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みんなの違和感を具体化するスキルがチームを進化させる。

私が昔、ある上司に言われた一言を紹介します。

君はみんながボンヤリおかしいなと思っている違和感を具体化する特殊能力を持っている

この上司は面白い人で、独特の表現でフィードバックをくれます。この話は期末面談の時に言われました。一年間一緒に仕事をして感じたことだそうです。

この話をされたのはもう5年くらい前のことでしょうか。

当時、私は今担当している事業計画のような、事業部の事業全体を見るマクロな位置づけとは違い、個別ビジネスの採算向上を担うどちらかというとミクロなビジネスの担当をしていました。

製品や顧客もいくつか持たせていただいたのですが、どの案件にも「何年も解決できていない問題」というのがあります。

慢性的に不採算に悩むビジネス、新規顧客に参入したはいいが、当初の事業計画とはかけ離れて苦しむビジネス、など。

私は事業企画担当なので、基本的には採算という形で課題に直面するのですが、私より前の担当というのは、大体、その課題に対して「追加施策は打つものの、対策は打てない」ということが続いていました。

どういうことかというと、「課題の要因の分析をせずに新しい手を打っている」ということです。

不採算と言っても、それは売価と原価を比較した結果でしかないので、その数字を見たとしても何が悪いかわかりません

そしてその分析をせずに、とりあえず目の前でできそうな手を打ちます。材料を安いものに変えてみたり、海外の安い部品を探してきて置き換えたり。
それはそれで必要な切り口ではあるし、うまくいけばコストが下がるということはあるのですが、リスクがあったり、時間がかかったりします。

そして何よりも、そもそも採算が悪い原因が特定できていないので、新しいビジネスでも同様のことが起こり続ける、という質の悪い問題が発生します。

でも、大体の担当者は、「何とかしなきゃ!」という一心でこのようなコストダウンの手を打ちます。

私はそれ以前に、「なんでこんなことになっちゃったんだ?」という疑問を持ってしまうので、その分析から入ります。

それには時間がかかることもあるし、それが分かったところで解決できないことも少なくないので、上司によっては「そんなことどうでもいいからコストダウンのネタを出して(そうじゃないと役員に怒られるから)」という言い方をする人もいます。

でも私は分析をしないと気が済まないんです。

そして、それは実は関係部署もその原因を知りたい気持ちを持っていることが多いです。

製造業ですので、関係部署というと技術者だったり、工場であったりします。
我々の扱う製品はBtoBの部品なので、量産まで3年近くかかることもあり、技術者はそれだけの長い時間、顧客やモノと向き合ってきているのに、いざ量産してみたら「不採算です」とか言われてしまうわけです。

しかも、そんなときに「もっと安い部品にできないか」とか言われるわけです。

「いやいやそれより前に何が起こってるのか教えてくれよ」ってなるのは当然です。

そういう時に私がいろいろ掘り起こして、「実はこの予算が漏れていたんです」とか、「この部品が想定より高くなっていました」とか「設備投資が膨らんでいました」といった数字の分析をして関係各所と共有していくので、関係部署もその悪いところを取り除く方法を考えてくれます

私が分析すると、関係部署がこのような動きを取り始めるので、それをもって当時の上司は「みんなの違和感を具体化する特殊能力を持っている」と私を評したのだと思います。

ここまで読んでいただくとお判りいただけるかもしれませんが、特別な能力は発揮していません。ただ、以下の2点に気を付けただけです。

1.全体を俯瞰して分析をすること。

例えば、原価と一言で言っても多岐にわたります。まずはその原価構造を知識として理解すること。そして、その知識と現場を結びつけること。
その数字を見たときに、誰がどのような行動をしたら動く数字か、そのイメージを持つこと。これはとても大事です。そしてそれを受けて2点目に続きます。

2.漏れなく、行動者主体の仮説を立てること。

あくまで私が分析できるのは数字でしかありませんので、その数字が動いたという"事実"と、それに結び付く行動の"仮説"しかたちません。

私たちの仕事は、関係部署の実際の行動とその仮説を結びつけることです。
なぜなら、その会社におけるお金はすべて関係者の行動の結果ですから、当事者に行動とお金を結びつけて考えてもらえない限り、絶対にお金は下がらないからです。

そうすると、1で述べた分析より仮説を立てるのですが、ここで如何に漏れなく、適度な粒度で分解するか、が大きなカギです。そしてその粒度とは、関係部署の単位です。

なぜなら、その関係部署と協議するのに、自分と関係のない部署の行動まで混じると、なかなか当事者意識を持ってもらえなくなるからです。

今思うと、当時ここまで具体的に自分自身が分析や仮設の進め方を自覚していたかというとそんなことはないのですが、先日呼んだフェルミ推定の本で、自分の行動を自覚することができました。

本の内容は以下の記事で触れさせていただいています。

つまり自分ではなく相手に合わせた分析が必要。

当時、上司は「特殊能力」という言い方をしましたが、改めて考えると上記のようなことをしていただけです。
なぜ私が特殊だと思われたか、というと、恐らく、当時の私の部署は「関係部署にどう行動してもらうか」というような、相手の立場に立った考え方ができず、「自分主体で考えたアイデア」を「いかに関係部署に実行させるか」という目線を持っている人が多かったからと思います。

当たり前ですが、相手も人間です。自分の行動がどのように会社の業績に跳ね返ってきているか知りたいはずです。ただ相手目線で分析し、仮説という形で表現しているだけなのですが、それができていない人が多いということです。

行動する人の立場に立って仮説を立てて議論しないと何度も同じ失敗を繰り返します。人に行動してもらうために、この考えは忘れずに、そして私だけの「特殊能力」になってしまってはチームの進化、事業の発展はありませんので、このような行動を導けるようにマネージしていきたいと思います。

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