記憶の片隅に

これは元同僚が一人暮らしの家に遊びに来ていたときの写真。私はこういう写真が好きだ。

私は正社員で働いていたが、似たような歳の連中が非正規で働いていた。彼女もその一人。都合5人ほどそのような「仲間」がいたが、とあることを切っ掛けに一斉に辞めていった。
辞めてちょっとした時にもう一人辞めてしまった男子から飲みに出ませんかと誘われ、ちょっと気になっていた彼女も呼んでみたところ来てくれた。
その場で連絡先を交換した。

しばらくして彼女から連絡が来た。フィルムカメラが欲しいという事だった。私が写真学科を卒業して普段からの制作はフィルムでやってることを知っていたようだった。
まずはお店を巡ろうとのことで都内の中古カメラ店を巡った。中々良い出物が無く空振りだった。その日はそれで解散した。

どういう経緯だったか忘れてしまったけれど家に来てネットで探そうということになった。今まで撮ってきた写真も見たいというようなことだったと思う。何故か泊まりで来ることになった。

1Kのお世辞にも広いとは言えない部屋にシングルベッドとの事を伝えたけれどそれでもいいと言って来た。

青森から上京してきて苦労しているようだった彼女のお財布事情でカメラを買おうというのは一大事。
安くて良い物をと思いこっちも必死で捜した。結局Nikon FMがレモン社で見つかりとりあえずボディを確保した。次はレンズ。相場より安い事で定評のある松坂屋カメラへ行ったところ50mmF1.8が予算内で買えた。フィルターとフードを買ってあげた。

自分の中で標準レンズに浅くてコンパクトな広角フードをつけるのがマイブームで着けていたのだけどちょうど松坂屋カメラにそれが売っていたのでお揃いにした。

桜の咲くまだ肌寒い春のことだった。

Leica M3 Fujinon cristar 5cm F2

あまり感情が表に出ない人だったけれど喜んでいたように見えた。そんな記憶。

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