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(日記) 抵抗とエネルギー

ちゅうりっぷだ!


心配事や時間に追われ、
玄関と車を何度も行き来している
自分の隣で...娘はそう叫んでいた。

少しの無駄も許されない、
少しの余裕や休息も...与えられない、
息が詰まりそうな平日の朝という
世界からかけ離れたところで…

娘は、ただひとり…
大きく見開いた瞳を輝かせながら、
キラキラ光る、小さい靴を止め...
赤い鉢の中で、静かに朝日を浴びている
チューリップを眺めていた。

「いち、にい、さあん、よおん、ご!」
「ごこもある!」...


言葉では言い表せない花びらと香り。
その下で色鮮やかに煌めく青い葉っぱ。

それはまるで...世界一の染料を、
花びら一つ一つに染めたような、
目が痛くなるほど、強烈な色彩と光を放つ、
これまで一度も見たことのない花だった。



はやく!はやく!遅刻しちゃうよ!

しかし今日も僕は...
まるで何かから逃げるかのように、
朝日で輝いている、あの小さい手を
無心に、強引に...引っ張っていた。


「約束」「遅刻」「生計」...

何かへの心配事や不安。
そしてそれらを作り上げた社会や
特定の対象に抱く不満と憤り。

しかし手を引っ張り、車を走らせても
...どんなにそこから逃げ出しても...

自分に「不自由」を感じさせる、あの感覚が、
その中でもがく自分への苛立ちや自己嫌悪が...
消え去ることは... けっして無かった。

***

抵抗。

何かから不自由を感じるのも、
その不自由の反動として自由を追い求めるのも、
その目標としての自由に辿り着けない自分に
苛立ちや自己嫌悪を感じるのも、
全て... 自分が作り出した葛藤、
そして...抵抗でしかなかった。

人生という果てしなく続く川の中で、
比較、競争、快楽、無慈悲、暴力...
激しい流れに溺れないように...
それで自分自身を頼りに、ただ一人、
立ち向かわせる、生きるエネルギーが、
今日も...終わることのない葛藤と抵抗で
消耗されていく...。

そして... それが、何千年も何万年も
果てしなく続いていることに...
その大きな「悲しみ」の川に...
人は生きていた。

葛藤や抵抗を抱えずに、
それで生きるエネルギーを消耗せずに、
生きることは、可能だろうか?

何かの不自由から自由を求めるのではなく、
自分に苛立ちや自己嫌悪を感じることなく...

その全ての不毛さと危険性に気づき、
その気づきという「自由」の中で...
生きることは、可能だろうか?

...

私は、ただひとり…
自分自身を眺め、そう問うていた。


そのとき...

咲き乱れる香りと色彩で輝く朝が、
これまで一度も見たことのない、
途方もなく美しい朝が...
目の前に広がっていた。

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