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『人生の意味の心理学』【新人読書日記/毎日20頁を】

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記事一覧

意味の有無を判断する基準を疑え【新人読書日記/毎日20頁を】(14)

「人生の意味の心理学」260-277頁、読了です。 知らないうちに、本を読み終え、最終回を迎えました。 理論から実証まで、心理学専門分野の学術書ですが、素人ながらも面白く思って、いろんな啓発を得られました。人生の意味は何と直接に結論は出されてはいないものの、自ら人生の意味を見出す考え方、方法を教わるとしたら、適用性、実用性の高い本だといえるのでしょう。 私たちは、生まれてから、大人になるまで、社会や家庭からいろんな価値観を与えられます。公に認められているものだけに、意味

目に見えない幸せと宗教の本質【新人読書日記/毎日20頁を】(13)

「人生の意味の心理学」241-260頁、読了です。 意味システム・アプローチの一例として、1986年にノーベル賞を受賞した脳神経学者であるリータ・レーヴィ・モンタルチーニ(Rita Levi-Montalcini)が人生の意味について、次のように語っています。 小学校の頃読んでいた『星の王子さま』にも「かんじんなことは、目に見えない」という名言があります。昔からこんな体験がよくありました。ずっと欲しかったものをやっと手に入れたのに、嬉しい気分は一瞬にして過ぎ去ってしまうの

目標の首尾一貫とポジティブな人生【新人読書日記/毎日20頁を】(12)

「人生の意味の心理学」221-240頁、読了です。 私自身、何年か前、次のような言葉に出会って、一瞬悟ったことがあります。原文と出典はよく覚えていませんが、大体の意味は「私たち凡人は、生涯一つだけのことをうまくやることができたら、それで十分偉い」です。その頃躊躇して進路に迷う私にとって真夜中の灯台のようでした。 それから、一点、目標をはっきりと定め、関係のないことから力を抜き、その目標のために死ぬまで頑張っていくことを覚悟しました。三年継続して頑張ったあと、やっと一つのス

意味の次元とブッダの物語【新人読書日記/毎日20頁を】(11)

「人生の意味の心理学」201-220頁、読了です。 6章に入り、著者がこれまで検討してきた人生の意味に関する哲学・心理学理論と、実証研究の結果をベースにし、人生の意味のモデルを構築しています。様々な意味のキーワードと意味論が入れ子の形の図に分類され、とてもわかりやすいモデル図になっています。 ここで、手塚治虫の漫画、手塚版の釈迦伝といわれる「ブッダ」を思い出しました。釈迦族の王族として生まれた釈迦は、29歳で王族の地位や世俗の全てを捨て、生命の意味を探究するために、修行に

追求と実現の差に気をつけて【新人読書日記/毎日20頁を】(10)

「人生の意味の心理学」181-200頁、読了です。 誰かに「あなたにとって人生の意味は何ですか」と尋ねることは、要するに、人生で何を求めているかと問うことといっても良いでしょうか。私たちは、人生で大事だと思うものを追求して、目標に近づいて、実現して、また新たに何かを追求し、・・・といった具合に繰り返して人生の意味のために走り回っています。 ここで乙一の「落ちる飛行機の中で」という短編小説を思い出しました。何年も続けてT大に受かるために頑張っていて、結局どうしても受からなか

おもちゃから年金、コロコロ変わる人生の意味【新人読書日記/毎日20頁を】(09)

「人生の意味の心理学」161-180頁、読了です。 今読んでいる5章に人生の意味のカテゴリーの割合という表があります。この表は人生の意味の諸源の割合についての研究結果を示しています。海外の心理学者が大学生、成人、老年夫婦に実施した調査結果で、年齢層によっての人生の意味もそれぞれ違うことがわかります。 大学生と成人にとって大事な「成長」はお年寄りにとっては意味の比重が低く、大学生とお年寄りにとって大事な「喜び」は成人にとってはさほどでもないようです。お年寄りにとって二番目に

「人生、何周目?」・・・【新人読書日記/毎日20頁を】(08)

「人生の意味の心理学」141-160頁、読了です。 「生」の反対にある「死」についてどう思いますか。 前回も言及したように、死への態度は生への態度に影響を与えるというところは面白いと思います。今日読んだ辺りの「3つの人生観のパターン」で、「死の解釈」と「死を前にした人生の意味」と、二つの問いがあります。有神論者にとって、死はゴール。天国に行くか、地獄に行くか、それはこの人生の勝負です。無神論者にとって、死は結果。存在が消滅し、全てが一瞬で無になります。 最近私は「ブラッ

