『流行りの年頃』

※無料で全文読めます。


寅岡 「俺は生まれ変わる」
沢巳 「今流行りの転生もの?」
寅岡 「違う! 慈善事業をはじめる」
沢巳 「具体的には」
寅岡 「困っているクラスメイトに手を差し伸べる」
沢巳 「たとえば」
寅岡 「クラスメイトの卯月、いつもひとりでいるだろ」
沢巳 「そうだな」
寅岡 「だから友達になろうぜ!」
沢巳 「あ、これ絶対ウザがられるやつだ……ひとりでいたいタイプなんじゃないか?」
寅岡 「決めつけるなよ。そうやって周りが決めつけるから孤立していくんだぞ」
沢巳 「まぁ……」
寅岡 「絶対友達ほしいに決まっているだろ」
沢巳 「ブーメランがお上手で」
寅岡 「よせやい」
沢巳 「褒めてねぇ。でも卯月くんイケメンだし、モテるじゃん。やっぱりひとりがすきなんじゃ……」
寅岡 「そう、それ」
沢巳 「どれ」
寅岡 「顔のいい奴といれば自然と女子が集まる=あわよくば女子と親しく慣れる=モテる=彼女ができる」
沢巳 「見返りありきの慈善事業かよ」
寅岡 「とりあえず、お昼誘ってくる」
沢巳 「じゃあ俺ここで見てるわ」

♦︎

寅岡 「卯月、ちょっと駄弁ろうぜ」
卯月 「なんで」
寅岡 「いや、たまにはどうかなって。色々と話聞きたいし」
卯月 「ふーん……」
寅岡 「な、何? 顔が近いんだけど」
卯月 「そんなに、僕と話がしたいんだぁ」
寅岡 「いや、その」
卯月 「僕と話したくて、話したくてたまらないのかな?」
寅岡 「べっ……べつにそんなんじゃねーし!」

寅岡 「だめだったわ。イケメン怖い」
沢巳 「だめじゃねーか」
寅岡 「あんなに顔がいいとは思わなかった」
沢巳 「BLの導入かな?」
寅岡 「くそ、弄びやがって……」
沢巳 「ふん、役立たずめ。俺がいこう」
寅岡 「あれ? 参加?」
沢巳 「……ふっ」

沢巳 (俺も、モテたい)
寅岡 (こいつ、直接脳内に)

♦︎

沢巳 「卯月くん、今いい?」
卯月 「……何?」
沢巳 「俺らさ、一年の頃から一緒のクラスじゃん」
卯月 「そうだっけ?」
沢巳 「卯月くん、絵画で賞取ってたよね。俺も絵描いているんだけどさ。コツとか教えてほしいな。あと確か歌も上手かったよね。今度カラオケとかどう?」

寅岡 (過去の話題から誘いの話題につなげるとはやるな沢巳!)
沢巳 (脳内に話しかけんな)

卯月 「へぇ……」
沢巳 「あの、顔、近……」
卯月 「僕のこと、そんなに前から見てくれていたんだぁ」
沢巳 「いや、その、これは」
卯月 「そんなに僕に興味があるの?」
沢巳 「は、はぁ?! べ、別にそんなんじゃねーから!」

沢巳 「だめだったわ。イケメン怖い」
寅岡 「だめじゃねーか」
沢巳 「何あの色気」
寅岡 「万事休すか」

「待て」
寅岡 「?!」
沢巳 「?!」
辰野 「おれが行こう」
寅岡 「番長ぽい見た目の辰野さん!」
沢巳 「何故かクラスメイトなのに『さん付け』で呼んでしまう辰野さん」
辰野 「説明ありがとう。そして、おれが『さん付け』で呼ばれるのは留年しているからだ」
寅岡 「高校で?!」
沢巳 「威張って言うことじゃない!」
辰野 「ちなみに5年留年している」
寅岡 「高校で?!」
沢巳 「ダメ人間!」
辰野 「おれがあいつを誘ってきてやる」
沢巳 「なんd」

辰野 (おれも、モテたい)
寅岡 (こいつ、直接脳内に)
沢巳 (しかも食い気味できた)

辰野 「おうおうおう、卯月よォ〜!」

寅岡 「あ、絡み方が雑だ」
沢巳 「あくまで番長キャラでいくつもりだ!」

辰野 「おうおうおう、あん? おうおうおう」

寅岡 「アシカかな?」
沢巳 「語彙力皆無かよ」
寅岡 「あ、何か耳打ちされているぞ」
沢巳 「あれ、もう戻ってくる」

♦︎

辰野 「べ、別に、そんなんじゃないし///」
寅岡 「たつのォォォ〜〜〜!!」
沢巳 「何やってんすかァァァァ!」
辰野 「もう、やだぁ、イケメン怖い」
寅岡 「何言われたんすか! 詳しく!」
沢巳 「やめろ、聞きたくない!」
辰野 「もう、卯月くんのことなんて知らないんだからね! 帰る!」
寅岡 「なんでヒロインポジションなんだよ」
沢巳 「これ玄関で待ってるやつや」

寅岡 「卯月はツンデレ量産機か何か?」
沢巳 「むしろ感染させている」
寅岡 「ツンデレ感染症?」
沢巳 「何それ怖い」
寅岡 「もう二人でいかない?」
沢巳 「よっしゃ、赤信号、みんなでいけば怖くな」

卯月 「さっきから何やってんの」
寅岡 「ひゃあっ! 卯月さん」
沢巳 「卯月様ァ!」
卯月 「新手の苦行? 僕の」
寅岡 「誰のせいだと思ってんだ!」
卯月 「僕のせい? さっきから煩いんだけど」
寅岡 「ごめん」
沢巳 「お昼一緒に食おうかと思っただけなんだけど」
寅岡 「あわよくばモテたかっただけなんだけど」
卯月 「もうちょっと隠したら?」
寅岡 「でも、もういいよ。ごめんね」
沢巳 「それじゃあ」

卯月 「…………」
寅岡 「ん?」
沢巳 「卯月くん、服の裾伸びる」
卯月 「別に……」
寅岡 「んー?」
卯月 「別に一緒に食べないとは言ってないでしょ」
寅岡 「…………」
沢巳 「…………」
卯月 「…………」
寅岡 「一緒に食べる?」

卯月 「別に、どうしてもって言うならいいけど……」
寅岡 「お前もかい」
沢巳 「天性ものだったか」

おしまい。


 こちらの企画に参加させてもらいました。
『過去』『見返り』『増えるツンデレ』という3つのお題の三題噺です。

#第3回心灯杯 #三題噺

 kuutamo 月町さおり

ここから先は

0字

¥ 120

サポートしていただきました費用は小説やイラストを書く資料等に活用させていただきます。