もや

『女に生まれてモヤってる!』 中野信子、ジェーン・スー

女に生まれたから」というより、私は「空気を読まなければならない日本に生まれたから」「細かいことを気にする私に生まれたから」モヤってるという気持ちが強い。中高女子校で、女しかいない世界でも別に楽しかったわけではないし。でも私の好きなジェーン・スーさんの本だし、と読んでみたこの本。これは先達によるラブレターのような本だった。

コラムニストのジェーン・スーさんと脳学者の中野信子さんによる対談。ジェーンさんも中野さんもさんざんモヤってきた人。うまくいかないのは自分のせいかもと思ってきたことが、性差に関する社会の構造的なバグに由来するもので、そもそも無理ゲーだから、そんなことにとらわれなくていいんだよ、と伝えてくれている。男も女も関係なく“本当は「自分らしく」いたいだけなのに”という副題が真の伝えたいことじゃないかと思う。

バリバリの才女で東大卒、フランス国立研究所にも勤務し、日本と海外のアカデミズムの中で生きてきた中野さん。片や子供の頃から体が大きくて小学生の頃男子に「スカートなんてめくってやらない」と言われたり、失恋でやせたとき(ちょっとしおらしいとき)にバーでやたら声をかけられたり、男の先輩に「飲みに行きましょう!」と言ったら「連れていってください、だろ?」(うわー)と言われたりしてきたジェーンさん。二人の体験と、そこで考えてきたことのディスカッションは、「そういうことか!」「そこまでではないな」「そう言えばこんなことがあった」と自分の経験を呼び起こす。

「女に生まれてモヤるか」という問題は、性格や環境といった個体差に大きく左右される。女を満喫して快適に生きている人もいるし。でも構造的「バグ」のため、日本の社会で「女らしい」を実現しようとすると「自己決定権を手放す」ことになると彼女たちは語る。自分の人生は自分で決めたほうがリスクが小さいし、楽しいよ、と話す。終わりにジェーンさんのコラムがあった。彼女が傷ついて得てきたことを、同じことで傷ついている後輩読者に伝えようとしているのがよーーーくわかった。これは彼女からのラブレターで、Big hugだ。男女問わずジェンダーのせいでモヤっている自覚がある人だけでなく、人の目を気にして自分の言動を変えたことがあるすべての人にヒントがあるはず。

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