているんじゃないか?部長は何を見ているんだ、とか。

S:あぁ…

T:となると、テキトーにやったことにして報告しておけば、みたいな奴も出てきて、真面目にやっている奴が馬鹿みたい、となって…

S:で、失敗、か。

T:そう。

S:でも、1つはうまくいったんでしょ?

T:そう。その営業部長は、毎日丁寧に部下の活動を把握して、時に同行もして、一人一人の部下の努力をきちんと見ることを続けたんだ。部下もきちんと見てくれている、ということでチームとして数字を達成しよう、と助け合うようになって。

S:おぉ、素晴らしい!

T:で、年間終わって見たら、その営業部の達成率1位。

S:実績も伴った訳だ。成功じゃん。

T:そうそう。でも、やっぱりすごい大変なんだよ。営業部長が。結局翌年も個人目標付けるかどうかは営業部ごとに決めていいことになって。

S:あらら。でも、その手法知りたいな。ポイント簡単に教えてよ。

T:簡単にって…本気?

S:もちろん!

T:じゃぁさ、2つ宿題。

S:宿題??簡単でいいって。

T:だから、簡単じゃないんだって。言ったじゃん。それに、うちのパターンではうまくいっても、そっちでうまくいくか分かんないでしょ。そちらの状況を聞いてからでないと、適当なことは言えないよ。

S:まぁ、ねぇ。分かるけど…

T:どうする?やめる?めんどくさいよねぇ。

S:いや、分かった。やる。で、宿題って何?

3、某銀行での営業プロセス

T:よし。1つ目は、佐藤のところで成約までの標準的なプロセスを教えて欲しい。2つ目は、佐藤自身の銀行での時間の使い方。

S:時間の使い方って?

T:例えば、事務作業に何割、営業に何割、会議に何割、とかそんな感じ。ざっくりでいいよ。

S:うーん、了解。両方とも今言えるよ。

T:お、じゃぁ、プロセス教えてよ。

S:えーっと、初回はお客さまのニーズをヒアリング、だな。うちに預けて頂いている資金の保有目的とか。次に、そのヒアリングに基づいた、ざっくりとした資金の持ちかたの提示、例えば、投資信託や保険、なんかだね。それで、お客様が興味あるカテゴリを決める。そして、次回提案のアポをとる。時間があれば提案もしちゃうけど。で、最後が契約手続き。重要事項なんかも説明するから結構時間かかるんだよね。

T:なるほど。いきなり始まっちゃっているけど、来店客はともかく、渉外は?アポ取らないの?

S:あ、もちろん。そっか、まずは、アポを取って、雑談して、雰囲気作りして、っていうのがあるね。アプローチってやつか。

T:了解。では、

① アポ取り
② アプローチ
③ ニーズのヒアリング
④ 商品カテゴリの提示と決定
⑤ 商品の提案
⑥ 契約手続き

って感じだね。

S:そうそう。これで何が分かるの?

T:うん。これだけじゃわからないけど、これがないとわからないんだ。

S:はぁ?

T:あのさ、この①から⑥のステップそれぞれ、月間でどれくらいあるの?

S:それぞれ??うーん、数えたことないなぁ…

T:そっか、やっぱり宿題ね。

S:ちょっと、待って、支店全体?それとも担当者ごと?

T:できれば両方だけど、まずは、一番育成したい部下の1人分でいいよ。

S:分かった。


4、今日の質問

T(高橋):素晴らしいね。じゃ、うまくいってるんだね。


私が「誉め殺し」(不適切で申し訳ありません)と呼んでいる「質問」です。
(一見質問に見えませんが)

人は天邪鬼なので、断定的に言われると反射的に反発したくなるものです。

高橋のこの質問の佐藤の答えは、「いやいや。苦労してるよ、なかなか思う通りには育ってくれない。」とネガティブなことですが話してくれています。

友人だしあたりまえでは?と思われるかもしれません。

では、高橋のこの質問が「そっか。支店長と言っても、昔の課長ぐらいだからなぁ。育成も支店長自ら、ってことかぁ。」だったら、どうだったでしょう?

こうした、ほんのちょっとした違いで、会話というのは、あらぬ方向に枝分かれしていくのです。

今後、こんなことがご紹介できればと思っています。



最後までお読みいただきありがとうございました。

お読み頂いたお時間の分だけでも参考になることがあったら嬉しいです。

こちらに至る経緯を投稿したものがこちらになります。ご興味あればご覧ください。他にも上司のための「質問力」に関して投稿していますので宜しければぜひ。



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