意識しながら行動しよう【新人読書日記/毎日20頁を】(07)

「人生の意味の心理学」121-140頁、読了です。 この20ページで、作者は人生の意味の反対である実存的空虚について語っています。 「意味の源」が多様であること、「意味の幅」が広いことが実存的空虚の低さと相関するという論点は、すごく啓蒙的だと思いました。つまり、この人生で追求していることが多ければ多いほど、人生が充実し、虚しさが減っていくと私はこう理解しています。当然、ここの追求は動物的な欲求に限られるものではなく、2章で語られている意味の源のように、「健康」、「関係」、

人生の意味と人生の目的...【新人読書日記/毎日20頁を】(06)

「人生の意味の心理学」101-120頁、読了です。 この辺りはそれぞれの精神科医・心理学者により開発された様々な心理尺度の中の代表的な心理尺度が紹介されています。中にフランクルの弟子であるクランボウとマホーリックが開発したpurpose in life test(PIL)は、人生の意味の心理尺度として、意味より目的志向的な傾向を持つものとして指摘されています。それは人生に目的があっても意味がない場合が多いですし、目的がなくとも意味がある場合も多いからです。目的と意味の区別は

時よ止まれ、汝はいかにも美しい!...【新人読書日記/毎日20頁を】(05)

「人生の意味の心理学」81-100頁、読了です。 ここで私はゲーテの戯曲『ファウスト』を思い出しました。ファウスト教授はあくなき知識欲を満たしきれないことに、絶望し自殺しようとしたところ、現れた悪魔と契約を結びます。悪魔の力で若返り、富や美女を手に入れた後に、年を取らない無限の虚しさを感じたファウストは世界を作り直そうと決意します。それでやっと生き甲斐を見出すことができ、全てに満たされ、「時よ止まれ、汝はいかにも美しい!」と叫んだのです。 ファウストのように、快楽主義より

ニヒリズム=還元主義か【新人読書日記/毎日20頁を】(04)

「人生の意味の心理学」61-80頁、読了です。 精神科医・心理学者のフランクルが学問上のニヒリズムを「還元主義」と呼ぶ話が面白いと思いました。 確かに、複雑な問題を単純化し、解決しやすくするのは賢い方法ですが、人生や人生の意味をあまりにも単純化しすぎ、本質的に考えたら、面白さも失ってしまいます。むしろ人生というものは、複雑であれば複雑であるほど面白いと言ってもよいのではないでしょうか。但し、面白さの盲目的な追求で、乱歩の「鏡地獄」にあるように「鏡の地獄」に落ちないよう要注

休日の旅行者のように【新人読書日記/毎日20頁を】(03)

「人生の意味の心理学」41-60頁、読了です。 この20ページを読んで、心理学が哲学から発展したということを初めて知りました。 Wikiで「心理学」のページを参照すると、「ギリシャ哲学からの起源」があります。心理学が存在しなかった時代の賢人たちの魂/心についての考察が一番オリジナルで素朴な認識と言えるようですね。 「人生の意味を考えるのはリビドーが満たされていないからだ。」と考えるフロイトから、「人生の意味が問われるのは人間の本質的な欲求だ。」と考えるフランクルまで、心

神様が死ぬ前の世界を見てみたい【新人読書日記/毎日20頁を】(02)

「人生の意味の心理学」21-40頁、読了です。 ここで著者は人生の意味について今までの哲学の観点を概観しています。有神論者と無神論者の人生の意味の定義は完全に違いますね。 この辺りを読むと、ニーチェの言葉「神は死んだ(GOD IS DEAD)」を思い出します。この言葉は神様を信じる人には人生の意味の答えも揺るがすものだったかもしれませんね。自分に人生の意味を定義し、与えるその神自体が存在しないとすれば、人生も一瞬にして充実から虚無に一転します。さすが「徹底的な虚無主義者」

あのう、人生の意味を考えたことありますか?【新人読書日記/毎日20頁を】(01)

「人生の意味の心理学」1-20頁(序章)読了です。 みなさん次のような瞬間を体験したことがありますか? 何という理由もなく、ただ、突然自分の存在価値が疑わしくなり、自分はなぜここにいるのだ、なぜ今これをやっているのだ、頭の中の得体の知れない声に迫られて、急に虚しさに襲われ、沼に引きずり込まれたように気分が落ち込む……そういう瞬間。 私は時々あります。 全てが虚しくなり、その時の到来の予感に常に怯えています。 人生の意味は一体何でしょうか? トルストイもこの難問にはお手